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昂然として天地古今を一視すべし (吉田松陰一日一言(川口 雅昭))

2007-04-08 11:02:33 | 本と雑誌

Shokasonjyuku_1  松陰語録の続きです。

 本書は、松陰の「語録」ではありますが、松陰自身が編んだものではありません。
 編者が松陰の著作や書簡から選出したものを並べたものです。そこには、「編者の価値観(選定基準)」というフィルターがかかっています。(もちろん、このBlog自体、それからの更なる引用ですから、もっとバイアスがかかっているわけです)

 本書で紹介されている松陰のことばは、批判的・扇動的なものばかりではありません。

 たとえば「時間の大事さ」について。

(p41より引用) 得難くして失い易き者は時なり。

 また、

(p167より引用)古より議論は易くして事業は難し。

(p248より引用) 士は過なきを貴しとせず、過を改むるを貴しと為す。

 といった普通によくありがちな諺チックなフレーズも収録されています。

 さらには、「守成」の難しさを語る(ラディカルなイメージのある)松陰らしからぬ言葉も見られます。

(p137より引用) 創業は難きに似て易く、守成は易きに似て難し。

 そうはいっても、やはり松陰に期待するのは、より攻撃的で刺激的な言葉でしょう。

 幕末、諸外国からの開国圧力が高まる中、松陰は行動を起こします。しかしながら、松陰の信念の行動をもってしても、彼の目に時代錯誤とも映る旧態依然とした体制を揺るがすには到りませんでした。
 体制の変革は、彼の弟子たちの手に委ねられました。

 そういった松陰の「時勢への不満」の言葉です。

 まずは、大局を見ず瑣事にこだわる幕府や大学者たちに対して。

(p54より引用) 永久の良図を捨てて目前の近效に従ふ、其の害言ふに堪ふべからず。

(p127より引用) 今人大眼目なし、好んで瑣事末節を論ず。此の弊読書人尤も甚し。

 そして、自ら動こうとしない世情に対して。

(p60より引用) 吾れ盛強を勉めずして人の衰弱を願ふ。是れ今人の見なり。悲しいかな、悲しいかな。

 松陰は忸怩たる想いを抱きつつ、自らをそして弟子たちを鼓舞し続けます。

 最後に、私が「いかにも松蔭」と感じたフレーズをいくつかご紹介します。

(p55より引用) 余寧ろ人を信ずるに失するとも、誓つて人を疑ふに失することなからんことを欲す。

(p73より引用) 汝は汝たり、我れは我れたり。人こそ如何とも謂へ。

(p168より引用) 人生倏忽、夢の如く幻の如し、毀誉も一瞬、栄枯も半餉、唯だ其の中に就き、一箇不朽なるものを成就せば足る。

(p173より引用) 人は唯だ真なれ。真、愛すべく敬すべし。

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価格:¥ 1,200(税込)
発売日:2006-12

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