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ひとりの決定 (決定学の法則(畑村 洋太郎))

2006-12-29 19:32:21 | 本と雑誌

 畑村氏の本は、氏を有名にした「失敗学」関係をはじめ、いままでにも何冊か読んでいます。
 久しぶりの今回は「決定」がテーマです。

 まず、畑村氏は、決定にあたって迷いがあることを前提に、決定の勘所として「経験」「知識」「仮想演習」の3つを示します。

(p45より引用) 迷いをなくそうとすること自体、無駄であるともいえます。そんなふうに迷いがついてまわる中でも、選択を早く、正しく行うには、やはり十分な「経験」と「知識」、それに十分な「仮想演習」が必要です。

 決定は瞬時に行われるものではありません。畑村氏流の言い方では、決定過程は「思索の脈絡」です。

 そして、畑村氏は、決定にいたる「過程の記述」を勧めます。最近の流行のフレーズでいえば、「決定過程の『見える化』」ということになるのでしょう。

(p53より引用) 決定過程の記述とは、まさに思考の脈絡のアウトプットに他なりません。
 決定過程の記述は、自分の頭の中でもやもやと浮かんできたものを概念化し、言葉や絵などで表現できるものに表出することから始まります。表出することによって、自分の考えを整理して前に進めることができるし、記録することも、他者に伝達することもできます。そして何より、表出した要素同士の関連性を見出して、それを構造的に組み立てることができる。つまり思考の脈絡が見えてくるのです。

 この記述の過程で、自分の考えに足りないものや不要なものに気づくのです。
 こういった決定過程の考察から、畑村氏は、「決定のテンプレート」を提唱します。

(p173より引用) 「どんな決定においても、この要素は外せない」という「決定における一般則」が存在すると、私は考えます。・・・
 それは、「人」「モノ」「カネ」「時間」「気」という五つの要素(概念)です。
 決定において考えるべき事柄はこの五つの概念に大別できます。

 この中でちょっと毛色の異なるのが「気」です。

 「気」は、「人」「モノ」「カネ」「時間」すべてを包む「雰囲気」のようなものです。はっきりした実体があるものではありません。また自分を取り巻いているものでもあるので、かえって気づきにくいのです。

 そんな「気」に気づくための要諦を畑村氏はこのように示しています。

(p190より引用) 「気」に気づくために必要なのは、歴史を学ぶことと、ものごとをよく観察すること、この二点に尽きるのではないかと私は考えています。

 「歴史を学ぶ」というのは、決定をする「今」が乗っている地盤の大きな動きを意識するということでしょう。

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