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第一法則:陰陽 (兵法三十六計の戦略思考(K・クリッペンドルフ)

2008-11-16 14:43:23 | 本と雑誌

 「兵法三十六計」の成立時期は不明ですが、古代中国の戦国時代を中心とした故事を基本に、17世紀明末清初の時代にまとめられたものだと言われています。

 本書は、「兵法三十六計」を、経営戦略・戦術の検討にあたって有益なパターン集として位置づけ、その一つひとつのパターンごとに戦術の解説と具体的事例を示したものです。

 特に興味深いのは、西洋と東洋の思想的差異を、具体的戦術の解説にあたっての基軸としている点です。

 
(p7より引用) 「兵法三十六計」は、西洋的思考とはまったく異なる道教的思考にもとづく戦術を示すことによって、われわれが暗黙の法則に立ち向かうための、単純で効果的な方法を提供してくれるのである。

 
 まずは、道教的思考の第一法則:陰陽、すなわち両極性の原則です。
 これは、「物事にはすべて陰と陽の両面が存在する」という考え方です。

 
(p16より引用) 文化的な背景により、西洋人は成長する過程において、「悪をともなわない善」・・・「弱みをともなわない強み」を追求するという考え方を頭の中に叩き込むようになる。ビジネスの世界でも、われわれは、「損失をともなわない利益」「衰退をともなわない成長」・・・といったものを求めるのである。

 
 西洋の考え方は、「A or B」的です。
 他方、道教に代表される東洋の考え方は、「A⇔B」という往還運動をイメージしています。

 
(p16より引用) このような西洋的思想の対極には、「悪いことが起きた後には、よいことが起きる」「衰退の後には、成長が訪れる」という「両極性の原則」を根底に置く東洋的思想が存在する。両極性の思考を取り入れている企業は、他の企業が思いつかないような戦略オプションや戦略目標を考案する。

 
 著者が、本書で「陰陽」の考え方にもとづく戦術として整理している9種を、覚えに記しておきます。
 

  • 戦術1:欲擒姑縦 競合を完全には打ち負かさず、「共存的な競争」を通じてともに発展する
  • 戦術2:抛磚引玉 「ギブ・アンド・テイク」の考え方を用いて、相手(顧客)との間に相互依存関係を築く
  • 戦術3:上屋抽梯 相手の逃げ道を断ち、自らに有利な場所で戦う
  • 戦術4:調虎離山 相手が強みをもつ領域の外に相手を誘い出し、その優位性を失わせる
  • 戦術5:遠交近攻 遠い関係にある相手と協調関係を結び、近くにいる敵を攻める
  • 戦術6:借刀殺人 自分以外の第三者に相手を攻撃させる
  • 戦術7:囲魏救趙 自分の仲間(提携先や複数の事業部門等)を利用して、相手を多方面から攻撃する
  • 戦術8:反間計 相手の仲介者にうまく働きかけて、相手が拠り所としている関係を無力化する
  • 戦術9:混水摸魚 商品・サービスを組み合わせたり、切り離したりすることによって、顧客の認識に影響を与える

 
 

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価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-08-01

 
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