もう10年以上、まったく日本のプロ野球には興味がなく試合も全然見ていません。
ただ昨年は「世の中の話題」として「広島東洋カープ」の活躍が大きくクローズアップされましたね。
本書は、かつての広島の黄金時代を支えたスカウト木庭教さんを主人公に、その足跡を紹介したノンフィクションです。
(p105より引用) 「プロというのは入っていから稼ぐところじゃないですか。入団する前にお腹一杯になって、さてがんばろうかという気になりますか。それにね、この不況の世の中、海のものとも山のものともわからない新人選手に、やれ一億円だ、二億円だ、と気楽に支払っているのは野球界ぐらいでしょう。反社会的行為といっても過言じゃない。・・・プロ野球が曲がりなりにも国民的スポーツであり続けてきたのは大衆スポーツだったからだと思うんです。その原点を忘れたらこれは危ういものだと思いますよ。」
主人公の人柄を映したような淡々として落ち着いたエッセイです。この主人公を選んだところで、この作品の出来栄えは決まりましたね。
その点では、他のスカウトや選手のエピソードも興味深いものがありましたが、もっと、この主人公だけを深堀しても良かったように思います。
ちなみに、装丁は諸口あきらさんなのですね、こちらもとても懐かしいです。
スカウト | |
後藤 正治 | |
講談社 |