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文化人の諸相 (文化人とは何か?(南後 由和 編)

2011-01-21 22:36:04 | 本と雑誌

 本書は、(いわゆる)「文化人」の諸相を、10名を越える研究者による論考や磯崎新氏・福田和也氏といった個性的人物へのインタビュー等によって、多面的に紹介したものです。

 それぞれの論考を個別に見ていくと玉石混交の観もありますが、ところどころに「なるほど」という気づきや興味を惹くフレーズがありました。
 そのいくつかをご紹介します。

 まずは、「岩波アカデミズム」という一派についてです。

 
(p24より引用) 大正10年には岩波書店の『思想』が創刊され、アカデミズムとジャーナリズム(論壇)の結合が進んだ。社会学者の竹内洋は、岩波は東京帝大や京都帝大教授の著作・論文を出版・掲載することで、アカデミズムによって正統性を賦与され、逆に、アカデミズムは自らの正統性を証明するためにジャーナリズムの岩波によりかかり、その中間領域に「岩波アカデミズム」なるものが創出されたと指摘している。

 
 これは、とても面白い指摘だと思います。
 私も少々古い人間ですから「岩波」というブランドには弱いところがあります。岩波の学術書が書棚にあると一種のプレッシャーを感じますし、岩波文庫の青帯や白帯は、年に数冊は読まなくてはと思ってしまいます。しかし、その「岩波」ブランドの構造がアカデミズムとジャーナリズムとの相互依存関係で成り立っているというのは正鵠を得ていますね。

 二点目も、メディアに見られる相互依存関係の一相です。採り上げられているのは「学者」、とくに「科学者」の肩書きを持つ歴々です。

 
(p125より引用) イギリスの科学ライターで生命科学論の研究者でもあるマット・リドリーは、「科学的な議論のほとんどは、テレビには向いていない。科学には、考えることや詳細な説明や議論することが必要なのだが、これはメディアが嫌う三大要素である。・・・」と述べている。

 
 このリドリーが指摘する「科学とメディアとの背反性」の裏返しで、そのリエゾンとして似非科学者が登場する機会が生まれるのです。
 この点について、東京大学大学院情報学環教授の佐倉統氏はこう語ります。

 
(p127より引用) もともと相性の悪いマスメディアと自然科学。その間隙を縫って繁栄する「非正統」科学者たち。「脳文化人」「芸脳人」も、このような科学的文化人の一種である。

 
 メディアで科学を語る人物は、いわゆる「界」の中では、純粋学問的な業績をあげていなかったり、異端的・少数意見の主張者であったりするとの論ですが、この真偽については、私も語るだけの素養を持ち合わせてはいません。
 
 

文化人とは何か? 文化人とは何か?
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2010-08-28

 
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