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夜の物理学 (竹内 薫)

2009-05-30 18:41:47 | 本と雑誌

M100  著者の竹内薫氏の本は、「99.9%は仮説」「世界が変わる現代物理学」「仮説力」・・・と気がつくともう何冊も読んでいます。今年になってからは「天才の時間」ですね。

 今回は「宇宙論」「物理学」の話題を材料にしたエッセイです。

 エッセイといっても、最近の議論のエッセンスも紹介してくれています。
 たとえば、最近の宇宙論に関してです。

 
(p33より引用) 2000年前後の天文観測によって判明したのは、
・宇宙の幾何学は平らである
・ハッブル定数の正確な値(137億年分の1)
・宇宙は加速度的に膨張している(=宇宙定数があるらしい)
ということ

 
 本書の面白いところは、ひとつにはエッセイのテーマの選び方にあります。
 数々の「理論」を「定説」「準定説」「異端説」に分類して紹介しているのです。
 「異端説」はある意味「独創的」です。異端説のままで終わることもあれば、後年になって「定説」として再度登場して日の目を見ることもあります。

 さて、「理論物理学」や最新の「宇宙論」となると、私のような門外漢には、「定説」であろうと「異端説」であろうと、自分の頭の中に「絵」として描けないのでどうも理解不能で欲求不満がたまります。

 こういった状態を少しでも解消するヒントが、本書にありました。

 「物理学」に対する2つの姿勢についての解説です。

 
(p157より引用) 量子論の背景には、2つの陣営の「戦い」が潜んでいる。
陣営1「実在派」・・・
陣営2「実証派」・・・
 陣営1の人間は、ホーキングの虚時間宇宙の話を聞くと、
「なぜ、虚時間なのか? 時間が虚数とはどういう意味か? それは本当にあったことなのか?」
というような疑問を抱いてしまう。
 ところが、陣営2の人々にとって、そういった「意味」を問うことに意味はない。
「虚時間にすればうまくいく。そこに意味などない。
数式を書いて観測結果と比較するだけでいいではないか。そもそも《本当》かどうかを論ずることすら無意味である」
と、実用主義で押し通す。

 
 この著者の解説で、理論物理学の議論の様相が少しは分ったような気がしました。
 もちろん、「理論」の内容を理解したわけではありません。私自身「分らない」と感じていたその背景がなんとなく理解できたということです。

 最後に、本書では、著名な科学者の「人間的」なエピソードも紹介されています。

 ニヒルな威厳をもった利根川進教授や鬼軍曹として物理学科の学生の前に立ち塞がった小柴昌俊教授の話は興味深かったですね。
 
 

夜の物理学 夜の物理学
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2005-03

 
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