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空(うつ)の創造 (脳と日本人(松岡正剛・茂木健一郎))

2008-03-22 09:32:53 | 本と雑誌

 新たな気づきや創造は、まさに「新しい」が故に過去の蓄積からの延長線上には現れないとも言えます。
 今、「ない」ものであるから、現れると「新しい」ものとなるのです。

 
(p124より引用) 茂木 以前、松岡さんが言われたことですごく印象に残っている言葉があるんです。「編集工学研究所で、スタッフがコンピュータにずっと向かっているのを見ると、ゾッとする」って。・・・いま、まさに、そういうことが常態化していますね。インターネットの登場で加速化している。
松岡 アタマを充満させてパソコンに向かっている。あれからは何も出ないね。一度、立ち上がって、また戻ってみるといい。あれではアタマの中に隙間が生まれません。

 
 松岡氏の言う「クリエイティブな『隙間』」です。

 
(p124より引用) 松岡 うつろいというのは、移行、変化、変転、転移のことです。・・・空っぽのところから何かが移ろい出てくることが「うつろい」で、目の前にはない風景や人物が、あたかもそこにあるかのように面影のごとく浮かんで見えることをあらわしています。

 
 この点に対して茂木氏は、専門の「大脳生理学」の視点から別の読み解きを試みます。

 
(p124より引用) 茂木 そういう見方って、脳をやっている立場からいうと、すごく面白いのです。脳にとっての「空」は、何もないという状態ではなく、何か隙間があるということです。神経細胞は自発的に活動する。何か少しでも時間があると、それを埋めようとする。うまく設定された「空」があるということは、脳の神経回路のダイナミックスからいうと、何かを生成するための誘い水となり得る。たとえれば「空」から天変地異が起こるようなものなのです。

 
 この「隙間」は、自発的・自律的な成長を促す創造的な空間です。
 この空間があるから、新たな能力の伸びしろが生まれるのです。

 
(p146より引用) 松岡 生命の最初の型は一種の“逆鋳型”(カウンターテンプレート)だろうと思うんだよね。・・・
茂木 ぼくは、教育もそうだと思うんですよ。子どもの作為的能力をつくり上げられるかのようなアプローチは基本的にまちがっていると思うのです。ある設えをして、その中で、子どもの生命力が勝手に枝葉を伸ばすようなアプローチのほうが絶対に正しいと思います。脳の神経細胞は自発的にしか活動しえない。

 
 画一的な狭い鋳型に押し込むのではなく、可能性の拡がりに誘う自由な空間を与える感覚です。

 以前、「フューチャリスト宣言」という梅田望夫氏と茂木健一郎氏との対談集を読みました。
 今回の本と合わせると、茂木氏を挟んで、梅田氏と松岡氏が両極に位置することになります。
 お二人の考え方の相似と相違も、なかなか面白いものがありました。
 

脳と日本人 脳と日本人
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2007-12

 

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