本書は、次なる社会として多くの識者が唱えているいわゆる「知識社会」の特質を、著者なりにサクサクと描き出したものです。
2003年の出版ですから、(当時でもそうだったかもしれませんが、)今の時点では、斬新な指摘に溢れているとは言い難い内容です。
しかしながら、コンセプトワークとしては勉強になりますし、本書で指摘されたポイントは、(残念ながら、未だに達成できていないという意味で)今でも通用する内容です。
たとえば、 「ナレッジ・マネジメント」の問題点を指摘しているなかのフレーズです。
(p104より引用) 現在の日本企業に根強く存在する「情報囲い込み」の文化を、新しい「情報ボランティア」の文化へと変革していくこと。
また、マーケティング関係のコメントのいくつかでは、こんな言い回しをしています。
まずは、「商品生態系」というコンセプト。
商品やサービスのとらえ方として分かりやすいメタファだと思います。
(p130より引用) 現代の市場では、「商品」と「商品」が戦っているのではなく、「商品生態系」と「商品生態系」が戦っているのです。
そのため。たとえその「商品自身」が「良い商品」であっても、その商品が所属する「商品生態系」が全体として魅力の無い生態系であった場合には、「良い商品を作っても、売れない」というパラドックスが起こるのです。
また、購買プロセスにおける「中間業者」を指した「ニューミドルマン」という呼称。
(p137より引用) ニューミドルマンとは、「販売代理」のビジネスモデルではなく、その逆の「購買代理」のビジネスモデルで仕事をする「新しい中間業者」なのです。
企業の立場からの「販売強化」ではなく、顧客の立場にたった「購買支援」という機能の高まりの指摘です。
さらに、これは、よく言われる言い様ですが、「顧客の潜在ニーズ」への対応についての名言の紹介です。
(p169より引用) 「顧客の潜在ニーズ」を「予測」できないとすれば、どうすればよいのか。
あの「パーソナル・コンピュータの父」、アラン・ケイの言葉を、思い起こすべきでしょう。
未来を「予測」する最良の方法は、それを「発明」することである。
最後に、これは私も常に心しなくてはならないと感じた部分です。
(p115より引用) 「言葉の力」は、実は、これからの知識社会においては、極めて重要な力になっていきます。
なぜなら、これからの知識社会においては、世の中に、ますます膨大な情報や知識が溢れ、多くのメッセージが溢れてくるからです。
そして、そのような時代だからこそ、心に深い印象を与える言葉を語る力、短い言葉に気持ちを込められる力、長く記憶に残る言葉を発する力、そうした「言葉の力」が求められるのです。
ここは、まさに「人」の出番ですから。
これから知識社会で何が起こるのか―いま、学ぶべき「次なる常識」 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2003-07 |