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人生の短さについて (セネカ)

2006-11-15 23:33:30 | 本と雑誌

Nero  セネカ(Lucius Annaeus Seneca 前4?~後65)はローマの劇作家・政治家であり、ストア派の代表的な哲学者でもありました。
 32年ごろ政界入りして卓越した弁論でたちまち頭角を現し、49年には法務官に任命されます。このころ、クラウディウス帝の養子であるネロ(写真)の個人教師に任命されますが、後年、そのネロから謀反に加担したと疑われ,自殺を命じられるのです。

 まず、表題作である「人生の短さについて」において、セネカはこう断言します。

(p9より引用) われわれは短い時間をもっているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費されるならば、最も偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。

 しかし多くの人々は、そのことに気づきません。

(p10より引用) 結局最後になって否応なしに気付かされることは、今まで消え去っているとは思わなかった人生が最早すでに過ぎ去っていることである。・・・われわれは短い人生を受けているのではなく、われわれがそれを短くしているのである。

 他方、賢者は、時間を我が物として活用します。
 賢者は、過去・現在・未来を「今」に集約します。

(p46より引用) あらゆる世紀が、あたかも紙に仕えるごとく賢者に仕える。時は過去になったのか。賢者はこれを回想によって摑まえる。時は現在にあるのか。賢者はこれを活用する。時は未来にあるのか。賢者はこれを予知する。あらゆる時を一つに集めることによって、賢者の生命は永続せしめられる。

 セネカは、時間の貴重さを説きます。その意味で、今を大事にせよと言います。

(p28より引用) 生きることの最大の障害は期待をもつということであるが、それは明日に依存して今日を失うことである。

 その他、本書には、「心の平静について」「幸福な人生について」という2編も併せて収録されています。

 「幸福な人生について」とは大上段に構えたテーマですが、抽象的な思索というより、身近な心得といった内容が説かれています。

 まず、冒頭、人生の目標について以下のような問いかけをします。

(p121より引用) まず念頭におくべきことは、一体われわれの努力すべき目標は何か、ということである。次に、よくよく考えねばならぬのは、どんな道を通ることによって、われわれはこの目標に最も早く進んで行くことができるかということである。

 セネカの回答は、自分で考えた道を進むことでした。

(p122より引用) 何よりも大切なことは、羊の群のように、先を行く群の後に付いて行くような真似はしないことである。

 他者の追従は、害悪に至るとの考えです。

(p122より引用) 我々を害悪に巻き込むことの最も甚だしいのは、多数者の賛成によって承認されたことを最善と考えて世論に同調することであり、また沢山のことをわれわれの先例として、道理に従って生きるのではなく模倣に従って生きることである。

 さらに、もっとストレートに断言します。

(p123より引用) われわれは他人の轍を踏むことによって滅びる。

 セネカは「自由」な精神を重んじました。他者の追従は、自らの自由の放棄と捉えていたのかもしれません。

(p129より引用) 幸福な人生の基は、自由な心であり、また高潔な、不屈にして強固な心であって、恐怖や欲望の圏外にある。

人生の短さについて 他二篇 人生の短さについて 他二篇
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:1991-06

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