Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.306:教員をやりながら学生になる二重生活

2009年06月07日 | Learner Centricな人体実験
昨年教員になった時から続けていることがあります。
それは「学生でありつづける」ことです。筆者は40歳半ばから大学教員になったため他の教員に比べてアカデミックなスキルも業績も全然足りていません。どうしたら良いだろうか?と考え、毎期大学の授業を聴講生として受講することにしました。

最近、東大の中原先生が「外側に向けられたメッセージ」というBlogの中で

あなたは、大人に学べという
あなたは、大人に成長せよという
あなたは、大人に変容せよという
あなたは、大人に対話せよ、という

で、そういう「あなた」はどうなのだ?

あなた自身は、学んでいるのか?
あなた自身は、成長しようとしているのか?
あなた自身は、変わろうとしているのか?
そして、あなたは対話の中にいるのか?

という言葉を記しています。
(nakahara-Lab.net 「外側に向けられたメッセージ」090526


筆者も100%同意です。教員である自分が学ぶ姿勢や成長する意欲をみせない限り学生は勉強しないと考えています。考えてみると社会人教育部門で部下を管理していた時も、上司が学ぶ姿勢を見せない限り部下は成長しないと考え勉強し続けていました。仕事が変わっても同じ事やっているのだなあと思った次第です。

ということで2008年の前期は放送大学の「大学と社会」という授業を科目履修生で受講し、後期は桜美林大学のオープンカレッジで寺サキ先生と潮木先生が担当された「大学とは何か」という授業を受講、そして今期は桜美林大学大学院 大学アドミニストレーション研究科の「参加型FD・SD論」(高橋真義先生担当)に聴講生として潜り込んでいます。

初体験の真義ゼミ
さて、今週号は現在聴講生として参加している「参加型FD・SD論」についてご紹介したいと思います。担当の高橋真義先生(通称シンギ先生)のBlogによると、

従来のFD・SD論とは違ったアプローチを今年もいたします。大学の教育・研究・社会貢献のいろいろなカタチ、FDとSDの連携と融合したカタ
チをプロデュース出来る新しい「人財」をつくるためにいろいろな試みにチ
ャレンジいたします。いよいよ大学も、未曾有の経済危機の荒波をまともに受けることになります。学生・教員・職員が「協創人」になること、すなわち持てるパワーを最大限に活かして、一人ひとりがバラバラではなく、それぞれが成すべきことに忠実であること、「大学学生教員職員三輪車論」をカタチにすべき時がやって来ました。ゼミ生には、「一日先生カリキュラム」によって教員体感を個性的にプロデュースしていただきます。半年間のゼミを通して、研究対象としてのFD・SD論ではなく、実戦論として私たちは何をなすべきかを発見し、それを新しいカタチとして創り上げていくことの意味が見えてくるものと確信いたします。

と書かれています。実際に参加してみると、この文章で語りつくされていな
い魅力に溢れた授業となっていました。その魅力を4点に絞ってお伝えします。

魅力1:ダイバーシティな参加メンバー
最大の魅力は、色々な人がこの授業に参加していることです。正規の大学アド研究科の大学院生(すべて大学職員)だけでなく、既に真義ゼミを修了した大学職員、そしてなぜか真義先生が学部で教えている1年生までもが参加しています。さらにはゲストとして会社の経営者や高等教育関連の新聞記者もたまに参加します。私も元大学職員の大学教員というかなり変わったキャリアの持ち主ですが、これだけバラエティに富んだメンバーが集まっているので違和感なく参加できています。ちなみに参加者は毎回約10~15人前後です。

魅力2:毎回の宿題で実力UP
毎回2つの宿題が課されます。一つは新聞記事の切り抜きです。直接大学に関する記事ではなく、周辺の記事を取りあげ、記事の抜粋と大局観のある自分流のコメントを、毎回A4・1ページにまとめます。全く関係のない所から大学経営やFDの話題に持ってくる強引さと視点の鋭さが試されます。毎週続けてることで文書力と社会を見る目が養われます。もうひとつの宿題は毎回異なるテーマの宿題です。真義先生曰く「今まで一度も同じテーマの宿題を出したことがない」とのことです。例えば今週の宿題は・・・・

大学のミッションである教育・研究・社会貢献について、自校(出身大学、
関係大学など)の「弱み」の克服を図ります。
【ステップ1】
それぞれのミッションごとの自校の「弱み」を3点程度考えてください。
【ステップ2】
3×3点の中から「弱み」を1点に絞り、学生教職員が一体になって「弱
み」を克服するための学内向けのアクションプランを考え、それをあなた流
のヒネリを加えてスローガンにしてください。
【ステップ3】
あなたのペーパーについて関係者からコメントを貰ってください。
【ステップ4】
前処理・1~3のステップであなたの気づきをまとめてください。

といった具合です。出された宿題は、その週の宿題採点者および真義先生が毎回順位付けをします。筆者はいつもギリギリのタイミングでやっつけ仕事で宿題を作成しているためか、恥ずかしながら最下位近辺が多いのです。しかし、前回はちょっと時間をかけて頑張ったお陰もあり、上位に食い込むことができました。

この課題のミソは【ステップ3】の「あなたのペーパーについて関係者からコメントを貰ってください。」という所です。実際にやってみると実に参考になることを認識しました。さらに言えば自分に役立つだけでなく、自分のいる職場のメンバーに対して学びの風土を少しずつ浸透させる効果もありそうです。実は最初は恥ずかしくてステップ2までしかやらなかったのですが、ステップ3をやるとやらないでは全く学習の濃さが違うのです。自分の周囲に一度宿題をみてもらってから提出するというのは中々面白い試みなので、今度自分の担当する授業でも試してみようかな?

魅力3:一日先生カリキュラム

本科目最大の魅力は、履修者全員が1度は実施する「一日先生カリキュラム」です。本科目のシラバスによると、「職員が教員体感をすることによって、FD・SDの課題を発見し、大学の資産であり資源である学生と教員を活かすための新たな視座から大学の組織力アップのための実践的なカタチを探る」というのがその目的です。

先日は海外留学の担当をしている職員の方が1日先生を実施したのですが、非常によく構成された授業で感動しました。

筆者の大学では職員の潜在的な教育力を生かしきれていないなあと実感したので、早速先日自分が担当している1年生のゼミで図書館の職員の方にデータベースの検索方法等についての授業をご担当していただきました。喜んで引き受けていただきまして、まだまだ身近に実現できることが沢山あるぞと思った次第です。

魅力4:カレーとビール
授業は毎週木曜日の7限目(午後8時~9時30分)です。その後はなぜかインドカレー屋さんで、ナンとカレーとビールで飲み会となります。最近参加者が少なくなってきたのは、「もうカレーは飽きたよ~」という履修者声ではないかと思うのですが、まだまだカレーナイトは続くのでした。

いかがでしたでしょうか?なおこの授業は見学参加を歓迎しておりますので、ご希望の方は真義先生(shingi[アットマーク]obirin.ac.jp)まで直接メールでお問い合わせ願います。「古賀のメルマガを読んで興味を持った」と書いていただければ話しは早いかと思います。

Blog村の人気投票というのにエントリーしてみました。瞬間風速でもよいので、この記事で紹介した高橋真義先生のShingBlogを逆転してビックリさせようと企んでおります。
よろしかったら投票お願いしますm(__)m
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2 コメント

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すばらしいです! (lamb_labo)
2009-06-13 19:48:00
「自ら学ぶ意識を持ち続けること」は大切ですよね。
本学の卒業式等では、毎回「学びの継続」という
お言葉が出てきます。

ワタシも意識はしつつ、参加できるものはしつつ。。
う~ん。体力。精神力の両面でパワーが弱いのかな?

多忙な本業に迷惑をかけることなく、アクティブに
参加されている姿勢、すばらしいです。
学びの情報は自ら取りにいかないといけませんね・・・(反省)
返信する
Unknown (こが@sanno)
2009-06-14 10:03:51
lamb_laboさん
コメントありがとうございました。

>多忙な本業に迷惑をかけることなく

多忙といってもその日は研究日で授業がないので大学職員時代に比べれば全然楽なのでした。
むしろ参加することで、普段の自分の授業のヒントをたくさんいただき助かっています。

真義先生は太っ腹の人なので、そんな私でも快くクラスに置いてくれています。
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