Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.435:エンディングノート(映画)

2011年12月25日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊


このコラムで映画を紹介するのは、4年前に中田さんが書いた「ベスト・キ
ッド」以来となります。
VOL216:ベスト・キッド コレクターズ・エディション
eラーニングにもビジネスにも、大学教育にもほとんど関係のない話になり
ますが、今回はコガが担当する今年最後の書評ということでお許し下さい。

この映画のWebサイトは下記となります。
『エンディングノート』

糸井重里さんの『ほぼ日』でも「エンディングノートがあまりによかったの
」という特集を組み、プロデューサーや監督との対談を掲載しております。

コガが最近5年間で観た日本映画の中で一番おもしろかったと言っても言い
過ぎではないぐらいの出来映えでした。ぜひぜひご覧ください!

と一人で興奮しても仕方ないので、まずは映画の概要からご説明します。


これ以降は、ややネタバレ注意です。












化学メーカの営業一筋で働いてきた「段取り命」のサラリーマン砂田知昭氏
がこの映画の主人公です。定年退職後、楽しい第二の人生を歩み始めたばか
りの彼ですが、健康診断で癌が発覚します。この映画は、ガン発覚後永眠す
るまでの砂田知昭氏の半年間を、娘であり監督である砂田麻美が追ったドキ
ュメンタリーフィルムです。

最も素晴らしい点は、その半年間をお涙頂戴的な感情移入をせず、ほのぼの
と描ききった点にあります。例えば主人公と長男が末期の床で、葬儀の連絡
の段取りを相談するシーンなどは、かなりシリアスな筈なのに笑ってしまい
ます。しゃべるのもやっとの状況なのに、息子との会話はまるで職場の会議
のような有様だからです。きわめつけは主人公の
「(葬儀で)分からなくなったら携帯に電話ください」
という台詞です。コガは笑いながら涙を流す不思議な体験を味わいました。

「死」をテーマにした日本映画というと、古くは伊丹十三監督の「お葬式」、
最近ですと、本木雅弘主演の「おくりびと」等を思い出しますが、ドキュメ
ンタリーでここまで面白く作った映画は今までないと思いますし、これから
もおそらく出ないだろうと思われます。プロデューサの是枝氏も糸井氏との
対談でおっしゃっていますが、まさに奇跡的なバランスの上に成立している
映画なのです。

コガは自分の父が亡くなった時の記憶と重ね合わせてこの映画を観ていまし
た。父は脳出血で亡くなったため、最後の別れもエンディングノートをまと
める時間もなく他界してしまいました。なのでこのように半年間かけて徐々
に親しい人の前から消えていく死に方というのがちょっと羨ましく思えまし
た。

もっとも、この映画では「ガンと闘う」辛いシーンがほとんど出てこないの
でこんな脳天気なことを言えるのかもしれません。最初肥満気味だった砂田
氏も、抗がん剤を服用していたのでしょう。死ぬ直前にはガリガリに痩せて
外見は相当辛そうでした。それでも最後まで、自分の「段取り人生」を狂わ
せることなく生き続ける(上手に死に至ろうとする)姿には本当に感動させ
られました。ちなみに彼のTO Do Listの最後は、「妻に(初めて)愛してい
ると言う」というものなのですが、この告白シーンは号泣ものです。男子た
るもの軽々しく「愛している」などと言ってはいけないのだなあと本当に思
いました。

昔、コガが社会人教育部門で研修を売っていた頃、ある企業の人材育成担当
部長からこんな事を言われたことがあります。

「プロジェクトというのは、仕舞いをつけてナンボだ。たとえ失敗してもウ
ヤムヤにせず、最後はきちんと振り返って、成果を明確にし報告するところ
までやらないといかん。こんな事は極々基本なのだが、多くのプロジェクト
でそれができていない」

砂田知昭氏は、生前プロジェクトの「仕舞い」がきちんと出来るサラリーマ
ンだったのしょう。だからこそ自分の人生というプロジェクトもきちんと仕
舞うことができたのだと思います。「死に方」にはそれまでの人の生き様が
現れるのです。

映画の宣伝に「終活」という言葉が使われています。学生の「就活」支援で
忙しい今日このごろですが、自分も立派な「終活」ができるよう日々の仕事
を頑張ろうと思う年の瀬なのでした。(文責 コガ)











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