Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.290:ネットラーニング主催「300万人のeラーニング 事例活用セミナー」

2009年02月16日 | セミナー学会研究会見聞録
SATTさんのBlogを見て、このセミナーの存在に気がついたのはセミナーの2日前。予定を確認してみたらなんとか参加できそうだったので急遽申込み&参加しました。これで金曜日は3週連続でセミナーもしくはシンポジウム参加です。うーんやっぱり暇なのかなあ?
・タイトル 「300万人のeラーニング 事例活用セミナー」
・日時 平成21年2月6日(金)13:30~16:30
・場所 明治記念館
・主催 株式会社ネットラーニング

はじめに
筆者にとって明治記念館は思い出深い場所です。現在東京ビックサイトで毎夏開催されているe-Learning Forumの初回開催場所が明治記念館だったからです。当時(2000年12月)は、今は無きALIC(先進学習基盤協議会)が発足したばかりで、eLC(eラーニングコンソーシアム)もまだTBTコンソーシアムでした。Googleで検索したところ、当時のプレスリリースを発見しました。

「e-Learning Forum2000 開催のご案内 12/11(月),12(火) 明治記念館」


ALICの事務局としてO川さんの名前を発見し非常に懐かしく思いました。O川さんは今何をやっているのやら・・・。懐かしさついでにALICのWebサイト(http://www.alic.gr.jp/)を確認してみたら、なぜか【英会話が上達する学習方法】というサイトに変わっていました。

さて、話しを2009年に戻しましょう・・・
私のメルマガはもうすぐ300号ですが、ネットラーニングさんの受講者累計はなんと300万人。桁が違います。かつて筆者の上司が「量は質を作る」と言っていたことを思い出しましたが、事例活用セミナーを通じてネットラーニングさんは量だけでなく質も作り込んできているなあと実感しました。

当日は、キヤノンの人材開発センター所長の嶋岡様より基調講演をいただいた後、ネットラーニング社で関わっている3つの事例についての発表がありました。ちなみに300人の会場はほぼ満席で、同社およびeラーニングに対する関心の高さを実感しました。

【下記は当日の模様】
http://www.netlearning.co.jp/hojin/seminar/ad_49.asp

【事例1】グラクソ・スミスクライン株式会社カスタマーリレーション部 eマーケティングマネージャー和田 信広 様
「医師の復帰を支援する教育学習支援プログラム」


グラクソ・スミスクライン社と東京女子医科大学が産学協同で立ち上げたeラーニング・プログラムについて、その企画の開始からeラーニングサイトの公開までのプロジェクトの紆余曲折を「その時歴史が動いた」風にプレゼンテーションしていただきました。

グラクソ・スミスクライン株式会社は英国に本社がある製薬会社です。全世界に10万人以上の従業員がいるそうです。医療用医薬品の製造販売が中心のため、あまり社名をご存じない方も多いかもしれませんが、「コンタック」「アクアフレッシュ」「ポリデント」を作っている会社と言えばお分かりかと思います。
同社ホームページへのリンク

今回の取組は結婚、出産、育児などやむをえない事情で医療現場から離れた女性医師の復職をeラーニングで支援するという取り組みです。現在医師不足が社会問題になりつつありますが、みなさんは女性の医師数ってどのぐらいかご存じですか?06年度では、医師総数の17%、47,929人なのだそうです。しかし、医師国家試験受験者の1/3は女性です。このギャップは、家事や育児による離職と考えられています。35歳時の就業率は75%しかないというデータがそのことを裏付けています。

離職した女性医師を再教育し、医療の現場に復職してもらえれば、医師不足解消に貢献できるのではないか?そのような思いから東京女子医科大学では女性医師再教育センターを設立し、復職のための取組を実践しています。折しもグラクソ・スミスクライン様の内部でも社内公募制度で同様の取組をしてはどうかという提案が採択され動き始めていました。そこでお互いが協同し、再教育復職プロジェクトの1メニューとして復職のための教育・学習支援のeラーニングを開発・実施することになったそうです。内容につきましては下記の「女性医師再教育センター」のWebサイトで登録後無料で閲覧することが可能です。
http://www.twmu.ac.jp/CECWD/e-learning/index.html

医療の素人の筆者が見ても結構面白い内容です。オススメは静岡がんセンターの先生が講義している「外来で遭遇する緊急疾患の診断」。PowerPoint+講義動画という何の変哲もないeラーニングです。さらに、OnsetとかDKAとか初耳の専門用語がバンバン出現してきます。それなのになぜかとても面白い。これは先生の講義力もさることながら、グラクソ・スミスクライン様やネットラーニングさんが舞台裏で相当がんばってコンテンツ開発をディレクションしているお陰だろうなあと感じた次第です。

【事例2】株式会社ユニクロユニクロ大学 店舗教育チーム 武田 竜太 様 「eラーニングによるオペレーション教育」

今をときめくユニクロ様の事例です。ユニクロ様では店舗のスタッフのシフト表を作成する「店舗稼働計画システム」が全店に導入されています。そのシステムを用いて稼働計画を作成できるようになるための教育をeラーニング化し、新入社員400人向けに実施した件の事例発表でした。

今まで稼働計画作りの教育はOJTが中心で、それを集合研修でサポートする形で教育を実施していました。しかし受講生のレベルのばらつきや、集合研修という物理的な制約から、中々期待するレベルまで集合研修で引き上げることができずに困っていました。また集合研修自体も今後はこうしたオペレーションスキルを修得する場からマネジメントスキルを修得する場に変更したいというニーズもあり、eラーニング化に踏み切ったということです。

eラーニングでは、仮想のデータを用いて実際のシステムのシミュレーションができる等、知識を伝えるだけでなく「できる」レベルまでトレーニングする内容になっています。実施後の受講者の評価は概ね良好だったようですが、「日中店舗のパソコンで勉強しづらい」「紙のテキストが欲しい」等の声があったそうです。また実際に業務で計画表作りに取り組んでいるかという問いに対してYesと回答した受講生は期待した人数よりも少なかったということです。

これらの声に対応するため、受入店長に対して事前の情報共有を徹底するそうです。その内容は、
1)店長が実際のeラーニングを確認できるようにする
2)eラーニングのスケジュールを伝える
3)eラーニング終了後に実践日数を確保させる
といたってシンプルなものです。しかし、eラーニングに限らず、多くの企業でこれができていないケースに筆者はよく遭遇してきました。eラーニングの質や研修の質を問う以前の問題として、企業内教育担当者は、現場のマネージャと研修の内容について情報を共有し、修得したスキルを実践の場で活用させる「経験の場作り」が重要だと改めて認識させられた事例発表でした。

【事例3】日本マクドナルド株式会社 コンプライアンス本部 法務部 マネージャー 野口 英一 様 「eラーニングを活用したコンプライアンス教育」

最後はマクドナルド様のコンプラ教育の事例についてです。といっても現在開発中のため全貌は明らかになっていません。そのような状況にもめげず、マクドナルドの野口様とネットラーニング社の開発担当者から、掛け合い漫才のように楽しく開発中のコンテンツについて紹介いただきました。

コースのねらいは、単にコンプライアンスの知識や判断力を養うだけの教育でなく、社員の意識づけを徹底できないかというハードルの高いものです。一部完成したコンテンツを見せていただいたのですが、短めのGBS(ゴール・ベースド・シナリオ)コンテンツに、チャートを活用したフィードバックを盛り込んだ意欲的な内容でした。

3月に5,000人対象で導入予定ということでしたので、今頃ネットラーニングさんの開発担当者は毎晩徹夜で開発し、死にそうになっているのだろうなあと思いきや、岸田社長のBlogによると「(ネットラーニング社の)全社員平均残業時間は、11.35時間」とのこと。
http://blog.goo.ne.jp/netlearning/e/c9a75d7192c13bc70845c7cff85124e0
なので大丈夫でしょう(*^_^*)

完成の暁にはぜひ発表会を開催していただければと思っております。発表会12時から開始として、参加資格として事前に必ずマクドナルドで昼食を買ってくることとする。そしてハンバーガーやポテトを食べながら完成したコンテンツを見るという企画はいかがでしょうか?ぜひご検討願います。

まとめ
今回3つの企業の事例を聴き、改めてeラーニングって「e」でない所で勝負が決まるのだなあと認識しました。それは、コンテンツ作りにおけるプロジェクトマネジメントの問題であったり、企業内教育に関する現場のマネジメントの問題であったり、要は人と組織のマネジメントなんだと。

ネットラーニングさんのような専門会社に「eの部分=技術インフラ部分」安心して任せることができるようになってきたのも大きいと思いますが、ある意味本来考えるべきところを考えることができる時代にやっとなってきたと認識した次第であります。

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