ボクは雑草です

シフトクリエイティブ社長のブログです。

「ISからの脱出」 原題 Escape from ISIS

2015-11-24 08:16:15 | 報道/ニュース
すごい番組でした。パリ同時テロが起きる前日の12日NHKで放送され、20日に再放送されたチャンネル4のドキュメンタリー「ISからの脱出」です。ISはイラクからシリアまで支配地域を拡げ400万人の女性や子どもを捕虜にしたと言われています。特にイラク北部に住むクルド人の少数派ヤジディ教徒への迫害はすさまじく、女性、子どもを奴隷として売買しています。この番組はヤジディ教徒の弁護士カーリル・アルダキさんが仲間とともに女性や子どもをISから救出する現場に密着したものでした。命がけの行動ですが撮影も命がけ。よくこんな危険なところで撮影できたものだと感心しました。
拉致されている女性や子どもを救出するにはまず拘束されている場所を突き止めなければなりません。そのためチームはラッカのIS支配地域に入ります。入り口では戦闘員が検問しています。ニセのIDカードで通過します。撮影はすべて隠し撮りです。ラッカの支配地域に入りました。路上に面した店では野菜や果物が売られています。黒いベールで目だけを出した女性が買い物をしています。平常をよそおっているようですが目はおびえていました。車は少ないですが行き来しています。戦闘員ではない男性も歩いています。8才ぐらいの少女が買い物をして戻る様子も。やはり黒ずくめです。顔を出して車に乗っていた女性が戦闘員に止められ「女が顔を出すことを神は禁じている。」などとあやうく捕まるところでした。ISの宣伝カーには“女はイスラム法に従え”というステッカー、難くせをつけ片っ端から殺害する戦闘員、法も秩序もない無法地帯がなぜこれほど広がってしまったのか、恐怖の支配が観ているこちらにもその場にいるような臨場感で伝わってきます。
ISの宣伝ビデオには神に逆らったとして男性2人が公開殺害されるシーンや不貞の罪で女性が投石により処刑されるシーンがありました。ISから救出された女性や、元ISの戦闘員だった女性が残酷なレイプの様子を語ります。「手足をしばられ最初に司令官がレイプ、そのあとボディガードたち6人に、さらに14人に、ありとあらゆる辱めを受けました。」語った女性はそのまま起き上がれなく息をすることも出来なくなりました。9歳の少女までもレイプの対象でした。もはや人間のすることではありません。
いよいよ、救出の日です。カーリルはISに潜入している仲間から連絡を受け救出場所へ向かいます。小高い丘の上からラッカを見ると、それはボクが想像していた風景ではありませんでした。砂漠のような土に囲まれ無機質なコンクリートのビルを連想していたのですが、丘のまわりは草や花があふれ、土の道がS字に続くまるでメルヘンの風景でした。そんな丘に囲まれた少し低いところにビルの集まる街があるのです。そのどこかに拉致された女性や少女たちが押し込められているのです。仲間から連絡が入ります「いま、そちらへ向かっている、24人の予定だったが34人になった。」カーリルは応えます。「こどもを泣かせるな。こどもが泣いて失敗したことがある。」丘の上へ移動します。「爆撃に気をつけろ。」しばらくすると救出された女性や子どもが丘を登ってこちらへ来ます。2日間歩きどおしです。「かたまるな。バラバラになれ。」1歳ぐらいの赤ちゃんを抱いた女性もいます。カーリルたちも丘を下り全員の救出に成功しました。
カーリルは言います。「俺はひとり残らず救出するまでつづける。」「ISに捕まるか殺されるまで・・」命を懸けISに立ち向かうクルド人の強さを知りました。
いま、ISの戦闘員は外国人を含めても10万人もいません。その戦闘員たちが普通の市民数百万人をイラク・シリアで支配しています。パリ同時テロの報復でフランスをはじめ各国が空爆を開始しました。目標はISの拠点と言っていますが、そこには支配されている普通の市民がおびえながら暮らしています。イギリスのキャメロン首相がテロ後3日の空爆でISの戦闘員を33人殺害と発表しました。しかしその何十倍いや何百倍もの一般市民が犠牲になったことは容易に想像できます。あのメルヘンのような花と緑あふれる小高い丘の風景を知った時、各国が競って力を誇示しようとしている空爆、たった33人を殺すために億という費用をかける空爆に意義があるのか、いったい誰のための空爆なのか、素朴な疑問がふつふつと沸きました。(つづく)

写真は救出される女性やこども(Cnannel4ウエブサイトより)


こちらはYouTubeで見られる緊迫した救出シーンです。人質は2日間以上歩き続けこの丘に着きました。救出チームも2日間寝ていません。全編も見られますよ。Escape from ISIS

2015/11/23