ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
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国分一太郎「教育」と「文学」研究会

心のケアと自立のための日記指導-2 「はじめて書く日記」

2016-03-31 10:05:29 | Weblog

        心のケアと自立のための日記指導

      ―「週一日記」のすすめー

 

(三) はじめて書く日記

 

 1 新しい学年になって「心が動いた日のこと」を

 予告しておいた日の朝の会に、日記帳を子どもたちにもどします。そして、今日は、この日記帳に、はじめて書いてもらうことを伝えます。

 新しい学年になって心が動いたこと、ドキドキした日のことを書こうと話します。始業式の日のこと、その日、家に帰って話したこと。桜の木の下で出席をとり、自己紹介をしたときのこと。先生とすもうをとったときのこと、授業のこと、いろいろと思いださせ、その中から一つえらんで書くようにさせます。

書 く時には、今日の日付、曜日、天候を一行目に書くように話します。そして、題をつけて書くように指示します。日記にも題をつけるのは、書きたいことがらを生活の中から「切り取って」、そのことだけを書くように習慣づけるためです。

 題の後には、名前を書いてもらいます。「自分のノートなのに、なんで名前を…。」という子がでてくるかもしれません。「これでもう3行書けたことになるのではないか。」と、ひとこと冗談をいったあとで、「たくさんの人の日記帳を読むことになるので、そのとき、いちいち誰が書いているのか表紙を見るのでは、時間がかかってしまいます。名前を書いて、その日に書いたところを開いて出してくれると、誰が書いたかわかって、すぐに読むことが出来るからです。これは先生からのお願いです。」こういうと、それからは名前も忘れずに書いてくれます。

 教師にとっても、長く続けるためには、こんな小さな工夫をしていくことも大切です。

「はじめて書いた日記」には、いつまでも心に残っているものがたくさんあります。

 

  いやな先生になった

                                  5年・ひろゆき

 始業式に日、組がえの日だとはりきってきたぼく。自分では、「また石渡先生がいいな。」と思っていたが、デンチュウテイコウ(田中定幸)なんて、へんなあだなの先生になっちゃった。ちょっとおっかなそうな先生だ。なんだかぼくには、むいてないような気がする。(以下略)

 

 この日記を読んだときには、ちょっとショックでしたが、よし、このひろゆきさんを、一年かけて「石渡先生もよかったけれど、田中先生もよかった」と思ってもらえるようにがんばろうと闘争心をもやしました。そんな思いも交えて、この日記を紹介しました。ひろゆきさんの心をここで知ったことは、いいことだったと今も思っています。

 ここでのねらいは、 

・まず、日記帳に一斉に書かせて、書き慣れさせること。

・新しい学年になった、「ある日のこと」を書くことで、日記には、必ずしもその日にあったことだけでなく、数日前のことでもよいこと。いつも、思っていることでもよいこと。

・その日の出来事ではない場合、「おとといのことでした」というように、いつのことかをはっきりさせて書けばよいこと。

・書くときには、その出来事の「はじまり」のところから順に思いだして書くこと。

 

 そして、この時期、何よりも大切なことは、子どもどうしの心をつなぐには、まず、教師が、一人ひとりの子どもとつながれるように努力すること。その気持ちを大切に、「はじめて書いた日記」を読んでいくように心がけます。

 

 これを、ひとつの「作文の授業」〈ある日。あるときのことを、出来事の順に思い出して、したとおり、見たとおり、「~しました。」「~しました。」と過去形表現を主にして書く作文の授業〉として実践するのもよいかと思います。