もんぺの弟よ 先生をとりまいて集まれ
国分 一太郎
やあみんな。お目でたう。
昭和十年一月一日。
お前たちは十か十一になつてしまった。
先生は二十五になつたぞ。
今日は新年だから、すつて來たけれど、こらこんなにひげが生えて來たぞ。
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去年は米がでない年。
みんなの人々からいろいろ心配していただいた。
「光」の先生からもらつたみかん。
益雄さんからもらった手紙。
峯地先生からもらった綴方字引。
みんなが九か十の年で、先生が二十四の年は米の出ない年だつた。
いつまでもわすれないでゐよう。
米がでないのは今年ばかりではないかもしれない。これからも又あるかもしれない。
米がでなくてひどいのは、ここばかりではない。もつともつとひどい所もあるのだ。
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昭和十年。式が終わったら、今年はだちんのみかんももらはれないし、このウスツペラな文集でももらって、よめよめ。
もんぺの詩をよめ。
もんぺはく子の詩を、こゑたててよめ。
「もんぺの子供」の歌をうたってくれ。表紙のうらにかいておくからな。
(『もんぺの弟』第二号)『国分一太郎の世界―こぶしの花』に収録
もんぺの子供
国分一太郎作詞 藤井吉次郎曲
一、雪だ もんぺだ みんな はけ
もんぺ はく子は 寒くない。
二、きりり しめてだ 結んでだ
もんぺい はく子は しまりよい。
三、ゆきだ 吹雪だ ゆき道だ
學校へ 行く子の 行列だ。
四、小さい 方から ならんでだ
もんぺ はく子は げんきよい。
若き青年教師国分一太郎は、新しい年のスタート、そのとき配った『もんぺの弟』第二号にこう書いた。 冬休み明けのスタート、先生方はどんなよびかけをこどもたちにしたのだろう。今年も、子どもたちにたくさんの呼びかけをしてほしい。学級通信や文集でもよびかけて、子どもといっしょに、今を、そして未来をつくっていってほしい。