ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

[田中定幸先生への手紙」

2010-10-21 14:37:10 | Weblog
 今年の夏、高知にお住まいの宮川昭男先生からいただいた手紙に〈追伸〉として次のような文章が書かれていました。

 幡多国・幡多作機関誌『波多』229号に何か書いてくださいという依頼がありましたので「田中定幸先生への手紙」と題して書かせて頂きました。同封しておきます。(一冊しかないのでコピイして)とありました。
実際の手紙を少し修正した部分もありますがお許しください。

 心のこもったうれしい便りでした。宮川先生にお願いして、ここに紹介させていただくことにしました。


     田中定幸先生への手紙
                             宮川 昭男
 『作文指導のコツ①』をお贈り頂いたのは、2月、梅のちらほらと咲く季節だったと思うのですが、季節は移ろい、葉桜の季節となってしまいました。
 お礼の手紙を早く早くと思いながら、今日になってしまいましたこと、ほんとうに申しわけありません。
 以前頂いた『書ける子どもを育てる』(日作広島大会の時)『育てたい表現力』(1996年12月)でも、同じように感じたことでしたが、「書くことがなぜ大切か」と「書き方の具体的な指導」についてひじょうに明快に書かれていて、心にすうーっと入ってきます。
この度の『作文指導のコツ』シリーズは、よりやさしく、わかりやすく書かれていて、現場でどう書かせていいか悩んでいる初心者の教師の入門書としても最適だと思います。
この間、教師をしている教え子にも読んで生かしてもらいたいと思い、書店に注文して取り寄せ、送ってやったことでした。
「はたけのおてつだい」「雨がふった」「おぼえちょってください」「なばなの手つだい」など多くの作品を『小砂丘賞作品集』から引用されているのも、高知県の教師にとって親しみやすく、感謝したい気持ちにもなってきます。P56~58の「いのししのこと」も、私達の住んでいる幡多地方の山奥、愛媛との県境の学校の子どもの書いた作品です。

 「『ある日型・Ⅰ』の文章を低学年のうちからくりかえし書くことで、たしかな文章表現力と『生きる力』が育つ」。

 ほんとうにそのとおりだと思います。

 現場では「書く時間」「読み合う時間」などの確保が以前よりも難しくなったということをよく聞きますが、教師が作文教育の意義と方法を認識し、愛情や情熱・意欲があれば子どもはどんどん書いてくれるものですよね。
 学級の中で読み合い、理解し合うことがとても大切であることは論を待ちませんが、それ以前に担任教師が一人ひとりの子どもの日記・詩・作文の最良の読者でなくてはなりませよね。

 どの学校でも、低学年の時から、「ある日型」(展開的過去形表現)の指導をしっかりとしてほしいと思います。一人ひとりの書いた文章の「書きぶり」や「生活のしぶり」などのいいところを大切に読み合い、語り合い、認め合い、お互いの人間理解と繋がりを深めていってほしいものです。

『育てたい表現力』をぱらぱらとめくっていますと、愛知県の中学校の大河内清輝くんの自殺のことで、「その心の叫び(遺書)がみずから命を絶ったあとに目にふれられているーもしも、それよりまえに、だれかの目にとまっていたら。」というところが目に止まりました。
これは、いじめが原因だった悲しいできごとだと思いますが、この何年か、親の虐待による子どもの死という以前では考えられない悲しいできごとが現実におこっていますね。一昨年、高知県にもあり、つよい衝撃を受けたことがあります。
 当時、その学校にいた教師が学校としての真剣な取り組みを要請しても、なかなか取りあげてもらえなかったばかりか、その教師が不当異動されてしまったことも聞きました。その教師からずっしり重い資料を送ってもらい、その真剣さに敬服するとともに、問題の根の深さにあらためて考えさせられたことでした。

 ところで、昨年の小砂丘賞作文教育研究大会に講師としておいでくださっていた際、私に会いたかったとおっしゃっておられたということを森広幸君から聞き、とてもうれしく思いました。私も、お会いしたかったのですが残念ながら出席できませんでした。
一昨年は交通事故で二ヶ月以上入院、その前の年は心臓手術、そのまた前の年は足の大怪我で、それぞれ二ヶ月以上の入院をしていました。今も、いろいろあって、五つの病院に通院していますが、それ以外に眼も見えにくくなり、14日には高知の医療センターの眼科へ行く予定です。耳もきこえにくくなりました。
 また、血圧が高かったり低かったり、不安定な時もありますし、糖分や塩分控えめの食事に気をつけるなどの日常ですが、眼以外は病院の検査・診察や薬のおかげで、今のところまあまあといったところでので、他事ながらご安心ください。
 先生は、お元気であいかわらず大活躍をされているご様子で、なによりです。
 どうか健康にはくれぐれも気をつけられ、益々ご活躍くださいますようお祈りしております。
 奥様にも、どうかよろしくお伝えください。

                                                   宮川 昭男
田中 定幸 様

〈追伸〉私の妻も、8年ほど前に退職しましたが、退職の時、児童の作品集を作りました。先生に読んで頂きたく、同封いたしました。

○その後、田中定幸先生から心のこもったお手紙と近著『作文指導のコツ(2)』と同封のような「国分一太郎『教育』と『文学』研究会」の 案内文書を送ってくださいました。『作文指導のコツ(2)』は(1)の次の段階の指導〈第一章「何日もつづいたこと」を書くときの指導 ―「ある日型・Ⅱ」〉と「第二章いつもあること」を書くときの指導―「いつも型・Ⅰ」〉が、指導例と作品例を挙げて、とてもわかりやす く書かれています。初心者はもちろん、ベテランの先生方にも必ず実践の参考になると確信をもってお薦めします。「子どもの未来社刊」で す。
○また、私こと、この手紙のあと、また体調を崩し、せっかく近くのあかつき館で幡多国の大会が開かれるのに、よう出席しません。申しわけ ありません。
  いい講師が来てくれるのですね。パネル討論もいい企画です。
  みなさんがたくさん来てくれるといいですね。
 なお、以前頂いた本年度の研究体制・研究計画はやる気満々、情熱と緻密さが感じられ、吉尾ムツ子先生達と感心していたことでした。
○大会案内を見ていて、今から25年前、〈平和教育と文学の授業〉というテーマで開催した第32回幡多国大会に、高木敏子さんが沖縄行の予定 を変更しておいでてくれ、『ガラスのうさぎ』の感動的なお話をしてくださったことを思い出しました。
  そして、その後、名作『十三湖のばば』で知られる鈴木喜代春編『子どもにおくるいっさつの本』に私も推薦する一冊の本として、『ガラ スのうさぎ』を書かせて頂いたことも同時に思い出していました。
 『ガラスのうさぎ』は、悲しい体験に基づいて書かれ、戦争の悲惨さや家族愛の大切さ・どんなことがあってもつよく生きぬいていくことの だいじさ、平和の尊さなどを深く考えさせられる、感動的な本だからです。
  今でも一冊の本をといわれれば、躊躇なくこの本を推薦します。子どもには勿論、親や教師にも。
  宣伝になって恐縮ですが、まだ読んでいない方がいれば、ぜひお読みください。そして、まだ読んでいない子ども達にもぜひ読ませてくだ さい。


 『ガラスのうさぎ』
           高木 敏子 著
          武部 本一郎 絵
          出版社 金の星社
          宮川 昭男 執筆

 〈平和を大切にする心〉
 敏子さんは、戦争でお母さんもお父さんも、その上、かわいい妹さん二人までも亡くしてしまいます。一人ぼっちになった悲しみ、そのあと生きていくつらさは、どんなに深いものだったでしょうか。
「新版」な〈見やすく〉〈読みやすく〉〈わかりやすく〉なり、かなり厚くなっていますが、値段はそのまま。一人でも多くの人に読んでもらいたい、思いやりの心、平和を大切にする心を育ててほしいという、著者の熱い思いが伝わってきます。
今、この本は、中国語・タイ語・ドイツ語・英語など十か国語に訳され、世界のたくさんの人達に平和の尊さを訴えかけています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第4回国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内

2010-10-20 21:47:37 | Weblog
           生活綴方の理論と実践を深める



    主催・国分一太郎「教育」と「文学」研究会・会長・田中定幸
事務局・〒155・0033 東京都世田谷区代田6-19-2・乙部武志方
℡03-3466-0973 FAX03-3465-2767
       共催・綴方理論研究会・代表・乙部武志


             第4回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内  

 いかがお過ごしでしょうか。公私ともにお忙しい日々を送られていることと存じます。上記のように今年も学習会を計画しました。第4回目になります。日時・場所と内容は下記のようになります。3回目に増して、裾野を広げ、1名でも多くの方に参加してくださるようにお願いします。
国分一太郎のふるさと山形県東根市で、第6回の国分一太郎「教育」と「文学」研究会(7/24~25)を2日間開いてきました。地元の人々の応援をいただき、100名を超す人々が、県内外から集まりました。来年は、国分一太郎生誕100年記念の研究会(7/23~24)を開催する予定です。
 今年、滋賀県で日本作文の会全国大会が行われ、来年は、東京で第60回の全国大会(7/29~31)が開催されます。その準備も兼ねた東京作文協議会主催の東京大会では100名を超す人が集まりました。最近の研究会には、若い人が、増えてきているという感じです。
 生前、国分一太郎は、誰にでもできる、「文章表現指導」の理論と実践を大切にしておりました。若い人が、職場に増えてきている今だからこそ、この研究会を充実させたいと考え、今年も企画しました。


                        記

1.日 時 2010年 11月27日(土)
           9時30分から4時30分(受付開始9時~)
2.場 所 豊島区立池袋小学校(YAHOO!JAPAN・住所・校名で検索。)
     池袋西口(東武デパート側)より徒歩10分 豊島区池袋4-23-8 
3.内 容
  午前・実践報告
   『いちにのさぁん』の子ども達とともに
笑いあり、涙あり、けんかあり…個性あふれる2年生の教室からはじけ、あふれた詩や日記を紹介し、心を寄せ合いともに育っていった1年間を報告
                田中 安子(元横須賀市立小教諭・横須賀作文の会)
  午後・研究報告
     「書くことを通して自分をつくる」 ~班リレー日記に見る子どもの変容~
                貝田  久(綴方理論研究会)
  午後・特別報告
     明日を紡ぐ若者たち2010 ~教え子たちの「高校時代の作文、そして今」
       ー国分一太郎の志を継いで、今に生かすー
           安孫子 哲郎 (山形県立山形工業高校教諭)

4.会 費 1000円(資料代として登録会員は無料)会員の年会費2000円

5.その他・研究会終了後、池袋駅近くで懇親会を予定しています。懇親会にご出席の方は、事前に電 話等で連絡下さると、大変助かります。遠来の方で、宿泊される方は、各自でお取り下さい。
                                                                       
☆報告者の紹介(敬称略)

〈貝田 久〉
 1972年度川口市立仲町小学校着任。音楽専科として2年、その後学級担任として教職生活を送る。市内飯仲小、飯塚小を経て前川小で2008年度定年退職。2009年度、再任用で上青木小6年生を担任し、教職生活を終わる。
 2000年、飯塚小在職時に榎本豊氏の長女千香さんを担任したことで氏との出会いを得る。その年、同校では研修テーマが「作文」で、その研修主任を務める。榎本氏、田中定幸氏の指導を得て全校で大きな成果を残す。また、日本作文の会、綴方理論研ほか多くの方々との交流の中で作文教育を学び、校内研修を推進する。
 2002年前川小で、週五日制の新教育課程実施を迎える。その年、日本作文の会文集新人賞を受賞。前川小2年目で研修主任となり、新学力観、総合的な学習の時間などで揺れる現場で、「書くこと」を柱にした実践システムづくりを進める。「『読み・書き・計算・基礎知識』を土台に、『ことばの力』を柱に」というスローガンで、基礎学力の充実と作文教育を両輪に、現場レベルの「教育改革」を進める。学年文集賞、学校文集賞などを受賞。再任用の上青木小でも、作文教育を若い世代に伝える。


〈田中安子〉
 今年3月、市内の不登校児童が通う教室の担任を最後に定年退職。
38年間の教師生活では、様々な事情を抱え、個性あふれる子ども達に寄り添い、「生活を綴り、豊かな言葉を育て、生きる力と心を育む教育」を実践。常に書くことを学級作りの中心に据え、毎日夜子ども達の日記や詩・作文を読み、保護者をも巻き込んでの文集や学級通信を発行し続けた。
一貫して、いのち・家族・自然を見つめ、子ども達の中のいじめを見据え、書くこと読み合うことで深く考える活動を展開、それらの実践記録・文集では、山芋賞や、総合優秀賞、・優秀指導語賞・優秀作品賞等、受賞。
 また、作文教育全国大会(神奈川大会)での「現場からの報告」や、神奈川県教育研究集会の日本語分科会の共同研究者、その他市内外の国語や作文教育研究に関わる。
1982年には、国分一太郎・女流綴方人『ちからを伸ばす作文の授業』(日本書籍)を執筆、他に『やさしい詩6年』(百合出版)・『読書を教室に』(東洋館出版社)・『教室で読みたい詩』(小学館)等、多くの共著・編著がある。


〈安孫子 哲郎〉
1951年7月、山形県上山市生まれ。1974年3月,國學院大學文学部文学科卒業後、山形県の高校教諭(国語科)として、県内の8校(全日制6校、定時制1校、通信制1校)を勤務。2007年から現在まで、県立山形工業高校に勤務中。
日教組主催の「全国教育研究集会」に、山形高教組代表のレポーターとして9回参加。そのうち7回が、「日本語教育の作文分科会」である。ライフワークとして、高校生の文章表現指導の土台として『生活綴方』をとらえ、小論文指導にどう生かすか、という研究を続けている。現在、教師生活の決算として、これまでの教え子たちの作文をまとめた、いわば、縦のつながりの作文集発刊の準備中である。教え子たちが卒業後何年かして、高校時代に書いた作文を振り返った時、どんな思いに至るのか。高校時代に作文を指導した者として、教え子たちのその後の人生を読ませてもらい、自分がやってきたことを検証したいと考えた次第である。
「高校作文教育研究会」及び、「国分一太郎『教育』と『文学』研究会」の会員。2011年の国分一太郎生誕百年記念同大会の交流会を盛り上げるべく、この秋から、東北芸術工科大学の和太鼓講座も受講する予定である。

        (連絡先)国分一太郎「教育」と「文学」研究会事務局長 榎本豊 090-4920-7113
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出版のご挨拶

2010-10-11 11:05:09 | Weblog
「季節」があるというのは、いいものです。いつのまにかあの夏の暑さをわすれて、爽やかな毎日を送っております。
 その後、お変わりなくご健勝にてお過ごしのことと存じます。
すでにご承知のことと存じますが、子どもの未来社より『作文指導のコツ①低学年』を二月に、六月には『中学年』、そして、このほどようやく『作文指導のコツ③高学年』を刊行し、全3巻としてまとめることができました。
『作文指導のコツ』①~③では、子どものうちに育てておきたい表現力とは何かを、明らかにしています。この「四つの型」の表現の指導を、授業の中に位置づけ、表現の過程にそって「ひとまとまりの文章」を書くことで育つ表現力を、その「型」ごとに明らかにしました。
 文章表現力とあわせて、ものやことを知り、理解することでもある「認識」、ものやことのとらえ方、感覚器官のはたらかせ方、心のはたらかせ方ともいわれる「認識力」が、それぞれの学習でどのように身につくかについてもふれています。
 さらに、その指導の展開をより具体的にするために、それぞれの「型」に合わせて実践例を紹介しました。
 くりかえし実践し、たくさんの方々から学び、考え続けてきた「作文の授業」についてまとめたものです。できるだけたくさんの方々にお読みいただき、ご批評をいただきたいと思って折ります。また、お知り合いの先生方にもご紹介いただけたら、幸いです。

 最近、特に月日の経つ早さを痛感しています。来年の七月(二三日~二四日)には、「国分一太郎生誕百周年記念の集い」が東根で開かれます。全国の方々にもよびかけつつ、自分にできる「一太郎研究」にもとりくんでいきたいと思っております。
 今後とも、かわらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆になりましたが、寒い季節に向かいます。どうぞお身体に気をつけてお過ごしください。

 2010年10月10日
                                     田 中 定 幸
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする