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新憲法の前文には、「海洋国家」の文言を!!(その1)

2006年03月14日 01時40分37秒 | 憲法の話題
  昨年の衆議院選挙で、自由民主党が大勝したことで、憲法改正論議が一気に盛り上がってきました。
  もともと、自民党というのは、自主憲法の制定のために、1955年に保守政党が合同したのが結党のきっかけです。そうだとすると、やっと本来の目的を思いだしたということもできそうです。

  憲法というと、猫も杓子も第9条というような状況があります。確かに、これも大切な条文であることには違いありません。しかし、すでに自衛隊が存在している以上、これを憲法が追認するという以上の意味はないでしょう。

  そもそも、英語でいう「憲法」に当たる、constitutionという単語には、「構成」や「体質」という意味もあります。つまり、法規範であると同時に、その国がどんな国かという特徴を表しているものだということでもあります。

  では、その国がどんな国か、もっともよく表現されているのはどこか??

  それは、前文です。

  我が国の憲法にも、前文はあります(原文は●こちら)。しかし、これが日本という国がどんな国か、的確に表現しているとは、私には到底思えません。
  特に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とか、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という、いかにも日教組が好きそうな部分部分は、まるでリアリティが感じられません。世界に突如出現した完全無欠の理想国家の建国宣言とでも言えばいいのでしょうか。
  もっとひどいのは、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という部分です。他国から見たら完全に「余計なお世話」でしょう。
  このように、我が憲法の前文を見ても、日本という国がどんな国か全くわかりません。こういう憲法を、宗教の教義のように頑迷に信じている人たちが、「平和憲法を守って滅ぶ国が一つぐらいあってもいい」(森永卓郎・経済アナリスト)とか「戦争の準備をすると戦争が来る」(土井たか子・前社会民主党党首)などと、日本という国などどうでもいいという態度を採るのも無理はありません。
  
  では、前文にどんな言葉を入れれば、日本の憲法としてふさわしいか?

  私は、部分的ではありますが、明確な答えを一つ持っています。それは、


  「海洋国家である我が日本は」


  という文言を入れることです。

  なにそれ?魚をよく食べるってこと?  

  ・・・まあそれも外れではありませんが、もう少し深い意味があります。それは、我が国の生存は、海にかかっているといっても過言ではないということです。

  よく、日本は技術立国だとか言われますが、その基盤が「海」だということはあまり自覚されていません。

  例えば、レアメタル(希少金属)を例にとってみましょう。

●レアメタルの海外依存度

(以下引用)

■日本の全輸入量に占める国別割合(元素の右は、主な用途)

ニッケル(Ni)
メッキ、各種合金

インドネシア(44%) オーストラリア(12%) ニューカレドニア(10%)
フィリピン(9%) ロシア(4%)
 上位5カ国計 79%

クロム(Cr)
メッキ、ステンレスの原料

南アフリカ(57%) カザフスタン(18%) インド(8%)
ジンバブエ(7%) 中国(5%)上位5カ国計 95%

マンガン(Mn)
電池の陽極、マンガン合金

南アフリカ(44%) 中国(26%) オーストラリア(22%)
ガーナ(3%) インド(2%) 上位5カ国計97%

コバルト(Co)
医療用(コバルト線照射)、コバルト合金(ジェットエンジンなど)

フィンランド(23%) オーストラリア(19%) カナダ(13%)
ベルギー(13%) ザンビア(10%) 上位5カ国計78%

タングステン(W)
電球のフィラメント、タングステン鋼

中国(79%) ロシア(9%) 韓国(3%)
ポルトガル(2%) アメリカ(2%) 上位5カ国 95%

モリブデン(Mo)
自動車用薄板、航空機用特殊複合材、脱硫触媒など

チリ(31%) 中国(28%) メキシコ(15%)
カナダ(9%) アメリカ(6%) 上位5カ国計89%

バナジウム(V)
合金として被覆材、耐熱材に

南アフリカ(68%) 中国(20%) アメリカ(2%)
オーストラリア(2%) 台湾(2%) 上位5カ国計94%

【出典】日本貿易月表

※各鉱種輸入量は、様々な形態・品目で輸入されているため、
 純分に推定換算して合計量を算出しています。

(引用以上)

  こうやって見てみると、ハイテク工業製品のほとんどに使われているのがよくわかります。こういったレアメタルがなければ、我が国の技術も生かしようがありません。
  
  ここが、日本の弱点なのです。何も、レアメタルに限った話ではありません。技術は素晴らしいが、資源はない。これは、戦前から全く変わっていません。我が国の技術を生かすためには、資源を海外から調達しなくてはいけないのです。特に、工業原料として用いられる金属は、そのほとんど全てが船を使った海外からの輸送です。
  このような日本という国の「弱点」は、おそらく変わることはないでしょう。なぜなら、我々は鉱物資源に乏しく、海に囲まれたこの日本という土地に住み続けなくてはならないからです。

  日本には、広い土地など必要ありません。どんなに狭い土地でも、そこに住んでいる日本人が、物にいくらでも付加価値を付けて、外国に売ることが出来るからです。
  逆に、海の安全、つまり、シーレーン(海上輸送路)の確保は、国が全力を挙げて取り組まなければならない課題です。日本の繁栄は、海上輸送が滞り無く行われることが大前提となっています。
  教科書にもこういうことをきちんと書いて、子どもたちに徹底的に「海は日本の生命線」と教えるべきです。なぜなら、これから一人前の国民になる子どもたちも、「何を守ればよいのか」という目標を共有しておくべきだからです。
  ●扶桑社の「新しい教科書」は、我が国で日教組のようなランドパワーに加担する勢力が吹聴する「自虐史観」を覆す点で画期的なものでした。
  しかし、「新しい教科書」を巡る論争が、どうも「あの戦争は悪だったか善だったか」という点だけを巡って行われている(あるいは、意図的にそこだけに矮小化されている)のは、首を傾げざるをえません。日本は今後、どんな国として歩むべきか、そういう考えがすっぽり抜け落ちているからです
  実は、「海洋国家である我が日本」という視点を見失ったために、日本は以前大失敗したことがあります。大東亜戦争(太平洋戦争)がそれです。

  次回は、異論は多数あるかと存じますが、大東亜戦争を題材にして、日本がいかにしてアイデンティティーを見失ったかという問題を論じたいと思います。(つづく)

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4 コメント

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TBありがとうございます。 (舎 亜歴)
2006-03-14 22:04:36
現憲法はファシズムの撲滅が目的だったのですが、その役割は充分に果たしたと思います。ただし、必要以上に長くこの憲法を維持し続けたことには問題です。



海洋国家、まさにその通りです。それをもっと具体的に言えば、近い国を特別視しないことです。どうも最近はネトウヨ達が中韓叩きに熱をあげ過ぎです。



日本が世界を運営してゆくパートナーはアメリカとヨーロッパ。戦後のレジーム・チェンジはしっかり受け入れて世界にもこれを広げるようにするのが日本の役割です。
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コメントありがとうございます (ろろ)
2006-03-14 23:58:54
>舎さん



グローバル・アメリカン政論、大新聞の国際面読むより

刺激になって面白いです。



>どうも最近はネトウヨ達が中韓叩きに熱を

>あげ過ぎです。



そうなんです。続編で、私はその辺も触れていこうかと

思っています。

返信する
海洋国家 (江田島孔明)
2006-03-15 21:35:36
海洋国家としての日本の目的は

短期的には西太平洋とインド洋の連携

中期的には海上、海底(海洋)開発

長期的には宇宙開発です

この視点にたって、メルマガで戦略の提言と実行

をやっていきます。

よろしくお願いします。

日本そしてアメリカを始め、海洋国家にはそれを可能にする素晴らしい技術があるんです。燃料電池、地球シュミレーた、ロボット、バイオ、スペースシャトル

これらの組み合わせが戦略的なされていないのが問題なので、そこを私が補います。期待してください。

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>江田島さん (ろろ)
2006-03-15 22:09:54
「技術革新によるパラダイムシフト」ですね?

これからも期待してます。



地政学についての借用、どうかお許しください。
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