日々是勉強

教育、国際関係、我々の社会生活・・・少し上から眺めてみよう。

「平等」など不要だ!!(その1)

2006年01月06日 22時48分09秒 | 憲法の話題

  物を教える人間として非常に恥ずかしいことですが、私は一度だけ本気で「人を殺してやりたい」と思ったことがあります。

  何年か前に、テレビで東大に現役合格した何人かの女子高生の日常を追ったドキュメントをやっていました。
  私が殺意(笑)を抱いたのは、名古屋の某進学校から東大の文化Ⅰ類(法学部系統)に受かった女の子でした。弁護士の娘で、将来は父の事務所で弁護士として働きたいと言っていたように思います。
  その彼女が見事に最難関大学に合格して、上京した時の話がすごかった。
  東京での住まいは、1LDK。大学1年生で「LDK」が付いているマンションです。家賃は、なんと、月12万円!!

  私はその頃、貧乏暮らしをしていたので、思ったものです。

  「もう、こいつ一人くらいなら、殺しちゃってもいいよな!?」

  もちろん、単なる妬みに過ぎなかったのですが、本気でそう思ったように記憶しています。殺しても、自分が幸せになれるわけではないのに、妬みや羨みが高じて殺意まで抱く・・・恥ずかしいことですが、そういう気持ちを持ったことがあるからこそ、「負け組」犯罪がどうして起こるのか(詳しくは●こちら)が身に沁みてわかるのかもしれません。

  さて、その時もそうでしたが、私の心に強く響いた言葉があります。

   「平等」

  という言葉がそれです。

  人間というのは、生まれながらに平等である。これは、日本のいろんな役所が認めている「公理」(証明を要しないで真実であると仮定した事柄)です。なぜなら、日本国憲法第14条1項に書いてあるからです。●グーグル検索に「生まれながら」「平等」と入れてみると、公的機関のホームページがたくさん引っかかります。
  人が生まれながらに平等だとすれば、名古屋の彼女と私が人生を歩む上でものすごいハンデ戦を強いられているのはどうも納得がいきません。あの女から財産を取り上げて、俺に回せ!という主張も、ちゃんと憲法上の根拠があることになってしまいます。

  仕方がないので、こういう説明がついてきます。東大の教授が言っていることなので(ソースは●こちら)信憑性があります。

>法の下の平等について一番重要なのは、
機会の平等の問題だと思う。

  どうやら、平等というのは、「機会の平等」を指しているようです。「結果の平等」、つまり、今ある状態が平等であることではないんだよ、ということです。
  しかし、名古屋の彼女は親父の潤沢な資金をバックに(笑)、東大入試や司法試験という難関にも十分な準備をして臨める一方、私は大学の学費を1年分しか父に出してもらえませんでした。ふつーの都立校卒なので、下手をすると大学に受かったかどうかすら怪しいです。この二人の何処が、「機会」が平等なんだ、と言いたくなります。
  生前は憲法学で文句無しのナンバー1の権威だった芦部信喜先生も、私の味方をしてくれていますよ。

>十九世紀から二十世紀にかけての市民社会において、
>すべて個人を法的に均等に取り扱いその自由な活動を
>保障するという形式的平等(機会の平等)は、
>結果として、個人の不平等をもたらした
                    (芦部信喜『憲法』岩波書店)

   芦部先生は、だから社会的・経済的弱者に対して保護を与えて、他の国民と同じような自由を享受できるようにしていくようになったんだと述べていらっしゃいます。

   そこで、私が「芦部先生がおっしゃっているのだ、だから、俺も月12万円のマンションに住ませろ!!人は生まれながらに平等なんだ!!」と主張したとしましょう。

  やっぱり、何かおかしい感じがします。なぜでしょう??
  簡単です。そんな平等など、この世の中に「ありえない」ということを、誰もが分かっているからです。生まれてくる家や親を選べない以上、私たちは生まれながらにして何らかの不平等を抱えて生まれてくるのです。
  普通以下の家に生まれた子どもなら、必ず思ったことがあるでしょう。

 「どうして、もっとお金持ちの家に生まれてこなかったんだろう?」
 「どうして、親が美男美女じゃなかったんだろう?」
 「どうして、うちは私立の学校に行けないのだろう?」

  こういう問いかけは、自然な疑問だと私は思います。なぜなら、自分より恵まれている人はこの世の中に、現実に存在しているのです。なぜ、自分はそっちの側にいないのだろう・・・と、子どもが思っても不思議ではないです。
  しかし、現実は不平等なのです。
  私は、他人と比べて絶対的に恵まれている人間は存在していると思います。よく「みんなそれぞれ悩みがある」「金持ちだとトラブルが多い、お金が無くて幸せだ」などという人がいますが、本当に心から言っているか怪しいものです。
  子どもを教えていても、よくわかります。努力しても、本当に勉強が出来ない子は確かにいます。あるいは、同じように塾にお金を払っていても、どんどん学力が伸びる子とそうでない子の違いははっきり分かります。別に、職務を放棄したくて言っているのではありません。事実なのです。
  それなのに、なぜ「平等」などという言葉が生まれたのでしょう?

  人種差別がひどかったから?
  女性が男に虐げられて苦しんでいたから?
  ○○教を信じていると罪もないのに殺されたから?  

  完全な間違いではありませんが、どれも正解ではありません。
  「平等」が憲法の中に書き込まれた本当の理由は、たった一つだけだと私は考えています。それは、

  自分よりも偉い人間を倒して
  (というか殺して)
  権力を奪うことを正当化するため

  です。

  平等というのは、そんなに汚いものなのか??・・・と思われた方は、是非次回もお付き合いください。どんな歴史の教科書にも必ず出ている二つの市民革命・・・「名誉革命」「フランス革命」の話から、現代に至るまでの「平等」の歴史を紐解いていきたいと思います。


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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (あきあき)
2006-01-06 22:52:53
はじめまして。あきあきといいます。

大学一年生♂です。



「平等」という言葉に反応してしまいました。

これは、僕のレポートのテーマなんですよ
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Unknown (あきあき)
2006-01-06 22:55:02
ごめんなさい。間違って書きかけで投稿してしまいました。





アドバイスなんていうと偉そうで申し訳ないんですけど、アマルティア・センの『不平等の再検討』なんかは興味深いですよ
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どうも初めまして! (ろろ)
2006-01-06 23:04:11
大学1年生ですか。若いですなぁ!

面白そうなタイトルですね。図書館で

あったら見てみたいと思います。



私もレポート代わりにブログがんばります。(笑)
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Unknown (煬帝)
2006-01-07 07:31:41
ああ、コメントしたい、と思いましたが続きがあるそうですので我慢します。



私も日々勉強です。
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Unknown (milesta)
2006-01-07 08:15:19
我が子たちは今オーストラリアの現地公立校に通っていますが、日本では考えられないほど貧富の差が激しい。でも日本ほどギスギスしていないのはなぜ?と考えた時に、やはり「平等」という言葉に突き当たりました。

出身国、宗教、収入、生徒たちのバックグラウンドがあまりに違いすぎるので、同じにするということは無理。環境の「不平等」が大前提になっているのです。その代わり与えられた環境の中で、精一杯頑張ったり、良い結果を残した時には、先生方は過剰なくらいほめています。こんなところから、おおらかなオージー気質が生まれてくるのかもしれません。

日本の子供達は、大人たちの悪しき平等主義に縛られて窮屈な思いをしているようで、何だかちょっと気の毒な気がします。
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Unknown (Merge)
2006-01-07 10:43:59
コメントありがとうございました。



こちらのエントリ、大変興味深く拝見いたしました。私も似たようなテーマで書いている途中なので、とても勉強になりました。



milestaさんのコメントにある『環境の「不平等」が大前提』という箇所、僕もこの状態が自然なのだと思います。そこからどう人と人との関係を造り上げていくのかを私たちは熟考せねばならないのではないかと思います。



次回、期待しております!
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お久しぶりです (まらどーな)
2006-01-08 00:32:43
平等というタイトルを見て、それは無理と感じました。

でも、不平等って感じますよね。



一番かわいそうなのは、物言わぬ普通の人ですから・・・

残念!



税金地獄・・・



切腹、じゃじゃーーん

ちょっとふざけすぎました(__)
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Unknown (ふへ)
2006-01-08 00:42:52
私も若い頃はルソーの「人間不平等起源論」なんぞを読んで、私有地の杭を抜き「こんなペテン師の言うことに騙されるな」と言い放つようなカッコいい革命家に憧れたなあ(遠い目)。



「平等」が「自由」の並列概念じゃなく対立概念だという文章を読んだときは目からウロコでした
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コメントありがとうございます (ろろ)
2006-01-08 22:08:29
>>煬帝さん



次は煬帝さんの得意の歴史に関しての記事です。

今から書くので、変なところがあったらご指摘

くださいね。



>>milestaさん



素晴らしい話ですね。milestaさんのコメント欄に

負けてしまわないように(笑)、意義のある記事を書きたい

と思います。がんばります。



>>Mergeさん



こちらこそどうも。そちらの記事に負けないように

がんばりたいです。



もしここをご覧のみなさんで、フランス革命について

興味がある方は、是非Mergeさんのブログにある

「一を聞いて十を知る」というシリーズをご覧ください。

本記事にTBされています。

細かいところまでフォローされており、大変参考に

なります。

私が同様の記事を書いても到底敵わないので、一応

法律やってる人っぽく条文などに注目した記事にしたいと

思います。では、早速書き始めますね・・・。
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平等という幻想は教育から崩壊 (tsubamerailstar)
2006-01-09 12:20:41
私が上京した頃週刊誌が「東大生の親の年収が早稲田生の親を超えた」とか騒いでましたがが、別に騒ぐこっちゃないだろうと当時も思いました。

数年前の不況下でも首都圏での中学受験率は過去最高でしたし、こういう時代だと、地方から首都圏の私大、しかも理系とかだと大変ですよね。私は文系ですが、母校のHP見たら15年前より初年度納入金が1.5倍になってました。親の年収はそんなに増えてないだろうと。(汗)



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