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ロシア、ついに危険水域を突破!?

2006年01月24日 00時49分20秒 | ロシア関連
  ●以前の記事で、ロシアがNGO(非政府組織)を許可制にしたという話を書きましたが、だんだん事態が深刻になってきているようです。

(以下引用)

 ●プーチン政権、NGO規制の次は「敵対外国人」の入国制限へ新法

【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン政権は、外国の非政府組織(NGO)の活動を大幅に規制する法律を近々施行するが、今度は、ロシアを非難する外国人の入国を制限できる新法の導入を準備していることが明らかになった。ロシアの民主主義後退を懸念する欧米諸国と、そうした外国への警戒心を強めるプーチン政権の溝がいっそう深まりそうだ。

 ロシアのラジオ放送エホ・マスクブイなどによると、プーチン政権の翼賛政党「統一ロシア」が支配するロシア下院では、外国人の入国に関する法律の修正案採択が検討されている。「ロシアを尊敬せず、侮辱的な対応をする外国人」には入国ビザの発給を行わないという内容で、政権に批判的な姿勢を示す外国人ジャーナリストなども対象になる可能性があるという。

 ロシアでは二〇〇七年に下院選挙、〇八年に大統領選挙が予定されており、〇四年秋のウクライナ大統領選挙に合わせて起きた「オレンジ革命」のような政権転覆の動きが起きることを強く警戒している。プーチン政権は、ウクライナには外国の資金が流入し、外国人が多数協力したとみており、これらの新法導入は、ロシアでの“革命再来”の阻止を念頭に置いたものであることは間違いない。(中略)

 エホ・マスクブイの著名な評論家ブントマン氏は、これらの新法導入の動きは「政権側がいかに現在の統治システムに自信を持てず、おびえているかを示している」と指摘した。

Sankei Web 1/23朝刊

(引用以上)

  ・・・ロシアを非難する外国人って、私も見事に該当しますね(笑)。

  日本国憲法でも、外国人に入国する自由というのは認められていません。最高裁判例は、日本にいた外国人の再入国も憲法上保障されていないといっています。(●こちらのまとめを参照)なぜなら、安全保障などの観点から、いかなる外国人を入国させるかは、国際慣習法上国が自由に決めていいからです。
  しかし、それにしても、「ロシアを非難」って・・・どこまで行けば非難なんでしょうかね。これでは、当局が好き勝手に外国人を選別できることになりそうです。

  ロシアが、ここまで焦っている理由は、上の引用にもあるように、ウクライナで西欧寄りの民主的な政権が出来てしまったことです。

  日教組の先生でなくても、民主的なことの何がいけないのか?・・・と思うでしょう。それは、ロシアという国をよく分かっていないということです。

  地政学(geopolitics)という学問領域があります。その基本は、ある国の政治決定は、地球上の地理的条件によって決まるという考えです。(興味がある方は、是非●このサイトをご覧ください)
  この地政学によると、ロシアは、典型的な「ランドパワー」です。ランドパワーというのは、要するに陸軍国です。ランドパワーの考え方は、以下のようにまとめられます。

  まず、国境線を首都からなるべく遠ざけようとする傾向があります。
  イメージが湧かない方は、少し前の東ヨーロッパを思い出してください。みんなソ連(ロシア)の衛星国だったはずです。あれは、ナポレオンやヒトラーのような奴がロシアを陸づたいに攻めるときの「盾」だったのです。

  そのために国境線が長大になり、必然的に防衛のための軍事費が膨大になる傾向にあります。
  地理の授業でもよく出てくる「面積が世界一」であるロシアの軍事費は、世界で2番目です。ちなみに、GDPは16番目で、オランダ(面積は九州と同じ大きさ)よりも下です。これは、別に無理してやっているわけではありません。そうせざるを得ないのです。

  そんな巨大ランドパワーの国が、死ぬほど怖いことが二つあります。

  一つは、「隣接地域を他の強大な国に取られること」です。
  ウクライナの場合、陸の国境というより、「黒海」です。

               

  上の画像の真ん中が黒海ですが、北岸が一部を除いてウクライナ(UKRAINE)領であることがわかります。そして、黒海の東はじには「コーカサス地方」があり、ここはカスピ海油田からのパイプラインが通っています。(地図上のBAKUは油田の町)ロシアがほぼ独占している石油利権です。
  もし黒海に、アメリカのよう強国の空母や原子力潜水艦が出てきたら、どうなるでしょう?カスピ海油田だけではありません。ロシアの首都モスクワさえも危険にさらされます。
  
  そして、もう一つは「民主化」です。
  他民族国家を力でまとめ上げている国で民主化をしたら、どうなるかわかりますか?
  各民族が好き勝手に言いたいことを言い始めるに決まっています。そうでなくても、普通の国民が生活の向上を求め始めたら、軍事費を削減して民政に使わざるを得なくなります。そうなれば、もうランドパワーは空中分解してしまうでしょう。
  ロシアだって選挙をやっているじゃないか、という人は、表面しか見えていません。前回の記事でも書きましたが、ロシアには言論の自由や結社の自由がありません。1998年には、政権を厳しく追及したガリーナ・ストロボイトワという政治運動家が自宅で暗殺されるという事件が起こりました。政治家が暗殺されるなど、他の先進国ではまずありません。プーチン大統領が圧倒的支持で選ばれているのは、そういう「目に見えない力」のおかげなのです。
  しかも、どこの国でも民主化は「経済の自由化」を連れてきます。そうなると、その国は必ず金持ちの資本主義国(アメリカやドイツ)の影響下に入ってしまい、二度とランドパワーの言うことなど聞きません。ユーシチェンコ大統領が、透明な市場経済システムの確立を公約にしているのも、間違いなくそういう狙いがあります。軍事力で弱い奴から絞り取るという、ランドパワーのお得意の戦術が使えなくなってしまうのです。
  
  そこで、巨大ランドパワーが生き残るための作戦は、

 「隣国を、自分に服従するミニ独裁国家にしておくこと」

  これしかありません。実際、ウクライナは2004年の、いわゆる「オレンジ革命」の前までは、クラフチュク、クチマというソビエト共産党出身の独裁政治家が大統領だったのです。それが、いまやアメリカやドイツの子分です。
  ロシアはかなりの危機感を持っています。●ウクライナへの天然ガス供給をストップした事件も、金の問題などではなく、西欧寄りになったウクライナを締め上げるための圧力と見て間違いありません。ウクライナ側が挑発するような行動、例えば、アメリカから武器を購入するなどしたら、最悪の場合戦争が起こります。
  そこまで行かなくても、ウクライナの政府高官を、濡れ衣を着せて社会的に抹殺したり、事故に見せかけて殺すくらいはやりかねません。日本人の感覚では信じられないでしょうが、それがランドパワーというものなのです。
  引用した記事も、「対ウクライナ」、ひいては「対西ヨーロッパ」、もしかすると「対アメリカ」の軍事作戦の、氷山の一角なのではないか。そう思って間違いないでしょう。

  なんですって?
  日本はウクライナでなくて良かった?

  安心してもらっては困ります。すぐ近くに、言論の自由もなく、軍事費を伸ばし続け、民主化する気など毛ほどもないまま、少数民族を弾圧し続けている巨大ランドパワーがいるではありませんか!!その国は、60年間もの間にわたり、「自分に服従するミニ独裁国家」を、朝鮮半島の北側に生きながらえさせています。ロシアと、行動パターンが何もかも一緒です。

  日本まで「ランドパワー」の手に落ちてしまってはいけません。ロシアとウクライナの「戦争」は、日本にも多くの教訓を与えてくれるはずです。これからも、このブログではロシア(やウクライナ)の様子について、折に触れて紹介していきたいと思います。

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11 コメント

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Unknown (milesta)
2006-01-24 07:39:40
ゴルバチョフやエリツィンが登場したおかげでロシアは民主化が進み正常な国になっているようなイメージを持ってしまいますが、最近のロシアの動向を見ると、冷静時代に戻ったかのような圧政が続いているようですね。北方領土問題についても事態は後退しているし・・・。



日本近隣の巨大ランドパワーの国とは双子のように似ていますね。
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ある在日の方に言われた事があります (鵺娘)
2006-01-24 10:33:51
「俺達の国(日本名を名乗り日本の公教育を受けさせて貰いながら何故こういう言葉を使うのでしょう?)がその気になれば日本を滅ぼすのなんて簡単なんだ!」それは軍隊もあるし、核も持っていらっしゃりますからね?

何故、そうしないか?

スズメバチと同じ発想なのでしょう?征服した巣(国)の住人を殺すのではなく奴隷として働かせる!日本はいつまで奴隷でいるのですか?
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Unknown (百式)
2006-01-24 22:13:28
 歴史にifは無いのだから、語るのは無駄なことなのですが、世界平和という観点からいくとドイツと共にソ連を挟撃するべきでした。

 お気づきでしょうが、私はロシア人が嫌いです。
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地政学って面白いですよね! (tsubamerailstar)
2006-01-24 23:57:58
この辺を読み間違った辺りが先の大戦の悲劇な訳でその辺の「反省」と「検証」はしっかり行うべきだと個人的には思っております。

開戦責任はともかく「敗戦責任」というのは間違いなくあると思いますし、そういうことを顧みずに「大亜細亜主義」の亡霊を鼓舞するような偏狭なナショナリスト(小林某みたいなのですかね)は極左マルキスト同様の亡国の徒だと思います。



先日ロシアのオケを聴きに行きましたら、パンフに「国交正常化50年云々」・・・・50年経ったんだったら返すべきもの位いい加減に返せよと翌日思いました。(汗)

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コメントありがとうございます (ろろ)
2006-01-25 01:01:57
>>milestaさん



>ゴルバチョフやエリツィンが登場したおかげで

>ロシアは民主化が進み正常な国になっている

>ようなイメージを持ってしまいますが



自分もそうでした。お恥ずかしい。



>北方領土問題についても事態は

>後退しているし・・・。



そうでしょうね。ランドパワーにとって、国境線の

後退は「死」を意味します。もし2島返還したら、

プーチン政権もすぐに崩壊でしょう。

返還については、抗議はしつつ、あまり期待しない方

がいいようです。



>>ぬえ娘さん



両班(やんぱん)というのはそういうものですから、

しかたがありません。

彼らと話せば分かるという発想は、捨てた方がいい。

大国になり損ねたランドパワーの典型です。



>>百式さん



>ドイツと共にソ連を挟撃するべきでした。



日本の幾多の「崩壊」は、ランドパワーに「深入り」

してしまった、つまり同盟したり、本土を攻撃したり

したことから始まっています。

だから、挟撃については、賛成しかねますね。



私は、ロビー活動を通じて、ランドパワーの肩を持つ

(共産主義的で、中国に優しい)米民主党政権を

倒すほうがよかったと思います。

アメリカの本当の保守派の人々が、民主党政府相手に戦った日本のことをむしろ尊敬しているという

話を聞いて、仰天しました。



>>tsubamerailstarさん



我々はシーパワーなので、計算高くやるべきだという

ことですね。大いに賛成です。



日華事変は完全な消耗戦でした。南京で決戦をやる

のが、日本の勢力維持ラインとしては精一杯だった

のではないかと思います。

中国の内陸部より、サイパンや沖縄を取られる方が

よほど痛いです。

「男たちのYAMATO」に感動するのは悪くありません。

死んでいった人たちには感謝すべきだと思います。

しかし、もっと早く何かできなかったのか、大いに「反省」

することは絶対に必要でしょうね。

それをしないで「戦争は悪だ!」とか叫んでいる日教組は

知能指数が低すぎます。いや、むしろカルト宗教では・・・。





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Unknown (煬帝)
2006-01-25 13:00:26
一般人も「ペルソナ・ノン・グラータ」に指定されるわけですか。



鎖国?
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Unknown (百式)
2006-01-25 23:34:00
 地政学的には大陸国のロシアと戦うべきでないのは承知していますし、今は戦う理由もありません。

 しかし、大国アメリカと死力を尽くして戦った大東亜戦争において、誰の目にも敗戦が明らかになってから日露不可侵条約を破って宣戦布告したあげく、領土と人間を奪っていたロシア人が許せない!

 男として絶対に許せない、それだけです。
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>百式さん (ろろ)
2006-01-26 00:15:32
>日露不可侵条約を破って宣戦布告したあげく、

>領土と人間を奪っていたロシア人が許せない!



自分も、この恨みはどこかで返すべきだと思います。



日本の歴史教科書には、全く出ていないんですよね、これ。(扶桑社を除く)「検閲」している連中は、社会主義は無謬だと思いたいんでしょう(笑)。
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いつもTBありがとうございます (押田)
2006-01-26 00:37:40
タイトルのとおり、いつもTBしていただいているのに、最近では自分の更新で手一杯でなかなかお伺いできず、恐縮しております。



前に私のブログに登場した中国人「フー先生」がまさにこのランドパワーの理論を話しておられました。東トルキスタンやチベットを占領しておきたいのは、まさに首都から国境線を遠ざけたいからだったのです。



ってそんな理由で占領され、同化されるほうはたまりませんね。
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>押田さん (ろろ)
2006-01-26 01:19:11
押田さん、こちらへのコメントお初ですね!



>東トルキスタンやチベットを占領しておきたい

>のは、まさに首都から国境線を遠ざけたいから

>だったのです。



こういうところを見ると、私は、ランドパワーの国

というのは、実はかなり「臆病」なのだという

印象を受けます。臆病=弱いということではありません。

絶えず戦争を繰り返しているだけあって、猜疑心が

異常に強いのです。

恫喝の激しさは、その裏返しでしょう。

それが、エスカレートすれば、本気で戦争をやります。



中国が恫喝してくることをやれば、日本は間違いなく正解を

選んでいるというのは、押田さんが言ってらっしゃった

ことですが、まさに理論上も正しいですね。

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