ブログの話題を再び一流高校の英語教材に戻す。もちろん例のドーキンスの英文である。
まずどのような問題が出されているのか。
実を言うとすべて選択問題だ。たとえば、”comes of age”、”superstition”、the truth finally dawned on one of themといった語句や文章の意味について、適切な英文記号を選ぶというものである。もちろん、英文全体の内容一致問題というのもある。
授業ではオーソドックスに英文和訳やその文法的な解説を行っていくようだ。
せっかくだから英文にもちょっと踏み込んでみよう。私はちょっと難しいと思ったのは、第二段落の最初の所だ。
Today the theory of evolution is about as much open to doubt as the theory that the earth goes round the sun, but the full implications of Darwins revolution habe yet to be widely realized.
とくに the theory of evolution is about as much open to doubt as the theory [=地動説](以下略) のところ。
as much open to doubt as というのを「地動説と同じように進化論も疑わしい」というふうに解釈すると、訳がわからなくなる恐れがある。書き手が進化論をラディカルに支持しているという文脈をよく理解できていないと、この as as 比較文の真意はよく分らなくなるからだ。このあたりについても、先生はよく解説していたようで、生徒は理解できていた。(もっとも、アメリカで、ダーウィンの進化論が今なお激しい批判の対象になっているということを読み手が知っていれば、この文章は実はもっと難しくなってしまうような気もする)。
さて、このドーキンスをとりあげるような授業をどうやって評価しようか。おそらく多くの方々が賛成していただけると思うが、高度な英文読解の授業であるが、それを十分に生かし切っていないと感じるのではないか。というのはこれだけ難しい英文を扱っても、結局のところ英文法的解説と英文和訳に終始する授業すぎないからだ。昔の原仙作の『英標』もこんなものだったのかもしれないが、私はどうも中途半端に思えてくる。どうせ英語長文を学ぶのであれば、(a)英文和訳の訓練だとか、徹底的な音読学習に向いている教材を選ぶのか、(b)あるいは、精神的思想的背景について学ぶことのできるような授業にすべきではなかったか。結局のところ、英語長文をインプットや和訳をするには、この英語はちょっと長くて難しすぎる。また、ドーキンスや進化論的思想について学ぶには、少々テキストが短すぎるように思われる。
もし仮に英語を通じて精神的文化的あるいは思想的な背景を学ぶことに重点を置くのであれば、もう少し異なる教育方法論があるのではないか。例えば、バラエティーに富んだ英文を次から次へと読ませるよりも、もう少し時間をかけてドーキンスの思想につき合ってみる。あるいは、教師が思想的背景について説明をしたり、参考資料をあらかじめ読ませておくのはどうだろうか。(テストに出題されるのであれば、生徒は参考資料を読むであろう)
もし仮に私が一流高校の教師であれば、ドーキンスはちょっと難しすぎるので遠慮したい。(ドーキンスを教えるためには、ダーウィンや進化論ばかりでなくキリスト教と無神論、原理主義などについても解説する必要があるのではないか)。そして、Oxford出版のVery Short Introductionのシリーズであるとか、Britannicaの易しい英文を使って、進化論とダーウィンを巡る背景知識の習得を目指したいものである。進化論や氷河期といったいくつかのテーマーーこれらは大学入試英語によく出てくるテーマであるーーに絞った方が良いと思うのは、生徒にとって有益であるばかりでなく、教える教師にとってもその方が準備しやすいと考えるからである。
なお、予備校の英語教師の著作で言えば、以前紹介した、ロジカル・リーディングで有名な横山雅彦 やとくに古藤晃のものが参考になるであろう。
余談
私は原仙作『英標』を学んだ最期の方の世代ではないかなとも思う。もちろん全部やった。伊藤和夫の『英文解釈教室』ほどではないが、非常に印象的な参考書であった。どんな英文だったかは覚えていないが、モーム、ラッセル、フォースターなどを読んだような記憶はある。今になって思えば、ああいう難しい英語をやる必要はあまりない。ドーキンスはそこまで難しくない。だが、高2向きではないように思う。
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まずどのような問題が出されているのか。
実を言うとすべて選択問題だ。たとえば、”comes of age”、”superstition”、the truth finally dawned on one of themといった語句や文章の意味について、適切な英文記号を選ぶというものである。もちろん、英文全体の内容一致問題というのもある。
授業ではオーソドックスに英文和訳やその文法的な解説を行っていくようだ。
せっかくだから英文にもちょっと踏み込んでみよう。私はちょっと難しいと思ったのは、第二段落の最初の所だ。
Today the theory of evolution is about as much open to doubt as the theory that the earth goes round the sun, but the full implications of Darwins revolution habe yet to be widely realized.
とくに the theory of evolution is about as much open to doubt as the theory [=地動説](以下略) のところ。
as much open to doubt as というのを「地動説と同じように進化論も疑わしい」というふうに解釈すると、訳がわからなくなる恐れがある。書き手が進化論をラディカルに支持しているという文脈をよく理解できていないと、この as as 比較文の真意はよく分らなくなるからだ。このあたりについても、先生はよく解説していたようで、生徒は理解できていた。(もっとも、アメリカで、ダーウィンの進化論が今なお激しい批判の対象になっているということを読み手が知っていれば、この文章は実はもっと難しくなってしまうような気もする)。
さて、このドーキンスをとりあげるような授業をどうやって評価しようか。おそらく多くの方々が賛成していただけると思うが、高度な英文読解の授業であるが、それを十分に生かし切っていないと感じるのではないか。というのはこれだけ難しい英文を扱っても、結局のところ英文法的解説と英文和訳に終始する授業すぎないからだ。昔の原仙作の『英標』もこんなものだったのかもしれないが、私はどうも中途半端に思えてくる。どうせ英語長文を学ぶのであれば、(a)英文和訳の訓練だとか、徹底的な音読学習に向いている教材を選ぶのか、(b)あるいは、精神的思想的背景について学ぶことのできるような授業にすべきではなかったか。結局のところ、英語長文をインプットや和訳をするには、この英語はちょっと長くて難しすぎる。また、ドーキンスや進化論的思想について学ぶには、少々テキストが短すぎるように思われる。
もし仮に英語を通じて精神的文化的あるいは思想的な背景を学ぶことに重点を置くのであれば、もう少し異なる教育方法論があるのではないか。例えば、バラエティーに富んだ英文を次から次へと読ませるよりも、もう少し時間をかけてドーキンスの思想につき合ってみる。あるいは、教師が思想的背景について説明をしたり、参考資料をあらかじめ読ませておくのはどうだろうか。(テストに出題されるのであれば、生徒は参考資料を読むであろう)
もし仮に私が一流高校の教師であれば、ドーキンスはちょっと難しすぎるので遠慮したい。(ドーキンスを教えるためには、ダーウィンや進化論ばかりでなくキリスト教と無神論、原理主義などについても解説する必要があるのではないか)。そして、Oxford出版のVery Short Introductionのシリーズであるとか、Britannicaの易しい英文を使って、進化論とダーウィンを巡る背景知識の習得を目指したいものである。進化論や氷河期といったいくつかのテーマーーこれらは大学入試英語によく出てくるテーマであるーーに絞った方が良いと思うのは、生徒にとって有益であるばかりでなく、教える教師にとってもその方が準備しやすいと考えるからである。
なお、予備校の英語教師の著作で言えば、以前紹介した、ロジカル・リーディングで有名な横山雅彦 やとくに古藤晃のものが参考になるであろう。
余談
私は原仙作『英標』を学んだ最期の方の世代ではないかなとも思う。もちろん全部やった。伊藤和夫の『英文解釈教室』ほどではないが、非常に印象的な参考書であった。どんな英文だったかは覚えていないが、モーム、ラッセル、フォースターなどを読んだような記憶はある。今になって思えば、ああいう難しい英語をやる必要はあまりない。ドーキンスはそこまで難しくない。だが、高2向きではないように思う。
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