2024年8月のブログです
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瀬尾まいこさんの『夜明けのすべて』(2023・文春文庫)を読む。
この小説も以前から気になっていて、旭川の本屋さんで購入して読む。
PMS(月経前症候群)で感情が抑えられない女の子とパニック障害でパニック発作におびえる男の子の物語。
二人の症状の描写はとてもリアルで、読んでいても苦しくなるほど。
作者がかなり勉強をしたのだろうと思う。
興味深かったのは、いわゆる病気の原因探しをまったくしていない点。
一応、臨床心理士をやっているじーじなどは、すぐに家族関係や仕事関係などを探りたくなるが、そういう文章は出てこない。
普通の家庭で、普通の親子関係であり、普通の学歴や会社である(らしい)。
しかし、理不尽にも、女の子はPMS(月経前症候群)になり、男の子はパニック障害になる。
思うに、原因探しは悪者探しに繋がり、かりに原因がわかっても原因が変わる可能性は低く、ますますこじれる可能性が高いからでないか、と推察をする。
それならば、作中に出てくる精神科医のように、たんたんと効きそうな薬を探るほうがましかもしれない。
もっとも、作中の精神科医も、減薬の時には、男の子がびっくりするくらい人間らしくなるところが面白い。
女の子と男の子は病いに翻弄されながらも、お互いを思い、少しだけお互いを助けられるようになる。
人はやはり人との間で人間になるようだ。
なかなかいい小説だ。 (2024.8 記)