私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「あの夏の子供たち」

2010-06-16 21:10:07 | 映画(あ行)

2009年度作品。フランス映画。
独立系映画のプロデューサーとして精力的に飛び回るグレゴワール。妻のシルヴィアや、クレマンス、ヴァランティーヌ、ビリーの3人の娘たちと過ごす休暇中も携帯電話を手放せないほど多忙だった。ところが、経営する製作会社ムーン・フィルムが多額の負債を抱え、進行中の企画すら完成の目処が立たない苦境に追い込まれたある日、自ら命を絶つ。遺された妻と娘たちは悲しみの中、最愛の父が生きた証を再確認してゆく。(あの夏の子供たち - goo 映画より)
監督はミア・ハンセン=ラヴ。
出演はキアラ・カゼッリ、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン ら。



本作はプロットではなく、場の雰囲気で魅せていく映画だと感じた。


実際、プロット自体はいくらか物足りない。

前半のプロデューサーと家族のふれあいや、借金で首が回らなくなる過程は良いものの、後半の父親の自殺以降はグダグダになっているように感じられる。
停電の場面とか、長女と監督志望の若者との恋(?)は中途半端で、ほとんど捨てエピソードにしか見えない。
まとまりに欠けているように、僕には思えるのだ。


しかし場の雰囲気の描き方に関しては実に上手い。

特に前半の家族の休暇を描くシーンはそこはかとなくいい。
娘も父も母も、互いに愛していることが画面越しからはっきりと伝わってきて、それを見ているだけで、ほこほことした優しい気分に浸ることができる。
それらの雰囲気の描き方は忘れがたい。


そしてそれらの雰囲気がうまくすくい取られているのは、俳優たちの表情をきっちりと撮っているからかもしれない、と僕には思える。

特に幼い姉妹の映像は印象的だ。
その中でも長女の何気ない表情とか、僕は好きだ。
彼女は特に情感豊かというわけでもないのだけど、あまりに自然体なためか、こちらも自然体な気分で見ることができる。
うまく言えないが、全体的に映像の撮り方も含めて、彼女を見つめる視点は優しげなのだ。
その優しさから、つくり手の優しさも透けて見えるようで、なかなか好ましく感じる。ある意味、女性監督らしいつくりだ。


映画はプロット、と個人的には考えている人なので、本作を絶賛することはない。
けれど、しみじみと胸に響いてくる作品と思う。小粒なれど、味わい深い小品だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


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