私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『士師記』感想

2024-08-19 21:49:47 | 本(人文系)
『士師記』は人間の歴史を描いた書なのだと読んでいて感じた。

あれほど抑圧的だった宗教者たちの力が衰えたのか、イスラエルでは神の教えから離れた行為が行なわれている。
そのため宗教的な要請からではなく、人々は個々人の感情や民族的な思惑を背負って動いているように感じられた。そこからは人間の生の姿がうかがえるようだ。


また選んで英雄的人物を登場させていることもあってか、読み物としても面白い。

エフド、ギデオン、エフタなどの士師たちの行動はまさに英雄的かつ波乱万丈で素直に楽しめる。
またアビメレクのように野心的で残忍な側面の男は、この時代の指導者としてはありがちだったのだろうなと思いながら読んだ。

最も楽しめた話はサムソンだ。
女に身を持ち崩すところといい、その劇的な死に方といい、どこか憎めず、当時の人たちからも愛されていたのだろう。


また当時の女性たちの状況が伺える話も興味深く読んだ。

当時の女性たちの地位は著しく低い。
ベニヤミン族が女性を犯す話は気が滅入るし、シロの女たちを掠奪する話も、男性側の独善が感じられて気持ち悪い。

しかしそんな中でも強い女性はいる。

女預言者デボラの行動は抑圧されていた女性ばかり見てきただけに小気味よく、シセラを殺した女ヤエルの行動も酷くはあるが、当時の勇ましい女性の姿を伝えるようで忘れがたい。


それら人間の姿や行動は、神の教えに背き各人が勝手に神への信仰を貫いた時代の、不完全な者たちの姿なのかもしれない。
しかし不快な面はあれど、抑圧からいくらか解放された人間の姿を伝えているようで、モーセ五書の時代よりも個人的には好ましく見えた。

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 『聖書(旧約聖書) 新共同訳』
 『聖書(新約聖書) 新共同訳』
 『創世記』
 『出エジプト記』
 『民数記』
 『申命記』
 『ヨシュア記』
 『士師記』
 『ルツ記』

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