PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

精神保健福祉士のカリキュラム変更

2010年05月13日 14時14分56秒 | PSWのお仕事

精神保健福祉士のカリキュラム変更については、かなり情報が伝わっていると思います。
あちこちのサイトで、既に変更の要点については見ることができますし。
でも、実際には事ある毎に、学生だけでなく現場のPSWからも尋ねられます。
「いつから変わるんですか?」
「科目ってだいぶ変わるんですか?」
「実習時間とか、やっぱり増えちゃうんですか?」
「早くとっちゃわないと不利になるのでしょうか?」
確かに、これから受験の人にとっては不安でしょうし、基本的な改正の要点を、ここでまとめておくことにします。

「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」が中間報告を出したのは、2009年11月です。
この中間報告書の中で、具体的なカリキュラム案が示されています。
その後、今年3月に最終案が示されています。
これで確定と言うわけではありませんが、ほぼこの線でいくのではと…。

■カリキュラムの見直しの基本的考え方は、
1.社会復帰の促進と地域生活を支援していく上で必要となる知識・技術を重点的に。
2.職域や求められる支援の拡大に伴う役割は、基礎的な知識を習得できるように。
3.相談援助に係るスキルを習得するための実習・演習の充実を図り、時間を増やす。
4.精神科医療機関での現場実習を必須に位置づける。

■具体的な変更内容は、
1.養成カリキュラムの総時間数 (講義科目+演習・実習) を現行の1110時間 → 1200時間とする。
2.「障害者に対する支援と障害者自立支援制度 」(30時間) を社会福祉士との共通科目として設定。
3.社会福祉士との共通科目である 「相談援助の基盤と専門職」、「就労支援サービス」、「更生保護制度」 の一部内容を専門科目の中に取り入れる。
4.精神保健福祉士に必要な知識・技術を柱とした科目体系に見直す。
5.専門科目の内容を充実・再編し、効果的な教育のために新たな科目を創設する。

■専門科目 は、次のように変更されます。
【現行科目】       → 【新科目】
精神医学         → 12.精神疾患とその治療 (60時間)
精神保健学        → 13.精神保健の諸課題と支援方法 (60時間)
精神保健福祉援助技術総論 → 14.精神保健福祉相談援助の基盤Ⅰ(30時間)
    〃        → 15.精神保健福祉相談援助の基盤Ⅱ (30時間)
精神保健福祉援助技術各論 → 16.精神保健福祉の理論と相談援助の展開 (120時間)
精神科リハビリテーション学→ 上の16に組み入れ
精神保健福祉論      → 上の16に一部組み入れ  
    〃        → 17.精神保健福祉に関する制度と福祉サービス (60時間)
    〃        → 18.精神障害者の生活支援システム (30時間)

今まで、やたら色々盛り込まれていた精神保健福祉論が16.17.18の三つに分かれ、
今度は、援助技術各論+精神科リハ+精神保健福祉論の一部が、16にすべて盛り込まれました。
「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」って、とんでもなく分厚い内容になりそうな…?

■講義科目(専門科目+共通科目)+演習・実習の新教育カリキュラムの全体像は…
【社会福祉士との共通科目】420時間
 1.人体の構造と機能及び疾病 (30時間)
 2.心理学理論と心理的支援 (30時間)
 3.社会理論と社会システム (30時間)
 4.現代社会と福祉 (60時間)
 5.地域福祉の理論と方法 (60時間)
 6.福祉行財政と福祉計画 (30時間)
 7.社会保障 (60時間)
 8.低所得者に対する支援と生活保護制度 (30時間)
 9.保健医療サービス (30時間)
 10.権利擁護と成年後見制度 (30時間)
 11.障害者に対する支援と障害者自立支援制度 (30時間)
【専門科目】390時間
 12.精神疾患とその治療 (60時間)
 13.精神保健の諸課題と支援方法 (60時間)
 14.精神保健福祉相談援助の基盤Ⅰ (30時間)
 15.精神保健福祉相談援助の基盤Ⅱ (30時間)
 16.精神保健福祉の理論と相談援助の展開 (120時間)
 17.精神保健福祉に関する制度と福祉サービス (60時間)
 18.精神障害者の生活支援システム (30時間)
【演習・実習】390時間
 19.精神保健福祉援助演習 (90時間)
 20.精神保健福祉援助実習指導 (90時間)
 21.精神保健福祉援助実習 (210時間)
 
社会福祉士の現行カリキュラム(2009年4月~)に比べると、科目数は一つ少ないです。
でも、総時間数1200時間は一緒ですね。
  
■今後の予定ですが、こんな感じでしょうか?
2010年秋頃 厚生労働省省令・告示を発出?
2011年1月 第13回国家試験
2011年4月 現行カリキュラムでの最終新学期
2011年年末 各出版社の養成テキスト続々と刊行?
2011年度中 実習指導者講習会を全国で開催?
2012年1月 第14回国家試験
2012年4月 新カリキュラムに移行
2012年初夏 新しい国家試験委員会が招集?
2012年度中 実習指導者講習会を全国で開催?
2013年1月 第15回国家試験(新カリキュラム)

新教育カリキュラムに移行すると、科目数が増えます。
受験生にとっては、国家試験の勉強の負担が増します。
養成課程をもつ学校にとっては、教員の負担が増えます。

もちろん、知識や技術習得の時間は増えるわけで、真剣に学ぶ人には喜ばしいのですが…。
受験資格を取得するまでの道のりは、ちょっと(?)険しくなります。

やはり、実習のウェイトが増えることの影響は、大きいでしょうね。
学生の実習日も増えますが、受け入れる実習先の負担も増えます。
実習先の指導者には、講習会受講が義務づけられます。
現職者で通信教育を受ける人たちは、実習時間の確保は頭の痛いことになりそうです。

精神保健福祉士の質の向上を図り、精神障害者ほかへの支援を手厚くする。
そのために、国家資格の養成教育カリキュラムを変更し、より専門職性を高める。
…国家資格創設以来の、大きな変革が、まもなく始まろうとしています。



※画像は、バス停を降りてキャンパスへ続く道(緑陰通り)。
 厳密に言うと、ここはもうキャンパス内です。