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「洛中生息」

2015-05-30 17:04:35 | 日記
 先日亡くなった杉本秀太郎さんの著書は殆ど読んだことがありません。しかし、私には「洛中生息」の著者として、名前が深く心に残っています。
 京都に住みたくて京都の大学に進んだくらいで、京都には並々ならぬ興味がありました。大学に入ってすぐのころ、京都のことを知りたくて、京都に関する本を読んでいたのですが、その中にあったのが「洛中生息」でした。京都での生活、京都の風景が描かれています。
 今でも印象に残っている部分がいくつもあります。筆者は、六角堂に青塗のベンチがあることを非難しています。六角堂は、街中にありながら、古くて落ち着いたお堂のある寺です。ベンチがあるか確認に行きました。確かにあったような記憶があります。
 二条駅が冬の寒空に合うことを筆者は言っています。二条駅を見に行くと、和風建築の駅舎があり、落ち着いた空気を漂わせていました。鉛色の冬の空に合いそうでした。
 筆者が奈良線の風情を讃えています。私も奈良線に乗りました。奈良に行くなら近鉄を利用する方が便利で普通は近鉄に乗るのですが、わざわざ奈良線に乗ってみたのです。しかし、筆者の讃える風情が私には感じられませんでした。今、書かれた年代を見てみると1971年でした。私の大学のときには時がたちすっかり景色が変わっていたことになります。
 京都は紛れもない都会でありながら、通りに木造の建物がいくつも建っています。低い建物が多いのも特徴です。そして、ところどころに社寺があり、路傍にお地蔵さんがあります。これらが一体となって、京都の独特の雰囲気が作られています。「洛中生息」からはその雰囲気が伝わってきます。
 京都も時代とともに変化します。味のあった二条駅は今はなくなり、高架にホームを持つ、ビル状の都会的な駅舎に変わりました。「洛中生息」は、昔の京都の風景を伝えるものともなっていて、今読むと懐かしさを感じます。

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