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横浜浮世絵の描く街

2019-07-06 12:00:38 | 日記
 神奈川県立博物館で横浜浮世絵の展覧会がありました。横浜浮世絵は、その名の通とおり、横浜を描いた浮世絵です。開港後から、明治維新の少しあとまでの時代の街の風景、外国人が描かれています。

 横浜浮世絵は、今は失われた横浜の風景を見られることが楽しみです。街の風景は、大体が、今の関内地域の風景です。JR根岸線の高架付近から、海の方向にある街の当時の風景が描かれています。

 横浜浮世絵で描かれた、今の馬車道に相当する道は、両側に水があります。一方は海、他方は沼です。道の先には、左手に弁天社があります。今の馬車道では、どれも見られない景色です。馬車道の両側に水はなく、陸になって建物が並んでいます。弁天社は、境内に海の水が引き込まれていました。今もあればオフィス街のいい憩いの場であったでしょうが、弁天社は立ち退かされ、埋め立てられてしまいました。訪れた神奈川県立歴史博物館が跡地の建物です。

 本町通の賑わいを描く絵もあります。商家が道の両側に立ち並び、大勢の人が本町通りを歩いています。大変に賑やかで、よく銀座並みの人ごみと言いますが、そのような風情です。今の本町通りは、道の両側にビルが並び、道の大半は車道です。自動車の通行量は多いですが、人通りは少なく、往時の賑やかさはありません。

 横浜浮世絵で描かれた関内地域は、整った背の低い建物が並びます。街の半分くらいは沼でした。都市と自然が相半ばする街でした。横浜浮世絵に描かれた横浜の街は、大変に美しいものです。

 横浜浮世絵の時代とはすっかり変わってしまいましたが、現代の同じ地域も、整った建物や通りの形状が合わさって美しい街を形成しています。そうではありますが、横浜浮世絵に描かれた街の美しさは格別です。しかし、その美しさは真実なのでしょうか。街の大まかな構造は真実であるにしても、細部は絵画としての虚構かもしれません。横浜浮世絵では、赤みがかかった色彩が描かれた街の魅力を高めています。この色彩も実際の風景に忠実なのでしょうか。真実か虚構かはわかりませんが、少なくとも、開港場の街を見る者の心象には合っていたのでしょう。当時の街が今はないことを惜しむのみです。