ユーニッヒ

仕事の話もたまには書くかもしれません。

思い出の味

2024-02-25 12:35:33 | 日記
 神奈川県のある酒蔵の無濾過原酒を買いました。前回飲んだのは、21歳の時です。

 そのころ、日本酒と言えば、大手の酒造会社の日本酒でした。地酒はいいものだという話は
出ていました。ある日新聞に大きな広告が出ていました。大学生が数人集まって座談会形式で
地酒のよさを語るというものでした。まだまだ普及していない地酒を世間に広めようという
広告主の意欲が感じられます。地酒は売っていなくもありませんでした。大学の同級生の
家が酒屋をしていて、「地酒売ってんの」ときいたら、同級生は「うち来たら買えるで」と
言っていました。私は京都にいて、友人の家は大阪で、地酒を買いに行くには遠くでした。
そこらかしこで地酒が手に入るという時代ではありませんでした。

 このようなころ、冒頭の地酒を入手しました。それが私にとっては初めての地酒でした。
飲むや、衝撃的でした。日本酒は端麗なものという印象しかありませんでしたが、濃厚な
味わいでした。香りも濃厚でした。これも日本酒なのかと、常識が覆されるような驚きで
した。

 味の記憶が頭に染み付きました。また飲んでみたいと思いながら、買う機会がなく年月が
過ぎました。数年前、仕事で酒蔵の地元に行ったので、買えないかと酒屋に入ったのですが、
原酒はありませんでした。この時は6月でしたが、原酒は寒い時期に売るものでした。その後、
寒い時期に地元に行きましたが、販売時期は1か月後でした。

 調べてみると、酒蔵はオンラインショップをしていました。
ようやく、原酒が買えました。あの衝撃をもう一度と原酒を
口にしました。今も記憶に残る鮮烈な味と、今のこのときの
味覚を重ね合わせようとしました。全く重なり合いませんでした。
いい酒なのです。また次の季節も買いたいと思う味です。しかし、
普通に旨いという感想でした。

 味というのは、気分や体調で変わります。待望の地酒を初めて飲みました。
その頃の私は若くて健康な体でした。下宿先から帰ってきて家族と年末を
過ごしていました。家族との再会も、酒の味に一味加えたのでしょう。
長年、記憶の味をまた体験したいと思い続けてきましたが、それは
かなわないことだとわかりました。