ユーニッヒ

仕事の話もたまには書くかもしれません。

偶然の産物

2018-06-30 11:49:18 | 日記
 先日、横浜国大の法科大学院が学生の募集を停止すると発表しました。これにより、神奈川県内には法科大学院がなくなることになります。法科大学院は、全国でも次々と募集停止になっています。入学希望者が減っているからです。
 
 法科大学院は卒業すると司法試験の受験資格が得られます。しかし、受験資格は5年で失効します。多額の学費と労力をかけて取得した資格がなくなるのです。5年たつと、法科大学院の卒業生は一番若くても30歳になります。大学卒業と同時に就職するのに比べて、就職は苦労しそうです。

 このように法科大学院に入学して法曹を目指すのは、人生の上で大きな危険を冒すことになります。危険の中でも一番つらいのは、法曹への夢が断たれることです。確かに、法科大学院に入学し直す、予備試験に合格するということで、司法試験の受験資格を再取得することは可能です。しかし、法科大学院の高い学費を再度支払える人は多くはないでしょう。予備試験の合格率は、4パーセント弱でその合格は容易ではありません。入学希望者が減るのは無理からぬことです。
 
 私は、あまりものを考えずに司法試験の受験の世界に入りました。すぐにとは言わないが、数年で受かるのではという根拠のない予想をしていました。しかし、結果は、5年5回ではとてもきかない、多数回受験するというとんでもないことになりました。受験を始めたころ、今のような制度であったとしたら、果たして司法試験の世界を入ったのであろうかとよく考えます。中途半端なところで受験の世界から放り出されることへの恐怖が勝って、会社勤めをしているような気がしています。仮に法科大学院に入っても、受験下手の私では、夢は断たれていたでしょう。
 
 人生がどうなるか、生まれた時期が早いか遅いかといった偶然に左右されるものです。
 

DNA鑑定

2018-06-10 17:27:21 | 日記
2014年、東京都文京区小日向一丁目の遺跡、切支丹屋敷跡から3体の人骨が出ました。そのうちの1体の人骨は、江戸時代に日本に潜入したイタリア人神父で、切支丹屋敷で拘束され、そこで最期を迎えたシドッチのものでした。「江戸の骨は語る」(篠田謙一著、岩波書店)は、人骨のDNA鑑定で、人骨をシドッチのものと特定するまでの経緯を書いています。
 
 DNA鑑定は、仕事柄依頼をしたことがあります。戸籍上は親子関係あることになっているものの、生物学上の親は別にいるということがあります。戸籍上の親子関係を否定したいときは、戸籍上の親と子供の間の親子関係不存在確認請求訴訟を提起します。そのためにDNA鑑定を利用します。そのときは、生物学上の親子の口の中の細胞を取ってDNAを採取し、親子関係の判断をしました。
 
 これだけで、DNA鑑定が行われ、なんとも簡単に鑑定ができるものだと思いました。しかし、古い人骨のDNA鑑定は、そう簡単には行きません。同書によると骨のDNAが壊れていることもあり、DNAが採取できるとは限りません。採取できても、DNAの断片である場合もあります。土中には、微生物がいるので、採取したDNAには人骨のDNAではないDNAが混じっている可能性があります。DNA鑑定ができるか否かは、骨の状態や科学水準に支えられているのであり、古い人骨の場合DNA鑑定ができて当然という話ではありません。
 
 DNA鑑定の現在の技術の水準がなければ、骨は誰のものかわからなかったでしょう。技術水準のおかげで、シドッチは現代に姿を現し、人々に姿を認識させました。