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へたうま

兄の仕事の関係で、東京では都心に何店舗かの店
を構える大きな美容室の社長さんと会う機会に恵まれた。
世界的にも有名な方だ。

そして、いろいろな話を聞くことができたのだが、
それが非常におもしろかった。

まず、オフィスがすごい。美容室、というきらびやかな
世界であるのに、裏方は、「作業場」であった。
1階は大きなガレージになっており、いろんな道具が
工作室のように並んでいる。
ガレージのドアに至るまで、すべて社長の手作りだそうだ。
とても、センスのいい、おもちゃ箱のようなオフィスだった。
見ているだけで、おもしろい。

そもそも、この美容室自体、内装はすべてスタッフによる
手作り。もの創り、デザインに対するこだわりが、よく
現れている。

その美容室は、とにかく道具にこだわりがあり、ピンや
シャンプー、ブラシなど、すべての道具がオリジナル。
世界でも使用されているそのシェアは大変なものだ。

美容の道具というのは、実に3千年も前から存在するもの
だそうで(くし、はさみなど)、しかもすべてローテクな
ものなので、あまり変化のないまま、現在に至るという。
ローテクなものであるがゆえ、進化が難しいらしいのだ。
しかし、この社長、すべての道具に対し、飽くなき追求を
している。

長年使われているから、という理由でそのままだった道具
を、驚くような発想やアイデアで進化させている。
次から次へと、素材、形、機能を質のよいものにしている
のだ。そして、それを世界に発信している。
話している間にも、新しく開発した、または開発中の商品
を次から次へと、楽しそうに披露してくれた。
すべてこだわりの「一品」だ。

社長は、おそらく50代前半~半ばの方だろう。しかしその
フットワークの軽さ、アイデアの豊かさ、器用さ、センス
のよさで、とにかく生き生きとしていた。若い!

例えば、それは美容のことだけにとどまらず、全く美容に関係
のない自分の趣味の分野でも活かされているそうだ。そして
一見何の関係もないことのように見えることでも、すべての
発想はつながっている・・・という。

発想、アイデアはどこから来るのか。
「自分は”へたうま”の精神でやっています」と社長さんは
力説した。”へたうま”=下手で上手いことだ。
人間、何かに取り組むときには、始めは「へたへた(下手下手)」
しかし、そのプロになってしまうと、「うまうま(上手上手)」
になってしまう。そうなると、もうその人はそこでストップして
しまう。すべて器用に上手にできてしまうから。
そこで、上手くなったときにこそ、「へたうま(下手上手)」で
居ることができる『努力』をしなければならない。
いつでも「へたうま」で居るということは、その”へた”を補う
べく、さまざまなアイデアが生れ、更に先がある。
おそらく、この社長さんは、この道の「うまうまのプロ」だろう。
しかし、「へたうま」で居る努力を怠っていないのだ。
非常に難しいことだというが、大事なことである、とも言った。

これが世界に通用する人なのか・・・と感心。

全く違う分野であるが、同じようにこだわりの魂をこめたボード
を作っている兄(プロスノーボーダー)とは、そんな部分で共通点
があり、話もはずんだ。

とにかく。こんな風に、もの創りや、何かをデザインすること、
いろんなものに発想を持つ柔らかい頭を持つこと、が、いかに
人生を豊にするのか、そしてそれは楽しいことなのだ、と、
この人から感じることができた。
そして、それを仕事にしているということは、並大抵ではない
努力をしているのだろう、と感じた。この仕事が好きなのだなあ。

とても刺激的で、楽しい時間だった。

やっぱり、”人と会う””人と話をする”ということは、本当に大事
なことだな、と実感。
いつまでも、そんなフットワークの軽い、アンテナのたくさんある
人間でいたいな、と思う。

そして、できるなら、そんな人たちの何かを自分でも吸収し、今後の
人生に、なにか役立てたらいいな、と思うのだった。


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