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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

All Shook Up/テネシー州メンフィス

2007-09-17 | ALL SHOOK UP
 プレスリーの音楽について書かれたものを読むと、黒人音楽の影響にふれたものが目に付きます。プレスリーが多感な十代をテネシー州メンフィスで過ごしていた頃、アメリカでは黒人差別が法的な形でも存在し、同じキリスト教徒でも黒人と白人の通う教会ははっきりと区別されていました。
 前の記事でふれたように、エルヴィスはゴスペルが聞ける機会には頻繁に足を運んでいたのですが、そこは黒人教徒の集まる教会だったわけです。音楽の魅力に取り付かれたように通いつめる白人の青年には、大人社会の矛盾に満ちた決まりごとなど、どうでもいいことだったんでしょうね。54年5月にアメリカ最高裁が人種分離教育は違法であるとしたことにより「公民権運動」が盛り上がり、57年には不十分な内容ながら、「公民権法」が施行されましたが、エルヴィスが世に出た55年前後は、彼の音楽その他が「黒人のようだ」ということで批判を浴びる、そんな時代だったのです。

 彼がこの街に建てた家「グレースランド」は、ホワイトハウスにつぐ来訪者数を記録している「住居」なのだそうです。大統領の次、というのがいかにも彼らしいですね。ただ、この街では1968年、非暴力による黒人解放運動の指導者だったマーティン・ルーサー・キングJr.(キング牧師)が暗殺されてしまいました。 64年にノーベル平和賞を受賞していても、彼は黒人だということでメンフィスのメインストリートの一流ホテルには宿泊することがなく、黒人によって経営されているモテルに泊るのを常としていたそうですが、暗殺された日もそのモテルを出発するところを撃たれたのです。
 エルヴィスが彼の愛する街で起きたこの悲劇をどう受け止めたのか、まだ資料が見つけられませんが、その日も青年エルヴィスが通った教会では、胸を刺すような哀歌が歌われたに違いありません。


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