FC piaZZista

”セールスマン”が結成したフットサルチーム「FC piaZZista」の軌跡とキャプテンの私生活。

真保裕一「デパートへ行こう!」

2009年12月29日 10時01分22秒 | 小説
本日、真保裕一「デパートへ行こう!」を読み終わりました。

「所持金143円、全てを失った男は、深夜のデパートにうずくまっていた。そこは男にとつて、家族との幸せな記憶がいっぱい詰まった、大切な場所だった。が、その夜、誰もいないはずの店内の暗がりから、次々と人の気配が立ち上がってきて―。一条の光を求めてデパートに集まった人々が、一夜の騒動を巻き起こす。名作『ホワイトアウト』を超える、緊張感あふれる大展開」

実に興味を引く題名。
「デパートへ行こう!」
たまたま、仕事でとあるデパートを担当しており、デパートには一方ならぬ思い入れが小生にはあります。
そんなところで訳有りの人物達が一夜を過ごす。
たまらなく面白そうです
前半は、ホームレスまで身を落とした自殺志願者、若い家出人のカップル、警察と組織の両方から追われる元警官のヤクザ、復讐のために盗難を企てる女従業員、風前の灯の老舗デパートの命運に悩むお坊ちゃん社長など一見無関係に思える登場人物がタイトルからも予想できるようにワクワク・ドキドキのコミカルなドタバタ劇を展開していく。そして、張り巡らされた伏線の末、デパートの「生き字引」リョウさんの奇跡の救出劇のように全ての関係が繋がり喝采と感涙の大団円を迎える。
これだけ、登場人物が多い中、更に数人の警備員が登場。
せっかくの題材に目を向けるものの登場人物の多さゆえに核心がぶれる、伏線と言ってもご都合主義が非常に多い。
例えば、舞台となる老舗の鈴膳百貨店は、週のうち水曜日と土曜日は一切残業禁止。また、10時になると全館二百を誇る監視カメラのスイッチはOFF。こんなこと、ありえねー。
しかも、人々が迷い込んだその日は、創業百年祭の最終日一日前。店内には、高級絵画や宝飾品が溢れかえる。こんな時に監視カメラがスイッチオフになるか
これも全て閉店後の店内の各所に前記の人々を散りばめるためのご都合主義。
こんな根本的な問題をご都合主義でごまかし、さらっと話が展開していく。
最後までこの疑問が拭い去れないまま読み終わる。
内容も、老舗デパートの買収問題が複雑に絡んでおり、百貨店内に残された登場人物達が殆どのその問題の関係者。
こんな偶然の遭遇あるかいな。
まあ、小説なのでこれもありなのかな。
しかし、真保裕一氏の作品は何本か読んだが、結局いつも最後に何も残らない。
なんだか題名通り”らしく”書いてあるが白々しい。
心がこもっていないと言うか、作品作りに忙しすぎるのか、なんか薄い。
但し、この小説一つ目の付け所の良さが際立つ。
それは、題材。
舞台がデパート
リーマンショック勃発以来、急激に斜陽産業となってしまった百貨店業界。
百貨店は何でも買えるが、最高の立地とデカイ店舗の維持に四苦八苦。
これらを考えるとセレブ達に高級品を購入してくれなくては、難しいのでは。
我々庶民が買うような日用品は自宅近くのディスカウント店、衣料などのお目当て品はバーゲン購入としっかりとサイフの紐を締める。
今後、如何に百貨店業界が変貌を遂げるかが見もの。
そのためには、百貨店が十貨店になるほどの商品の絞込みや業態を不動産業と考える程、誘致したお店とのテナント料交渉。
更に以前の百貨店が家族と買い物に来て、最後は屋上のアミューズメントパークに誘う。子供も納得の玉手箱。
これも時代が求めた結果だったのか・・・。
今は、何でも手に入る大量消費時代。
時代が要請していないのか?
でも、小生、デパート大好き。
まず、1階に入ると香水の高級感漂うイイ香り。
地下に行くと最新グルメのオンパレード。
ケーキ屋は、常に新店が入れ替わりロールケーキやラスクなど全国的な流行が分かる。
肉屋に行けば、霜降りの競い合い。
魚屋へ行けば、見たことのない魚類達の整列。
2階~4階は大抵女性衣料。
殆ど足を踏み入れないが、ブランド店が犇き高級感を味わえる。
5階は、紳士衣料。
やはり、サービスよろしく気持ちよくお買い物をするなら百貨店。
会社服は、全て百貨店で揃える。
6階は、陶器関連やカーテンや寝具などだんだんセレブ系になってくる。
ここら辺の商品は、激安店が優勢か?
7階がおもちゃ、家具や電化製品などその他諸々。
ここのフロアがてこ入れゾーンか。
おもちゃは、トイザラス。家具は、IKEA。電化製品は、ヤマダ電機。
これが、現実。
こんな現実が目の前にあるなか、「かつて百貨店が夢を売る場所であった」と感慨に浸る作者の気持ちが、ペンを待たせ綴らせたのと無縁でない気がします。

さあ、みなさん、デパートへ行こう!!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。