少年Hを見てきました(追加)

2013-08-30 23:10:38 | インポート

本日はもうブログはいじらないので、さいごにおまけのおまけ。

  これで見られなかったら直接、テレビ朝日のサイトを開いて、終了番組相棒から入って、相棒ブログをごらんください。最新の水谷右京さんやミッチー神戸くんの写真が載っています。

    http://www.tv-asahi.co.jp/reading/aibou/15186/

 

土曜日の午後、東京は高温注意報が出たそうです。昨日も今日も、そして明日もまだこの暑さが続くようです。その後、雨が降ってから次第に秋に変わっていくのでしょう。でも、まだ雨でも蒸し暑い日々だとか。地球全体の気温が上昇中といいますから、話は簡単ではないようです。海水温の変化で魚の取れ方まで違ってきている状況です。

それはとにかく、昨日の少年Hの話、少し、追加します。

昨日のブログでは、話がややこしくなるので書きませんでしたけれど、映画の中でたびたび日本の昔のオペラ歌手、藤原義江の歌声が流れていました。風の中の羽のように~と歌っているこの人物は、少年Hの作者の妹尾河童さんの河童という名前の生みの親だった方です。妹尾肇くんはいかにして妹尾河童氏になったか、なかなか面白いエピソードもあります。

実は私は妹尾さんの精密な画風と文章が好きで著書はほとんど読んでいたわけですが、少年Hはそれまでのものとはまったく違っていました。とにかく重苦しい内容で読みきるのに努力が必要でした。この本に、いろいろな意見や反論も出ていますけれど、一人の人が自分の目に見えた範囲のことを書いているわけで、ほかのかたがたと同じものが見えていたわけではありませんし、これはこれでいいのだと思います。

それはとにかく、映画の少年Hに流れている歌声の持ち主と妹尾河童さんの関係がわかっていると、話の背景もさらに膨らみ、たぶん、見え方もまた少し広がります。

小説のほうの少年Hも、映画の少年Hも、作者が、そして監督や演技者たちがそれぞれ表現したかったものがあるので、受け取る側もまたこれはこうだと画一的に決め込む必要もないのだと思います。ただ過去の歴史に起こったことと今現在の自分の生きている世界の動きは、やはり時々、比較検討は大切かという気がしますが。

そういえば今日はもうひとつ、朝の連続ドラマのあまちゃんで大きなターニングポイントにきたようで、ドラマの世界でもついに来週は、二年前に現実に起こった東日本大震災がやってきます。ドラマとはいえ、その動きに一喜一憂してきた登場人物たちの運命が大きく変わってしまうのを思うと胸が痛みます。

現実の大震災の時も私たちはみんな、普段と変わらない一日が次の瞬間に崩れ去ってたくさんの人の運命が変わってしまうなどとは考えもよらないまま、3.11を迎えたのでした。戦災と自然災害の違いはあっても、少年Hも、あまちゃんも、どちらも人間の運命というものについて、何かを考えさせられるようです。

 

 

今日の都心の最高気温36度以上。四谷の昼ミサの帰り、聖堂の外に出てこれはとてもではないと思い、ついでだし今日は前から見に行くつもりでずっとのびのびになっていた映画、少年Hを見に行くことにしました。今回は新宿バルト9に行ってみました。

小説の文章を読んだときと違い、映画という形になって目の前に現れた少年Hの世界はなんというかリアルすぎてショックでした。それだけ現実に起こったことは恐ろしいことだったわけですが。

実際、当方も還暦をとっくに過ぎた人間ですから第二次世界大戦が終わってしばらくして生まれたので、子供のころはご近所周辺にはまだ戦争の傷跡がいくらも残っていたのです。こんなところに逃げ込んでもどうしようもないような横穴式の防空壕の跡も残っていましたし、まだちゃんとした家もなくて掘っ立て小屋のようなところに一家で住んでいた友達もいました。

神戸の大空襲の恐ろしい場面を見ながら思い出していたのはそんな昔の記憶でした。戦争中は南方に行っていた亡き父の若いときの思い出話を思い出し、中山法華経寺の墓地で父が、これはお父さんと仲良しだった幼馴染の墓だと教えてくれた戦死者の墓の記憶でした。

それは実はまだそんなに遠い昔のことではない、手の届くような距離の昔なのです。でも今の若い方たちはそれも知らない。安易にやたら右に寄りすぎではないのでしょうか。バランス感覚を忘れると、神戸大空襲の後、いや終戦になってだったか、Hが人々の態度の変化を見て、海の波に右に左に揺れ動く海草の若布だというところがあったように、相変わらずこの先も時代の流れに揺れ動くだけの若布になるのでしょう。

Hのお母さんのような信仰、お父さんのような誠実さ、それは時代が変わって、状況も変わっていくとしても忘れてはいけないものなのだと思いました。

次に作品としてのこの映画を見直すと、やっぱりさすが降旗監督作品だけあって一つ一つの場面がすばらしいです。少年Hが慕っていた男姉ちゃんと呼ばれる役者崩れの若者が、出征間際に逃げ出して自殺してしまったときの、本当だったら女形の役者になりたかったこの若者の哀切な思いを語るような絵の美しさ。大空襲の炎に呑みこまれてしまう町並み。残ったのはすっかり炭になった焼け焦げの人体、焼け落ちた日常。

出演している俳優さんたちについては説明する必要もないくらいよく知られた名優ぞろいです。あ、そういえば神保さんと山中さんも出ていました。音楽がまたすばらしいです。いつもの池先生でした。