© 産経新聞 「雪国レモン」の実を確かめる石岡浩明さん=山形市(柏崎幸三撮影)
2022年1月31日(月)発行の「産経新聞」に”冬の山形で収穫される「雪国レモン」”という見出しの記事が掲載されています。
”山形市のレモン農家 石岡浩明さん(61)
1本の木に10個以上のレモンがなっている。ここは周囲に雪がうずたかく積もったビニールハウスの中。雪国山形では珍しいパッションフルーツの無農薬栽培に取り組んでいる石岡浩明さん(61)の無農薬レモンだ。
1月中旬、ハウスの外は、零下7度だが、ビニールを2枚重ねたハウスの中は20度超になる。まるで南国の世界。「ハウスではTシャツで仕事をしています。40度を超すこともあるんですよ」と夫のレモンづくりを支えてきた妻の美喜子さん(55)は笑顔で話す。
石岡さんは東日本大震災後、郷里の山形市に戻り、ブルーベリー栽培を始めた。事業が軌道に乗ってきた平成26年、無農薬栽培を知った男性から〝注文〟が来た。
「無農薬でレモンをつくってほしい」
男性はがんを患い、少しでも体に良いと思われる食事をとることに取り組んでいた。自身で無農薬のリンゴを栽培し、無農薬のニンジンも入手しジュースにして飲んでいた。だが、無農薬のレモンだけが手に入らないという。
浩明さんは、ためらいながらも挑戦することにした。調べるうちに耐寒性がある八丈島レモンを見つけた。
どう栽培するかを考えるうち、山形大東北創生研究所の村松真所長(64)が改良したビニールを重ねたハウスにたどり着いた。2枚のビニールの間に空気層ができるようにしたハウスで、光を通しながらも空気層が室温を保つ効果をもつ。寒い地方の農家が昔から実践してきた栽培方法だが、村松所長自身、野菜を栽培しながら、より効果を上げる改良を重ねてきた。
浩明さんは同研究所の連携研究員となり、山形市南栄町に建てた実験ハウスで鉢植えのレモン栽培を開始。収穫量も、40個、100個と毎年を増やし、昨年は郊外に移転したハウスで地植えにして取り組んだ。その結果、今年は500個を超えるレモンを収穫できる見込みだ。
薄く赤みがかったレモンは雪国山形でも無事に大きく育ち、浩明さんは「雪国レモン」と命名した。無農薬なので皮ごと食べられることもアピールし、市内の販売店やインターネット通販で、4個前後2980円の価格で売り出したところ、予約を含めてすでに完売した。
だが採算レベルにはまだ遠い。ハウスのレモンの木は50本。1本から100個収穫できるようになれば採算ベースという。
「いまは平均で木1本から10個程度。これが10倍になれば。木を太くし、1本から100個収穫するのは可能です。目標は5千個です」と決意を新たにした。(柏崎幸三)”
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