チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「コンクラーヴェと鍵盤楽器/ミラノ勅令があったとしたらそれから1700年」

2013年03月14日 18時38分27秒 | 歴史ーランド・邪図
昨年暮れにローマ旅行にいってきた親戚の小三の
子供が土産に買ってきてくれたわずか1ユーロの
ヴァチカン・スィスティーナ礼拝堂のミケランジェロの「最後の審判」の
2013年卓上ミニ・カレンダーの3月は、
"peccato originale e cacciata dal paradiso
(ペッカート・オリジナーレ・エ・カッチャータ・ダル・パラディーゾ
=原罪と楽園追放)
の拡大部分である。原罪・過去・未来、
小児性愛スキャンダル・同性愛セクハラ、
マネー・ロンダリングで揺れるヴァチカーノである。

1700前の西暦313年、
いわゆる西ローマ帝国皇帝コンスタンティヌス1世と
いわゆる東ローマ帝国皇帝リキニウスが連名で、
「ローマ帝国内での信教の自由を保障する」旨の
勅令を発した、と言われてる。その真偽のほどや
内容については議論されてるところらしいが、
私が高校生の頃にはこの
"ミラノ勅令"をもって、ローマ帝国でキリスト教が認められた、
ということになってた。そんな
勅令が実際に同年にあったのだとしたら、
今年はそれから1700年の年にあたる。

「教皇選挙」が終わったらしい。今回は、
ブエノス・アイレス大司教が選出されて、
フランチェスコ1世として、
ペテロを初代とみなす教皇の第266代に就任する運びとなった。
その法王名からわかるように、
「ブラザー・サン、シスター・ムーン」の
"Francesco d'Assisi(フランチェースコ・ダッスィーズィ=アッシジのフランチェスコ)"
の「清貧」を信条とするとのことである。

20世紀の終わり頃まではほとんどの人が知らなかった
「コンクラーヴェ」という言葉も今や、
猫も杓子もパクチーもカメムシも知る時代になった。
現在のコンクラーヴェの事の起こりは、
1268年にクレメンス4世がローマの北北西約60kmの
ヴィテルボで死んだことに始まるとされてる。
ヴィテルボで18人の枢機卿による投票が始まった。が、
イタリア派とフランス派が対立して、1年半経っても決着がつかなかった。
その間ずっと枢機卿らに食事を供してたヴィテルボの住人たちは怒り、
18人を司教館に閉じ込めて鍵をかけ、
パンと水しか差し入れないようにした。それでもすぐには決まらず、
住人たちはパンと水の量を減らしてった。がしかし、
それでもなお決着しないまま1年半が過ぎた。
枢機卿の中には屋根をはがして抜け出そうとした者もいた。
そういう意味ではまさに「根競べ」だったといえる。

ついに1271年9月、
フランス派が折れて、十字軍遠征に随行中のイタリア人枢機卿が選出された。
グレゴリオ10世である。ちなみに、5年後、
次の教皇にはフランス人の教皇インノケンティウス5世が選出されたのである。が、
わずか半年で死亡する。その次の
ハドリアヌス5世は在位1か月に満たず、そのまた次の
ヨハネス21世はやはり在位たったの8か月で死んだ。同人は、
ヴィテルボの別荘に翼をつけさせたのだったが、それが手抜き工事で、
就寝中に屋根が崩落してその怪我がもとで死んだのである。

conclave(コンクラーヴェ)はラテン語もどきのイタリア語である。
con-という接頭辞とclaveという語の合成からなってる。
con-はラテン語の「附随」を意味する前置詞cum(クム)が元である。
発音どおり(※)「組む」のである。
英語でwithにあたる語である。いっぽう、
clave(クラーウェ→クラーヴェ)は
古代ギリシャ語由来のclavis(クラーウィス)というラテン語の奪格由来で、
元来は「ピン」を意味してた。
clip(クリップ)も同源語である。
ピンが曲げられたり凹凸をつけたり進化したものが「鍵」である。
爪先で錠を開けることもあったろうから、
「爪」という意味にもなった。ともあれ、
con+claveという漱石もびっくりな造語は
「鍵が掛けられた監禁状態」を表す。私も
煎餅焼き屋時代にはよく、ホテルの一室にカンヅメにされた。

ところで、
「鍵」にあたる語には「key」というものもある。
オルガンは管への送風弁の閉開を「鍵盤=key」を押さえる押さえないで行う。
この「開閉行為」にドアの開閉の道具であるkeyという語を借りた。
奇異に聞こえるかもしれないが、それがキー・アクションである。これが、
のちのちオルガンの一つひとつの管とと同じ仕組みの単独の
木管楽器に用いられ、例えばA管とかB管とか
その各管の「調」の違いをも表すようになり、さらには、
「調性」も意味するようになったのである。
音部記号を英語でclefというが、これも同源である。ちなみに、
clever(←cliver、賢い)という語の原義もまた
爪の先で器用にすばやく蓋をはずしたりできる
「手先が器用な」ということである。
cleaveも爪先で器用にこじ開け→道を切り開く、という意味である。
切り開く→裂く→切り裂けたような地形→断崖・絶壁、で、
cliffである。そのcliffな地が→cliffland(cleaveland)。
そういう地に住んでそれをサーネイムにする者が生じる。
その一人が切り開いた町が米国オハイオ州のClevelandである。
四つ葉のクローバーなどと俗に言われてるclover(クロウヴァー)=club(クラブ)も、
鍵や爪のような形をした葉であるゆえの名である。奇しくも、
和名をツメクサという。また、
club(クラブ=棍棒)のような、オルガンの鍵盤みたいな形の骨が
clavicula(クラーウィークラ→クラーヴィークラ。英語ではclavicle=クラヴィクル)、
鎖骨である。両鎖骨はそれぞれその両端を
肩甲骨と胸骨に接して関節を形成してるが、
胸骨とは加齢に従って癒合の度合いが大きくなる。

ともあれ、14世紀には、
箱型の打鍵楽器「クラヴィコード」が発明された。これは、
共鳴箱の中に張った音程の違う複数の弦をぶっ叩くことで
音を出した。その仕組みがキー=クラーヴィスなので、
(英語で代表する)clavichordと呼ばれたのである。また、
英語でハープシコード、独語でチェンバロと呼ばれるものは、
伊語でclavicembalo(クラヴィチェンバロ)、
仏語でclavecin(クラヴソン)と称される。それから、
ピアノは独語でKlavier(クラヴィーア)という。
かくして鍵盤楽器という漢字の由来はじつに
「鍵」なのである。

というわけで、今宵は1960年の
ベネデッティ=ミケランジェリのベートーヴェン「皇帝」ヴァチカン・ライヴ録音と、
モーツァルト少年が一度聴いて暗譜してしまい、それを誰だったかが
譜におこしてしまったために門外不出の鍵が解かれた
アッレーグリの「ミゼレーレ」のケンブリッジ大キングズ・カレッジ合唱隊の録音を、
久々に聴いてみることにする。また、
モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」をリストがpfに編曲したS.461a
"A la Chapelle Sixtine
(ア・ラ・シャペル・スィクスティヌ=システィーナ礼拝堂にて)と、それをさらに
チャイコフスキーが「組曲第4番(モーツァルティアーナ)」の第3楽章にオケ編した
"Preghiera(プレギエーラ=礼拝)"の楽譜を眺めてもみようと思う。
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