チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「算術欄外書込集と最終定理/フェルマー没後350年」

2015年01月12日 20時00分21秒 | 歴史ーランド・邪図
日本には「嘉永元年創業」「文久弐年創業」などという
「老舗」が、京都や日本橋には少なからずみうけられる。が、
とくに京都では「創業百年」なんてまだまだ新参者、
などという戯れ言が交わされる。
数学界には「未解決問題」あるいは「予想」
という一種のジャンルのようなものがある。その中には、
提起されてから100年、200年、300年、などというのもある。が、
わりと近年に提起されたものには
「ABC予想」などというのがあるし、
「リーマン予想」は未だに未解決のままである。が、
ここ40年ほどで、
「四色問題(1852年提起-1976年解決)」
「ポアンカレ予想(1904年提起-2004年解決)」
などが解決された。そして、
1995年には330年間未解決だった、いわゆる
「フェルマーの大予想(解決後は「フェルマーの大定理」「フェルマーの最終定理」)が
英国出身の数学者アンドルー・ワイルズによって
肯定的に証明された。
本日は、フランスの数学者、
Pierre de Fermat(ピエル・ドゥ・フェルマ、1607or1608-1665)の
没後350年にあたる日である。
その遺稿を子が出版したことから
「フェルマーの大予想」問題は始まった。ちなみに、
その遺稿とはディオファントスの"Arithmetica(アリトメーティカ=算術)"に
フェルマーが書き込みをしたものである。いわゆる
「欄外書込集」である。
フェルマーはその余白に48個の注釈を附けた。
その最後の48番目の注釈が
「フェルマーの大予想」「フェルマーの最終予想」
などと呼ばれた「大難問」となったのである。ちなみに、
注釈のひとつに
「フェルマーの小予想(ライプニッツによって証明されたのちは定理)」
がある。これは現在、
ネット通信で使われてるRSA暗号に応用利用されてる。

「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」は、
現代の日本人なら誰しもが中学の数学で習う。
ごく日常的にも生活に密接して使われるものである。
ごく簡便にすると、

(直角三角形の各辺をそれぞれ、x,y,z(斜辺)とすると)
x^2+y^2=z^2
(が成り立つ)

というものである(^は冪乗を表す)。これには実際、
x=3,y=4,z=5
という自然数(正の整数)解が存在する。
そのような3つ組数を「ピタゴラス数」という。

ともあれ、
この2乗の箇所を[n(3以上の自然数)で考えた場合、

x^n+y^n=z^n

を満たすような自然数(x, y, z) の組は存在しない]

というのが「フェルマーの大予想」または「フェルマーの最終予想」
(解決後にはそれぞれ「フェルマーの大定理」「フェルマーの最終予想定理」)
である。

n=4の場合はフェルマー自身が生前に証明した。
n=3の場合はオイラーが18世紀半ばに証明した。
n=5の場合を女流数学者のソフェ・ジェルモンが取り組み、半ば証明し、
フランスのルジャンドルと
フェーリクス・メンデルスゾーンの妹の夫であるディリグレが
1820年代にそれぞれ単独で完全証明した。
n=14の場合を上記ディリグレが1832年に証明し、その数年後に、
n=7の場合をラメ(ルベーグが補完)が証明した。そして、
クンマーがnが正則素数の場合すべてにおいて証明した。

それから100年はたいした成果もなかったが、
ドイツのゲアハルト・フライが、
x^n+y^n=z^n を満たすような
互いに素な自然数(x, y, z)が存在すると仮定すると、
p^2=q(q+x^n)(q-y^)
という楕円曲線が存在することになる、という
「フライ曲線」なるものを提唱した(実際には存在しえないのだが)。
いっぽう、
31歳で自殺した谷山豊が1955年に
日光で開かれた数学(整数論)の国際学会で
「すべての楕円曲線はモジュラーである(か)」
という言葉に置き換えれる問題を提起した。これを
谷山の死後に志村五郎が研究に取り組み、のちに
「谷山予想(谷山・志村予想)」と呼ばれた未解決問題
(のちに証明され「谷山・志村定理」)に、
フライ曲線を結びつけた。

そうして、
1)フェルマーが間違ってた(自然解が存在する)と仮定する。

2)その自然解からフライ曲線(モジュラーでない線楕円曲線)を作ることができる。

3)谷山・志村予想が正しいとすれば、フライ曲線もモジュラーである
(モジュラーでない楕円曲線は存在しないから)。

4)谷山・志村予想が正しいと証明される。

5)するとフライ曲線は存在しないことになる。

6)つまりフェルマーが間違ってたという仮定そのものが間違いである。

7)したがってフェルマーの予想は正しい(真である)。

というハイリ・ハイリフレ・背理法で証明される、
ということが判ったのである。あとは
時間の問題である。そして、
アンドルー・ワイルズがこの長い駅伝競走のアンカーとなって
ゴウル・テイプを切ったのである。

たしかにゴウル・テイプを切ったのはワイルズだが、
この駅伝競走におけるMVPはフライ、次点は谷山なのである。それから、
証明にはガロアの「群」という概念が大きく寄与してる。
フランス人、ドイツ人、イギリス人、そして日本人が
この問題解決に貢献したのだった。……あと、
ディオファントスで、古代ギリシャ人もか……。

ディオファントスにはその"墓碑銘"というクイズがある。
[その生涯の6分の1が少年期、12分の1が青年期、
その後、生涯の7分の1が経って結婚、
結婚して5年で子供が誕生、
しかしその子はディオファントスの寿命の半分で死ぬ。
子を失って4年後にディオファントスは死んだ。
さて、ディオファントスは何歳で死んだか?]

(1/6)x+(1/12)x+(1/7)x+5+(1/2)x+4=x
志村五郎は現在、84歳である。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「未年/偶蹄目反芻獣単複同形... | トップ | 「童は見たり、野中のばら。... »

コメントを投稿

歴史ーランド・邪図」カテゴリの最新記事