日々の記録

ほどよく書いてきます。

鉄の膨張

2024年05月22日 23時16分52秒 | その他雑記

鉄鋼、特に高炭素の鋼にはちょっと面白い特性がある。

焼入れ焼戻しをした鋼がゆっくりと膨張してくるのである。

具体的な鋼材を上げると、SUJ2やSK、SKSやSKDなどで、焼入れした状態で残留オーステナイトが存在する場合にこの膨張が生じる。

オーステナイトは面心立法(FCC)なので、密度が高い。対して焼入れしたマルテンサイトやフェライトパーライトは体心立法(BCC)なのでやや密度が低い。

材料を焼入れするとオーステナイトからマルテンサイトに変態するが、炭素量が多いとマルテンサイト変態終了温度が常温以下になるので、水焼入れなどではマルテンサイト変態が完了せず、オーステナイト相のまま残留するものがいる。

この残留オーステナイトは密度がやや高いのだが、常温では不安定なので、段々とマルテンサイトに分解していく。このときに密度低下が生じるため、体積ば膨張する。

硬い材料としては、物差しや直角定規など摩擦に耐えて長期間の耐久性がほしいものに工具鋼などが使われるが、この残留オーステナイトをうまく処理しないと寸法安定性が悪く、長期の精度が担保できないという問題がある。

先人はこれを解決する方法を考えており、常温以下まで冷やすことで残留オーステナイトをマルテンサイト変態させる、サブゼロ処理というものを考えた。

 

高炭素の鋼の熱処理で特に高精度が要求されるものについては、サブゼロ処理を入れるなどして寸法安定性を担保されたし。

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