私にラグビーをやった経験はない。しかし、彼らを見ていると、この競技がぴったりなのではないかと思った。理由は二つある。一つは、全身をぶつけていく激しいスポーツであり、デバッグだのパッチだの仕事に追いまくられてフラストレーションのたまった彼らがリフレッシュするにはぴったりだからだ。もう一つは、当時ラグビー人気が若い女性に広がりつつあったからだ。
若い頃から私はラグビー観戦が好きで、シーズン中は何度も秩父宮ラグビー場へ足を運んでいた。以前は観客席に女性の姿はほとんどなかったが、最近やたらと増えている。しかも、敵ボールの展開が始まると「つぶせー!」、ゴール前のスクラムでは「押し込めー!」と黄色い声を飛ばしている。
事実、大学生の試合を中心にファンは増えているようで、合宿所のスター選手宛てにファンレターがどっさりくるとも聞いた。そのうちの一人が某大学のウィングだった。ウィングということは、ポイントによって観客席のすぐそばに立つことを意味する。そして実際にその選手が近くに来ると、バッグからカメラを取り出す女性が何人もいる。他に「XX君、頑張ってエー!」と大声を出す女性もいる。
私の妻も同類だった。普段クールな女性なのに、婚約していた頃、最初に秩父宮に連れていったら目の色が変わった。某大学のキャプテンだったフランカーに夢中になり、しまいには、別に知り合いでもないのにその選手を下の名前で呼び捨てにしていた。
私がラグビー部を作ろうと提案した時、当然若い連中の頭にはそれらのことが頭にあったに違いない。あっという間に三十人近い人数が集まったのである。