池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

出会い頃、別れ頃(11)

2024-06-05 15:47:30 | 日記

私がラグビー部を作ろうと提案した時、当然若い連中の頭にはそれらのことが頭にあったに違いない。あっという間に二十人近い数が集まったのである。おそらく、あいつらの脳内ではこんな妄想が流れていたのではないかと思う。

女性「週末とか何してるんですかあ?」

本人「たいしたことはしてないです。土曜日はほとんど休日出勤だし、日曜日は練習や試合があるし」

女性「え、スポーツしているんですかあ? 何のスポーツ?」

本人「ラグビーです」

女性「キャッ!」

 都合のよいことを考えるのは勝手だが、こういう軽い気持ちだと、真面目にやろうとする人間に失礼になる。そもそも、コンタクトの多い競技だから生半可な気持ちでやると怪我をする可能性が高い。最初のミーティングで、そのあたりのことをキャプテンから話してもらったが、分かっているのかいないのか、みんなぼーっとしている。その顔を見ていると、頭の中が妄想でいっぱいになっていそうで怖い。

 ちなみにキャプテンは最初から決まっていた。なぜなら、彼が唯一のこの競技の経験者だったからである。さらに、彼のポジションはスクラムハーフで、フォワードにもバックスにも目が届くから都合がいい。

 こうやって立ち上がったラグビー部。

 晴れた日には、昼休みのチャイムが鳴った途端にダッシュでロッカーへ行って着替え。広いグラウンドの隅でランパスなどをやる。三十分が過ぎると、またもや速攻でロッカーに戻って着替え。社員食堂に駆け込んで十分で飯をかき込み、走ってギリギリセーフでデスクに戻る。

 日曜日は午前中に集まり、普段やれないタックルやスクラムやラインアウトの練習をじっくりやる。

 これを数ヶ月続けると、まあまあ動きがさまになってきた。ポジションもほぼ決まったのだが、最後まで決まらなかったのがスタンドオフ。希望者が多すぎるのである。中には、体型的にプロップだろうという人間もスタンドオフになりたがった。理由は簡単だ。司令塔で何より目立つポジションだからだ。ちょうどその当時、日本選手権で連続優勝していた社会人チームにスター選手がおり、そのポジションがスタンドオフだった。おそらくは、その選手のように華麗にパスを回したりキックを蹴ったりする姿を頭の中で妄想しているのではないかと思う。

 季節が秋になった。部員の中から実際に試合をしてみたいという希望が出た。

コメント
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