アビダンマッタ・サンガハ
アビダンマの体系は、すでに聖典においても膨大であるが、さらに量と複雑さが増すにつれ、学習や理解の対象としては重たすぎるものになってきたに違いない。このため、テーラワーダ仏教思想史のある進化段階において、アビダンマ全体を簡潔に要約し、手に余るような膨大な詳細事項は省いてアビダンマに忠実かつ徹底的にまとめることで、この教科の初学者が全体的な輪郭を明確に把握できるようにする必要が生じたと思われる。このニーズを満たすために、おそらく五世紀頃から十二世紀にかけて、アビダンマの短い説明書や概論が作られるようになった。ミャンマーでは、これらを「小指のマニュアル」と呼んでおり、全部で九つある。
- アビダンマッタ・サンガハ(Abhidhammattha Sangaha)アヌルッダ師著
- 名色識別論(Nāmarūpa-pariccheda)同
- 第一義解明(Paramattha-vinicchaya)同 (?);
- 入阿毘達磨論(Abhidhammavatara)ブッダダッタ師(ブッダゴーサより年長の同時代人)
- 色非色分別論(Ruparupa-vibhaga)同
- 諦要略論(Sacca-sankhepa)ダンマパーラ師(おそらくスリランカ人で、大注釈家とは別人)
- 断痴論(Moha-vicchedani)カッサパ師(南インド人またはスリランカ人)
- 開曼論(Khema-pakarana)ケーマ師(スリランカ人)
- 名色燈論(Namacara-dipaka)サッダンマ・ジョーティパーラ師