池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつく老人の日常

百回記念!【吉祥経】Maṅgala Suttaṃ (スッタニパータより) パーリ語原文朗唱+巴日対照表吉祥経

2023-06-19 18:01:00 | 日記

百回記念!【吉祥経】Maṅgala Suttaṃ (スッタニパータより) パーリ語原文朗唱+巴日対照表吉祥経

 

このチャンネルの動画もとうとう百本目となりました。百回記念として取り上げたのは【吉祥経】です。この経典を選んだのは、パーリ経典の中でも最古に属しブッダの教えの実像に非常に近いためであり、さらに、この経典が、修行者ではなく、我々のような俗世で生活する人間に向けたものであるからです。

 

ここでブッダの言わんとするところは明確です。幸運が舞い込んできたり他人からもらったりするのを願うのではなく「自分自身が」、過去や未来ではなく「今ここで」、夢想に耽るのではなく「自ら行動する」ことを求めています。そして、結果ではなく、そのような実践にこそ最大の幸福があるとブッダは看破しています。

順序にも注目してください。家庭や交友や仕事といった身近なことから説き起こし、最終的に修行を体験し一定の境地を得ることを勧めています。こういったわかりやすいところが「人間と神々の教師」と呼ばれる由縁なのでしょうね。

 

訳出にあたっては、法とか布施とか沙門といった漢訳語を使わず、なるだけ現実生活に引きつけた胸にストンと落ちる日本語となるように心がけました。自分としては、かなり「攻めた」訳にしたつもりです。

 

パーリ語を勉強されている人のために、以下に品詞および簡単な註をつけておきます。格の名称は以下の通りです。主格(nominative)、対格(accusative)、具格(instrumental)、与格(dative)、奪格(ablative)、属格(genetive)、処格(locative)、呼格(vocative)。

Maṅgala Suttaṃ

Evaṃ (副詞)

me (人称代名詞、単数、具格)

sutaṃ (名詞、中性、単数、主格)

ekaṃ (数詞、男性、対格)

samayaṃ (名詞、男性、単数、対格)

Bhagavā (名詞、男性、単数、主格) 原形はBhagavantで原意は「福徳を備えた人」で、ゴータマ・ブッダの尊称として用いられる。

Sāvatthiyaṃ (固有名詞、男性、処格)

Viharati (動詞、3人称単数、現在)

Jetavane (固有名詞、単数、処格)

Anāthapiṇḍikassa  (固有名詞、単数、属格)

ārāme (名詞、男性、単数、処格)

atha (不変化詞)

kho (副詞)

aññatarā (形容詞、女性、単数、主格)

devatā (名詞、女性、単数、主格) devaは「神」、tāは抽象名詞を作るための接尾辞(英語のtyやフランス語のtéに相当)。したがって直訳は「神性」であるが、これが女性名詞であることから「女神」と訳されることが多いようである。しかし、これは徳を備えた貴婦人を指すという説もあり、私はそれを取り入れて「貴人」とした。修行僧がいることから昼間はブッダの集団に女性は近づけないはずで、夜に従者を引き連れてお忍びでブッダのもとを訪れ説法を聴いたとすれば、「あたり一面がさっと明るくなった」という記述も合点がゆく。従者が一斉に火をたいたのであろう。

abhikkantāya (形容詞、女性、単数、具格)

rattiyā (名詞、女性、単数、具格)

abhikkantavaṇṇā (名詞、女性、単数、主格) abhikkanta(美しい)とvaṇṇa(容貌)の合成語

kevalakappaṃ (名詞、男性、単数、対格) kevala(全面に)とkappa(時)の合成語

Jetavanaṃ (名詞、中性、単数、対格)

obhāsetvā (連続体)

yena (関係代名詞、具格)

tena (代名詞、中性、単数、具格) 「なぜこんなところに関係代名詞が使われているのか、しかも具格で」という疑問を持った方もいるでしょうが、これは一種の慣用句であり、移動を表す動詞(ここの場合はupasaṃkamati)と一緒に用いて「~のいる所へ、~に向かって」という意味を表します。

upasaṃkami (動詞、三人称単数、アオリスト)

upasaṃkamitvā (連続体) サンスクリット語の「絶対分詞」と呼ばれているものだが、サンスクリット語と違って前綴りがあるものでも語尾がtvāとなりうる。

Bhagavantaṃ (名詞、男性、単数、対格)

abhivādetvā (連続体)

ekamantaṃ (名詞、男性、単数、対格)

aṭṭhāsi (動詞、三人称単数、アオリスト) いわゆるSアオリスト。

ṭhitā (過去分詞、女性、単数、主格)

sā (代名詞、女性、単数、主格)

gāthāya (名詞、女性、単数、具格)

ajjhabhāsi (動詞、三人称単数、アオリスト)

bahū (形容詞、男性、複数、主格)

devā (形容詞、男性、複数、主格)

manussā (名詞、男性、複数、主格)

ca (接続詞)

maṅgalāni (形容詞、中性、複数、対格)

acintayuṃ (動詞、三人称複数、アオリスト)

ākaṅkhamānā (現在分詞、複数、主格)

sotthānaṃ (名詞、中性、単数、対格)

brūhi (動詞、二人称単数、命令形)

maṅgalam (形容詞、中性、単数、対格) 本来はṃであるが、次に母音が来ているのでmになっている。

uttamaṃ (形容詞、中性、単数、対格)

Asevanā (名詞、女性、単数、主格)

bālānaṃ (形容詞、男性、複数、属格)

paṇḍitānañ (形容詞、男性、複数、属格) 語末は本来ならṃだが、次の語の先頭が口蓋音(c)なのでñとなる。

sevanā (名詞、女性、単数、主格)

Pūjā (名詞、女性、単数、主格)

pūjaneyyānaṃ (未来受動分詞、男性、複数、属格) 未来受動分詞は、サンスクリット語で「動詞的形容詞」とか「義務分詞」と呼ばれているもので、パーリ語の世界でも頻繁に使われる。

Paṭirūpa-desa-vāso  Paṭirūpa(適切な)とdesa(地方)とvāsa(住むこと)の合成語。

Pubbe (副詞)

katapuññatā (女性、単数、主格) kataはkaroti(行う)の過去分詞。

Attasammāpaṇidhi  Atta(自分)とsammā(正しく)とpaṇidhi(誓願)の合成語。

Bāhusaccañ (中性、単数、主格) saccañはsuta(suṇāti「聞く」の過去分詞)にya(名詞や形容詞を作るための接尾辞)がついた形。

sippañ (中性、単数、主格)

vinayo (男性、単数、主格)

susikkhito (男性、単数、主格) suは「善い」という意味の接頭辞で、sikkhitaはsikkhati(学ぶ)の過去分詞。

Subhāsitā (女性、単数、主格) bhāsitaはbhāsati(話す)の過去分詞。

Yā 関係代名詞

Vācā (女性、単数、主格)

Mātāpitu-upaṭṭānaṃ (中性、単数、主格) Mātā(母)+pitu(父)+upaṭṭāna(奉仕)の合成語。日本語では「父母」というように常に父親が先に来るが、インドではいつも母が先になります。理由はよくわかりません。

puttadārassa (男性、単数、属格) putta(息子)+dāra(妻)。これも日本語の「妻子」とは順序が逆。

saṅgaho (男性、単数、主格)

anākulā (男性、複数、主格)

kammantā (男性、複数、主格)

dānañ (中性、単数、主格)

dhammacariyā (女性、単数、主格)

ñātakānañ (男性、複数、属格)

anavajjāni (中性、複数、主格)

kammāni (中性、複数、主格)

Ārati (女性、単数、主格)

virati (女性、単数、主格)

pāpā (中性、単数、奪格)

majjapānā (中性、単数、奪格)

saññamo (男性、単数、主格)

Appamādo (男性、単数、主格)

dhammesu (男性、複数、処格)

gāravo (男性、単数、主格)

nivāto (男性、単数、主格)

santuṭṭhī (女性、単数、主格)

kataññutā (女性、単数、主格)

Kālena (男性、単数、具格) 「時々、適時」という慣用句。

dhammasavanaṃ (中性、単数、主格)

Khantī (女性、単数、主格)

sovacassatā (女性、単数、主格)

samaṇānañ (男性、複数、属格)

dassanaṃ (中性、単数、主格)

dhammasākacchā (女性、単数、主格)

Tapo (男性、単数、主格)

brahmacariyañ (中性、単数、主格) brahma(高貴な)+cariya(行い)の合成語。 「梵行」「不淫行」。

ariyasaccāna (中性、複数、属格) ariya(聖なる)+sacca(真理)の合成語。

Nibbānasacchikiriyā (女性、単数、主格) Nibbāna(涅槃、悟り)+sacchikiriyā(知覚・経験すること)

Phuṭṭhassa (過去分詞、男性、単数、属格)

lokadhammehi (男性、複数、具格) loka(世間)+dhamma(物事)

cittaṃ (中性、単数、主格)

yassa (関係代名詞、属格)

kampati (動詞、三人称単数、現在)

Asokaṃ (中性、単数、主格)

virajaṃ (中性、単数、主格)

khemaṃ (中性、単数、主格)

Etādisāni (中性、複数、対格)

katvāna (連続体)

sabbattha-m-aparājitā (男性、複数、主格) sabbattha(あらゆる場所)+aparājita(敗北することがない)。mは読みのための挿入。

sotthiṃ (女性、単数、対格)

gacchanti (動詞、三人称複数、現在)

taṃ (代名詞、単数、主格)

tesaṃ (代名詞、複数、属格)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする