池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつく老人の日常

体験的ベルベル人観

2020-08-30 17:11:02 | 日記
途中まで書いていてアップし忘れた原稿があるので、追加でアップさせてもらう。
だいたい、アルジェリアとかベルベルとかカビリー・カビルとか、日本には何の縁もなさそうなので、特に興味を持つ人は少ないかと思う。
しかし、欧州ではずいぶん以前から移民と宗教(特にイスラム教)とテロの問題に頭を悩ませており、どの国もはっきりした成果を出しておらず、以前から住んでいる国民の不満がかなり強い。
この問題を解く(というか緩和する)鍵の1つがベルベル人だと私は思っている。

ちょっと余談になるが、現代のフランスを語るときにアルジェリア移民(マグレブの中で最も過激な人間が多い)の問題は避けて通れない。先年のフランスの大規模テロの時にいろんな学者さんたちがテレビに登場して、いろいろコメントされていたが、アルジェリアのことを知っていらっしゃる方は皆無のように思えた。フランスのきれいで安全な一角で生活されていたようなので、仕方ないと言えば仕方ないが。

前に言ったと思うが、私はアルジェリアの日系企業で働いていた。同僚のアルジェリア人にはベルベル人が何人もおり、彼らとよくしゃべってベルベル人の位置というものを教えてもらった。
相対的に言って、先住民で被抑圧民族でもあるベルベル人は、他人の痛みに敏感で優しい性格の人間が多いように思う。だから、私も含めて日本人スタッフに人気があったのは、ベルベル人多かった。

現在はどうか知らないが、当時のベルベル人はアラブ語が上手でない場合が多く、その代わりフランス語はうまかった。
フランス語もアラブ語も自分たちの言葉ではないので、どうせしゃべるなら役に立つフランス語を勉強した方がいいということだろう。当時の高等教育はすべてフランス語でやっていたからだ。

フランスへの移民にベルベル人、特にカビル人が多いのも同じ理由だったろう。どうせマイノリティとして過ごすなら、先進国の方が圧倒的に条件がよい。ちょっと長くなったので、続きは別の日に。

余談だが、フランスの英雄ジダンの父親はカビリー地方からの移民。
この動画の最後のところで、ジダンが「父親があなたの大ファンだ」と言った時のイディールの嬉しそうな顔が印象的。

https://www.youtube.com/watch?v=Luedi2YReI0&t=50s




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プレビュー『エルミーヌの選択』(10)

2020-08-30 15:52:46 | 日記
アントナンがモーリスのところへ来て、昨夜のいきさつを話す。
すでにアントナンは、エルミーヌに相当入れ込んでいる様子だ。

 翌朝、アントナンは僕のところに来て、前の夜の出会いについて僕に話した。彼は、いま僕が君に話したのとほぼ同じ言葉を使っていた。そして、最後にこんな言葉を付け加えた。

「彼女は手間やお金がかかる女性ではない、すでにきれいなんだから……もし彼女が僕を好きになってくれるなら、これは僕の善行為ということになる。だって、昨日僕と出会わなかったら彼女がどうなっていたかわからないじゃないか?……僕は本格的に職探しをしようと思うんだ……まあ月に二百フランは稼げるだろう。それを彼女と分ける。きっと幸せだろうな……君はどう思う? 僕は、あの可哀そうな娘が本当に好きになっている。彼女が藁の帽子をかぶり、きれいなドレスとハーフコートを着て、絹のハーフブーツを履いていたら、きっと天使のようにきれいだろうな……彼女と会えてよかった。これで僕も働かざるをえなくなる。おそらく、彼女がいなければ、そんな気にはぜったいならなかっただろう……一緒に来てくれないか。彼女の部屋を探して家具を買うんだ」

 僕は着替えをしてアントナンについていった。その娘にはもっと注意するように彼に忠告したかったのだが、彼は明らかにその娘に気を奪われていたので、それも無駄になってしまいそうだった。それで僕は黙っていた。


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偉大だったイディール、エンリコとベルベル語で歌う動画

2020-08-28 08:00:34 | 日記
今年ショックだったことの1つは、イディールの死であろう。
彼の作る歌がいい、歌がうまい、インタビューなどで誠実な人柄が伝わってくる等々、彼に対する肯定的評価はいくつもあるだろうが、やはり何と言っても、彼がベルベル文化、特に出身地のカビリーの文化を広めたことが最大の業績だったように思う。


大半のフランス人を含め、世界のほとんどの人間が、アルジェリア人と言えば全員がアラブ語を話すものと思い込んでいるが、実はそうではない。
ベルベル人という先住民族がいる。
ベルベルという言葉は、ギリシャのバルバロイから来ており、ローマ人がこの地方の人間たちにつけた綽名である(わけのわからない言葉をしゃべる人間たちという意味)。

彼らの言語がセム語系に近いことがわかっていることから、フェニキア人の子孫、カルタゴの末裔、ユダヤ人等、いろいろと起源説がある。

カビリー地方は、その中でも特にベルベル人が多く住む地域であり、独特の文化を持っている。

イディールは、徹底してこのカビリーの言葉で自分たちの文化を歌った。
おかげで、この十数年、カビリー(その言葉や人はフランス語で「カビル」という)文化が非常に広まり、アラブ人とはかなり気質が異なり、おおらかな彼らの文化を受容するようになったと思う。
ユーチューブでも、彼らのベルベル語とフランス語がごちゃまぜになった番組を見ることができる。

そのイディールが、有名になりはじめた頃、昨日採り上げたエンリコ・マシアスと一緒にベルベル語で歌っている動画がある。エンリコも多少はベルベルが話せたようだ。

Idir & Enrico Macias chantent en Kabyle(amazigh).flv

https://www.youtube.com/watch?v=PGJzHpo3W0k






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同じ曲をエンリコ・マシアスが歌う

2020-08-27 07:21:19 | 日記
エル・ハラシの名曲をエンリコ・マシアスもコンサートで歌っている。
これは、たしか2008か2009
年のもの。
たぶん、まだ奥さんが生きていた頃でしょう。終わりを間違えるのは愛嬌。

Enrico Macias - Ya Rayeh

https://www.youtube.com/watch?v=9vBO8KWpqXs

エンリコ・マシアスについては、本当に気の毒だと思っている。アルジェリアに生まれ、故郷のコンスタンチンを愛し続けているにもかかわらず、独立後、彼はアルジェリアの入国を許されていない。その理由は、彼がユダヤ人で、イスラエルを支持しているため。

こんなバカな話があるのか。別に彼はアルジェリアで政治活動をしようというわけではない。政治的信条だけで入国を拒絶するというのは、独立後のアルジェリアがいかに硬直した体制なのかをよく示している。
こんな調子だから、国土が広く天然資源が豊富なのに、いつまで経っても国力も国富も品格も上がらないまま。
90年代のテロ流行後は、観光客さえ寄り付かなくなった。たまにサッカーチームが活躍するくらい。しかし、エジプトチームとの葛藤で、けっこう評判は悪いが。
住んでいたこともあるし、大好きな国だけに、本当に残念。

この動画を見ても、伝統楽器を弾いているのも、客席で踊っている人間たちも、大半がアラブ移民の子供や孫たち。彼らは、ほとんどイスラム教徒であるはず。でも、エンリコと一緒に音楽をやっている。
たぶん、エンリコはもう生きている間にコンスタンチンに行くことはできないだろう。残念だが。

ちなみに、コンスタンチンというのは、その名の通り、ローマ城塞都市が原型。
最初にこの町を見た時には、その雄大さに本当にびっくりした。





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ダフマヌ・エル・ハラチ

2020-08-26 10:13:46 | 日記
若い頃にアルジェリアにいたので、時々、無性にあそこの音楽が聴きたくなります。

ダフマヌ・エル・ハラチ。私は、フランス式に「ハラシ」と呼んでいますが。

「シャアビ」(ライの1世代前の歌謡曲)の大歌手。

ya rayah

https://www.youtube.com/watch?v=4Z9plRx8dSY

これは傑作です。映っているのはアルジェの風景。まだ独立したばかりでにぎやかな頃です。今時の現地の様子を見ると、本当に寂しくなりました。
アルジェリア人には怒られるかもしれないが、独立した時に「ピエ・ノワール」を全部追い出したのは、果たして国として正しい選択だったのかなあ?


dahmane el harrachi
ヤクザみたいな顔をしていますが。
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