徳田秋聲【或売笑婦の話】
徳田秋聲【或売笑婦の話】
久しぶりのアップロードです。
ファイル46に続いて徳田秋聲の作品を採り上げました。私の大好きな短編の一つです。前にも書きましたが、秋聲の描く女性は本当に魅力的に映ります。女性の心理描写が巧みだからでしょう。
この作品でも、楼主との契約期限も過ぎて、これからの身の振り方を考えなければならない主人公の若い女性(女郎)が、客の青年との付き合いを通して微妙に心が揺れ動く様を上手に描き出しています。ラストは少々ショッキングですが、そこでは文章に抑制が利いており、逆にそれが主人公の心理を雄弁に物語ってくれます。
以下、語釈です。
附馬(つけうま)遊興費が不足したり、払えなかったりした客について、その家まで代金を取りに行く者。つきうま。うま。
倉敷(くらしき)物品を一時的に預けておく倉。
二三枚目どころ 遊郭の看板遊女ではないこと。
朋輩(ほうばい)仲間、同じくらいの身分・年齢の友。同輩。
新造(しんぞ)新米の遊女。
白銚(はくちょう)酒をお銚子に注ぐための白い磁器、急須。
銅壺(どうこ)箱形の湯沸かし器。
御内所(ごないしょ)遊郭の主人、またはその居場所。
胸算(むなざん)暗算
お店者(おたなもの)商家の奉公人。
引釈きもの(ひきときもの)言葉などを調べること。
裁盤(たちばん)ものを切るときに使う台。
半玉(はんぎょく)一人前でない若い芸者。芸子。
半衿(はんえり)汚れを防ぐのと装飾のために襟にかぶせる布。本襟の半分の長さ。
切山椒(きりざんしょう)山椒の実から作った餅菓子。
耳門(くぐり、じもん)くぐり戸。
海気(かいき)海辺の空気。
細捲(ほそまき)タバコや海苔巻きなど細く巻いた持ち物。