池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

出会い頃、別れ頃(8)

2024-06-02 15:41:25 | 日記

「オレたちの会社だけでなく、日本のコンピューターメーカーはどこも駄目だったんじゃないかな、情報管理という面は」

 二杯目のジョッキでN氏は、ますますテンションが上がってくる。焼き鳥の串を鉛筆代わりに空中に字を書きながら持論を展開する。

「日本人は、西洋人みたいに概念指向型じゃないからな。なんと言えばいいのかな、実物指向型とでも言えばいいのか……」

 当時の最大の競合相手は北欧にある通信メーカーだった。その会社は、設計思想の中に情報の伝わりやすさや管理のしやすさを取り込んでおり、非常にすっきりした扱いやすいシステムを作っていた。我々はどうか? 設計思想があり、概念設計をし、詳細設計に落とし込む。これは一緒だ。しかし、その過程の中で、元々の設計思想とはそぐわないものでも「これがあれば便利なはずだ」とか「こっちの方が手っ取り早い」と考えれば、どんどん追加する。そして最終的に、機能性は高いが、扱いにくく分かりにくいシステムができあがってしまう。

 これに輪をかけているのがマニュアルなどの納入文書であった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする