「死に際の歌」~浜田到~ 2018-12-05 22:24:05 | 短歌 49歳にして逝った歌人、 浜田到。 岡井隆に認められた 浜田は、 抽象的な「死」を歌った。 「死」に 面した時、 人は孤独になる。 寄り添った妻とも、 別々に 死ななければならないのだ。 そんな浜田の歌を 2首 挙げる。 ‥‥‥ 死に際を思ひてありし一日のたとへば天体のごとき量感もてり 汝が脈にわが脈まじり搏つことも我の死後にてあらむか妻よ
宮柊二の歌~その3~ 2018-12-05 20:38:04 | 短歌 戦いをくぐり抜けた 宮柊二には、 味わい深い歌が多い。 戦時中の 肉激戦の記憶が、 そのような 歌をうたわせるのだろう。 なにげない 日常の中に、 そうした背景を感じさせる歌が 多いのだ。 竹群の歌を3首。 ‥‥‥ あたらしく冬きたりけり鞭のごと幹ひびき合ひ竹群はあり 幹立ちの青くするどく竹群はある折々に脅もつ このあした霜おける路へだてつつ迫りくとおもふ暗き竹群
短歌の地域サークル つじどう会 2018-12-05 18:34:58 | 短歌 月に1度 開催される 短歌会に出席した。 会員5名。 月ごとに、 各自3首の歌を 合評する。 短歌を発表するだけでなく、 地域の情報や 世界情報を論じる。 会員のあいだで、 歌人の話などもでる。 ご婦人方の 考え方、 生活なども 伺えて、 貴重な時間となっている。
土岐善麿の歌~その1~ 2018-12-05 18:20:14 | 短歌 土岐善麿は、 新聞の社会部記者として 活躍した。 一方で、 すぐれた短歌も 多く残している。 ‥‥‥ りんてん機、 今こそ響け。 うれしくも、 東京版に、 雪のふりいづ。 遺棄死体数百といひ数千といふいのちをふたつもちしものなし ~日中戦争の報道写真をみてつくる~ あなたは勝つものと思ってゐましたかと老いたる妻のさびしげにいふ ~第2次世界大戦後に歌う~
伊藤左千夫~短歌と小説~ 2018-12-05 18:06:33 | 短歌 伊藤左千夫は、 1864年に生まれ、 1913年没。 短歌は、 それまで、貴族等がたしなむ 余技とされていたが、 一般庶民も参加できる、 として、 搾乳業を営みつつ、 短歌をつくった。 正岡子規に師事し、 「アララギ」を創刊し、 島木赤彦 斎藤茂吉 土屋文明 等を 育てた。 のち、 野菊の墓 等、 すぐれた小説も 創作した。 代表的な歌。 ‥‥‥ 牛飼いが歌よむ時に世のなかの新しき歌おおいにおこる
「サラダ記念日」の英訳 2018-12-04 21:46:38 | 短歌 最近は、 短歌が 英訳されるケースも増えてきた。 一番ポピュラーなのは、 俵万智さんの 「サラダ記念日」の 英訳。 代表作を、見てみたい。 ‥‥‥ 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 Because you told me, "Yes,that tasted pretty good," July the Sixth shall be from this forward Salad Anniversary.
吉井勇の「寂しければ」 2018-12-04 20:26:10 | 短歌 吉井勇と言う 歌人がいる。 74歳で亡くなるまで、 旺盛な作家活動をつづけた。 劇作家としても 有名である。 森鴎外 石川啄木 北原白秋 とも親交があった。 上の写真は、 吉井勇の歌碑である。 芸術院会員 宮中歌会始の選者 でもあった。 「寂しければ」 という 70首にわたる 連作がある。 はじめの3首だけ挙げる。 岩波文庫に収録されている。 ‥‥‥ 寂しければ人にはあらぬ雲にさへしたしむ心しばし湧きたり 寂しければ火桶をかこみ目をとぢて盲法師のごともあり夜を 寂しければある夜はひとり思へらくむしろ母なる土にかへらむ
中城ふみ子~乳房喪失~ 2018-12-03 23:35:43 | 短歌 中城ふみ子は、 三十二歳にして 歌壇に登場し、 その数か月後、 亡くなった。 乳房をがんのために 喪失し、 しかも 離婚歴あり、 ということもあって、 歌集 「乳房喪失」 は、 センセーショナルな 話題となった。 以下に その歌を挙げるが、 自らの、存在と 出奔した夫、 子を 恋いる歌は、 胸を打つ。 ‥‥‥ もゆる限りはひとに與へし乳房なれ癌の組成を何時よりと知らず 冬の皴よせゐる海よ今少し生きて己の無惨を見むか 出奔せし夫が住みゐるてふ四国目とづれば不思議に美しき島よ 頼りなく母を呼ぶ声伝えくる長距離電話は夜のかぜのなか
北原白秋の歌~その3~ 2018-12-03 23:13:59 | 短歌 北原白秋の歌。 人口に膾炙した作品が多い。 1つ、 挙げる。 ‥‥‥ 一、海は荒波 向こうは佐渡よ すずめ啼け啼け もう日は暮れた みんな呼べ呼べ お星さま出たぞ 二、暮れりゃ砂山 汐鳴りばかり すずめちりぢり また風荒れる みんなちりぢり もう誰も見えぬ 三、かえろかえろよ ぐみ原わけて すずめさよなら さよならあした 海よさよなら さよならあした
ドラマチックな、宮柊二の歌 2018-12-03 22:43:15 | 短歌 宮柊二は、 北原白秋の弟子である。 生涯で、13の歌集を出した。 弟子に、高野公彦等がいる。 歌誌「コスモス」 を 創刊。 1912年生まれ、 1986年死去。 芸術院会員、 宮中歌会始選者を務める。 もっとも有名な歌集は、 日中戦争の渦中でつくった歌、 「山西省」。 一兵卒として なまぐさい戦場の景を叙する。 ここでは、 3首のみ挙げておく。 ‥‥‥ ひきよせて寄り添ふ如く刺ししかば声も立てなくくづおれて伏す 磧より夜をまぎれ来し敵兵の三人迄を迎へて刺せり 耳を切りしヴァン・ゴッホを思ひ孤独を思ひ戦争と個人をおもひて眠らず
佐々木信綱の短歌~その1~ 2018-12-03 21:25:36 | 短歌 佐々木信綱は、 有名な歌人である。 優雅な歌、 美しい歌、 滑らかな歌。 いろいろな形容のしかたがある。 その歌集から、 短歌を紹介する つもりだが、 ここでは、 2首だけ 挙げておく。 ‥‥‥ ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 大門のいしずゑ苔にうづもれて七堂伽藍ただ秋の風
与謝野晶子と数詞 2018-12-03 21:12:11 | 短歌 与謝野晶子が 力を発揮したのは、 短歌だけではない。 無類の科学好きだったし、 物語も書いた。 童謡も。 また、詳しく紹介するが、 与謝野晶子の 短歌には、 数詞が 頻繁に出る。 3首だけ挙げておく。 ‥‥‥ その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里清滝夜の明けやすき 狂いの子われに焔のかろき百三十里あわただしの旅
かにかくに祭り~吉井勇~ 2018-12-02 22:07:05 | 短歌 かつて、 吉井勇という歌人がいた。 24歳の時、 まとまった金が入り、 京都の祇園に。 茶屋に出入り。 いくつかの歌を残している。 古希の時、 親交のあった 谷崎潤一郎 湯川秀樹 新村出 らが 発起人となり、 白川新橋たもとに 歌碑を立てた。 三首。 ‥‥‥ かにかくに祇園はこひし寝ときも枕の下を水のながるる 君がため紅灯のちまたにゆきてかへらざる人をまことのわれと思ふや かの君の涙の酒に酔ひけるよ人は知らじな酒のかなしみ
ごろすけほう~岡野弘彦の短歌~ 2018-12-02 19:59:52 | 短歌 岡野裕彦は、端正な歌を 多く作った。 しかし、ときには、 大冒険をする。 正統派の歌人にも、 よじれた歌を作ることがあるのだ。 ‥‥‥ ごろすけほう心ほほけてごろすけほうしんじついとしいごろすけほう うなじ清き少女ときたり仰ぐなり阿修羅の像の若きまなざし すさまじくひと木の桜ふぶくゆゑ身はひえびえとなりて立ちおり
正岡子規の生きざま~短歌2首より~ 2018-12-01 22:27:07 | 短歌 正岡子規といえば、 短歌史に燦燦と輝く 短歌の革新児である。 若くして、 当時の不治の病である 結核にかかり、 常に死と向き合いながら、 短歌の写生を中心にして、 すぐれた短歌をつくり続けた。 自らの死を、必然のこと、 近いうちにくるものとして、 切実に受け止めた。 ‥‥‥ くれなゐの二尺伸びたるバラの芽の針やわらかに春雨のふる 瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり