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いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

宮柊二の歌~その6~紫陽花

2018-12-08 22:08:14 | 短歌


宮柊二には、花を歌った短歌も多い。
「コスモス」

創刊し、
その発展に尽くした。

老境にいたり、
歌人にも
必ずやってくる
病や死の歌を、
淡々と描く。

今回は、
紫陽花を歌った短歌を紹介する。

‥‥‥

泡碧くかたまれる如兄弟らあひ寄れる如あづさゐ蕾む

淋しければ山の狭間に詮無くて紫陽花の花をちぎりすてつつ

むらむらとあしたの庭に見えわたり若く真青き紫陽花のはな

紫陽花の青のしづけさ道元が行持道環と言ひしおもほゆ

安田純生の歌~その1~

2018-12-08 20:01:22 | 短歌


現代歌壇で、
飄逸な味を出すのは、
奥田望洋のほかには、
安田純生がいる。
昆虫や自然をよく歌う歌人である。

‥‥‥

まぼろしのふたりは髪の毛黒かりきもしや男はむかしの我か

わが記憶あてにならねどこの家にて糸とんぼ見るは今朝が初めて

目の前にホバリングせる糸とんぼ差し伸ぶる手を右に躱しつ

河野裕子の歌~その2~

2018-12-08 19:44:53 | 短歌


河野裕子の歌が、
自身の癌との戦いには、
家族の温かい励ましがあった。
本人が苦しんだのは
当然だが、
ともすれば
折れそうになる
河野を支えた

息子

の力も大きかった。

‥‥‥

聴診を受くるは何年ぶりのこと胸と背中をゆっくり滑る(河野裕子)

お母さん笑ってゐるよと紅が言ふ 笑っておいでとまた髪を撫づ(永田和宏)

死して後お母さんと呼ぶをためらわずなりお袋となり損ねたる母(永田淳)

いろいろなときにあなたを思うだろう庭には秋の花が来ている(永田紅)


香川ヒサの歌~その1~

2018-12-08 19:30:30 | 短歌


香川ヒサは、現代的な歌をつくる。
明るさ、暗さ、軽やかさ‥‥
情景が、目に浮かぶような歌が多い。
また、叙情的な作品も数多くつくっている。

‥‥‥

いつしかに花咲き終へて山ぼふし緑あかるき夏の樹となる

バカンスのリゾートの椅子 夕暮れの老い人の椅子 人生にあり

あぢさゐが白く乾きてゐたりけり終戦の日に正午の時報

長編を読み終へ身体の重心を移し心の重心移す

北原白秋の歌~その4~

2018-12-07 23:19:22 | 短歌


北原白秋の歌。
年配者はみんな知っている歌だが
白秋の歌と」思っていない人も
多かろう。

‥‥‥

ペチカ 北原白秋作詞

一、雪の降る夜は 楽しいペチカ
 ペチカ燃えろよ お話しましょ
 昔 昔よ 燃えろよペチカ

二、雪の降る夜は 楽しいペチカ
 ペチカ燃えろよ 表は寒い
 栗や 栗や と呼びます ペチカ

三、雪の降る夜は 楽しいペチカ
  ペチカ燃えろよ じき春来ます
  今に楊も 萌えましょ ペチカ

俵万智さんの麦わら帽子の歌~英訳を添えて~

2018-12-07 22:37:08 | 短歌


英訳される短歌が多い。
ただ、
三十一文字で英訳することはできない。
短歌の歌う
風景、
心持、
描写を
作品にする。

こういう時代がきたのだ。

‥‥‥

思い出の
一つのようで
そのままにしておく
麦わら帽子のへこみ

I'm going to keep it
a souvenir
just as it is
the dent
in my straw hat.

河野裕子の歌~その1~

2018-12-07 20:56:23 | 短歌


何度か、
戦後女子短歌界の
巨人、
河野裕子さんの歌を取りあげた。

今回、
まずは
晩年の歌から、
紹介したい。

彼女は、
多作な歌人だったので、
歌の数も
おびただしい。
すこしずつ
紹介したい。
ここで紹介するのは、
乳癌が再発して、
厳しい闘病生活をするなかでの作品。

‥‥‥

いつまでもわたしはあなたのお母さんごはんを炊いてふとんを干して

食べることは生きるよろこびと沁みじみす 殺して食ふこと沁みじみす

消灯後の薄暗がりに歌作り薬袋の裏に書きゆく

お母さんあなたはわたしのお母さん、裕ちゃんごはんよと呼ぶこゑがする





飄逸な短歌~奥田亡洋~

2018-12-07 20:35:17 | 短歌


現代短歌の
歌人の一人
奥田亡洋。
作風は飄逸で、
笑いを誘うものも多い。
論より証拠。

いくつか、
歌を取り上げる。

‥‥‥

矢印のような帽子を被りつつ僕らは前に歩くだけです

まっすぐに立ちたる水に一輪の薔薇が挿されて秋の日はある

ミッションなインポッシブルだ向日葵のように手ぶらで笑えだなんて

マウンテンな富士山であるCTに脳を切られておれが見るのは

角川短歌賞、昨年の受賞者~睦月都

2018-12-07 20:05:45 | 短歌


短歌界の新人たち。
年齢はともかくとして、
新しい歌人が
続々と登場する。
一時は、その存在が危ぶまれた
短歌界をになう新星たち。

今回は、昨年
角川短歌賞を得た
睦月都
の作品を拾ってみる。

‥‥‥

昼の陽に感情の底洗ひつつゆきかふ日々の靴が脱げさう

空想に蛇を飼ひつつ昼ありて夜はケーキをたべて眠らむ

血縁といふふかしぎの薄く濃く花提げもちて墓参りせり

心臓に部屋がいくつもあることの それも光の当たらぬ部屋の

春日真木子の歌~その1~

2018-12-06 20:37:52 | 短歌


春日真木子は、現代の歌人である。
作風は、古典的な教養をもちながら、
柔軟に歌を詠む、
といえようか。
三首。

‥‥‥

「だいぢやうぶー」問ひ来るTELに「生きてます」短く答ふ心は潤ふ

「さやうなら昨日 ようこそ明日」ふと口遊む台詞ひとひら

自然こそ心やはらぐ鎮痛剤 老初めわれを明日へ引張る

栗木京子の歌~その2~オウム事件に関連して

2018-12-06 20:20:13 | 短歌


オウム真理教事件は、
日本中に恐怖を巻き起こした。
彼らは
逮捕され、
事件の概要が明らかになり
激しい怒りが、
日本中にまき散らされた。

それと
関係する
栗木京子の歌を3首。

‥‥‥

法廷画家の描きたる教祖麻原のむじゃむじゃの鬚にただおぞましく

十三人の死刑執行されし夏 被告らの古き映像流る

足立区のアレフ施設を拒否せむと署名をつのる回覧板来ぬ

宮柊二の歌~その5~温泉にて

2018-12-06 19:58:43 | 短歌


宮柊二の歌。
戦後、たいへんな世の中であったが、
宮柊二は、
ときに
休み、
ときに
歌誌「コスモス」

作品を
発表しつつ、
ゆうゆうと過ごした。

温泉に行った時の
3首。

‥‥‥

湯口より溢れ出でつつ秋の灯に太束の湯のかがやきておつ

青木毬つきたる山の栗の木にみじかく啼きて秋の蝉去る

水寒くあさあさひびく山の湯に起き伏して肌緊りきにけり

宮柊二の歌~その4~

2018-12-05 23:09:09 | 短歌


宮柊二の歌。
歌をつくるのは、
苦しいのか
楽しいのか
わからない。
だが、歌を作り続ける自分がいる。
いずれも、嘘でなく、真実でもない。
その2つの思いのたゆたいが歌われる。

‥‥‥

苦しみて歌つくるわれ楽しみてうたつくるわれいづれぞわれは

施療待つ待時間にて手首などに十六本の鍼打たる

やめてゐし煙草を再び吸ひそめぬ喉を素直に煙はとおる

「介護と死」~歌人として、娘として~

2018-12-05 22:57:37 | 短歌


米川千嘉子は、
現代に生きる歌人である。
多くの人と同様に、
父を介護し、看取った。
歌人としての時間を削り、
やりたいこともおさえて、
父と向き合う。
「時間をチコにかえしたい」
という父。
それでも、
米川千嘉子は、
時間を削り続けた。

‥‥‥

時間をチコに返してやらうといふやうに父は死にたり時間かえりぬ

訪ふたびに着替えるやうに老いてゆく水のごとかる歩みを父に

「とどまるというひとつ」歌人田井安曇

2018-12-05 22:40:59 | 短歌


政治にかかわり、
安保闘争にかかわり、
韓国の詩人金芝河への
弾圧を歌った。
「詩と政治」
という
アポリア
にかかわり、
生涯を
捧げた
田井安曇。

2首。

‥‥‥

とどまるというひとつにも弩のごとき努力をして過ぎむのみ

詩はついに政治に勝てぬことわりをしめぎにかくるごとく見しむる