時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

確率のモンダイ

2010年02月11日 | Bloomingtonにて
新学期始まってひと月。忙しいし、目新しいこともないので何にも書かなかったんですが、最近の様子でも、なんとなく。

この不況でインディアナ大も州の予算が削減されたのをうけ、大幅な予算カット。教員の給与削減とか、大学院生のTA枠の縮小とか、さまざまな影響があるようです。幸い、今学期は統計学科のTAに雇ってもらえました。Introduction to statisticsという大学院の授業で、扱うのはせいぜい分散分析までだけど、確率論などを正面から深く扱うので勉強になる。過去に覚えたことが、「そういうことだったか」と、初めてつながったことも多々。

また、Math and Logic for Cognitive Scienceという授業を聴講していて、こっちも確率モデルをあれこれ(ベイジアンネットとか、エントロピーとか、今やってるのは隠れマルコフモデル)。難しくて頭が吹っ飛びそうだけど面白い。この両方が少しずつ重なった内容を扱うので、ちょっと助かる。TAの仕事も宿題の採点なので、頭の中は確率だらけ。

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小田嶋隆さんの朝青龍引退に関するコラムを読んでいると、気にかかる一節が。

  「……まさか、仏壇買おうとか思ってないか?」
  「……いや、今のところは考えてないけど……」
     (中略)
  「だってお前、死んだらやっぱり誰かに線香あげて貰わないと
   しょうがないわけだろ?」
  「大丈夫だよ。お前が死ぬ頃にはデジタルの線香が発明されてるから」

うちの娘の誕生は、子がいない伯母も大喜びで、会うたびに「お墓を頼んだよ」と言います。上のコラムの一節もそうですが、こうやって死後のことを気にかける話をきくたび、不思議な気持ちになります。

授業でも出てきた確率計算を利用してちょっと考えてみました。わりと新しい国の統計によると、2000年(でももう10年前)で、40代以上の独身家庭が16.8%だそう。このまま生涯独身で終わる確率が、少なく見積もって10%だとします。さらに、同じ統計で、妻が40~49歳で、子のいない家庭が9.9%。これも控え目に、最終的に子がないままの確率を5%とする。うちの両親には、孫がうちの娘一人だけ。今後増えることもないでしょう。そんなところもいくらでもあろうし、ホントは生涯独身率ももっと上がってるだろうから、ある代で「家」が途絶える可能性はもっと高いかもしれないけど、それはとりあえず計算に入れないとして・・・

その代で途絶える確率が、生涯独身率の10%、さらに残りの90%のうち、子を残さないで終わる夫婦が5%だから、0.9×0.05で、4.5%。「家がn代続く確率=家が途絶えないでn代過ぎる確率」は、家が途絶える「10+4.5=14.5%」の補集合の確率、すなわち「家の存続率」100-14.5=86.5%のn乗になる(んだと思う)。つまり、

n代続く確率 = 0.865^n

この控え目な推定でも、5代続く確率(6代目で断絶する確率)が0.865の5乗で、0.484。早くも50%を切る。10代続く確率が約23%、20代になると、もう5%ちょっと。さらにいえば、nがどんどん大きくなれば、確率は最終的に0に収束する。まあそもそも、日本とか世界がずっと存在するわけないけど。私も仏壇に花を添えたり、墓参をしたりしますが、ホントの所は、生きている人たちに喜んでもらおうと思ってるだけだったりして。。。

世は移ろい、「デジタルの線香」が、子孫のいなくなった人の仏壇に、予めプログラムされたタイミングで灯る日が来るかも。でも、誰のために? こんなふうにモノを見る癖がつくと、しばしば実も蓋もない結論に至ってしまいます。「ということで、お墓の面倒を見てもらえるようになんて考えてもしょうがないんだよ~」と言うと、ニョーボは「人は確率なんかでこんなことについて考えないよ」。

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写真はボルティモアの港。Subwayの看板の上にあるのは飾りじゃなくて、ホンモノの鳥(カモメ?)です。

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