時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

プロは辛い?

2011年01月06日 | 
先日、箱根駅伝と男子長距離の国際競争力に関する記事を書いたのですが、昨日、NumberのWebにかなり主旨がオーバーラップする記事が出ました。

http://number.bunshun.jp/articles/-/76208

比べていろいろ気づくところがあります。まず、私の結論が「世界のレベルが上がりすぎちゃって、問題を解決してももう追いつけないだろう」と否定的なのに対して、

  それが、遠のいた世界のマラソンに追いつく第一歩に...

と希望を捨てていないことです。「もうダメでしょ」とは書けないか、やっぱり。

それから、もっと目を見張ったのが、

  大学の長距離の指導者からは「別に駅伝がマラソンに支障を
  きたしているとは思わない」という発言も多い。

というくだり。「支障がある」とは言い切れませんが、「支障がない」と言っちゃえるのも不思議。箱根を狙ってるような大学の指導者は日本の陸上界でいちばん激しい競争にさらされているはず。いい業績を挙げている方は待遇もいいだろうけどプレッシャーもとてつもなくて、他のレベルの競技や、卒業後がどうなるかなんて考える余裕はないだろうと思うのですが。

何か、駅伝を悪者にする記事を書いたんなら、そっち側の言い分も書いて顔を立てないと、という都合で無理無理ねじ込んだ一文に見えてしまいました。文章で稼ぐプロのライターって、あちこちの顔色をうかがう必要があって、辛いのかも、と思わされる一件でした。

箱根駅伝のせいで?

2011年01月05日 | 
箱根駅伝、もちろん米国では観られないわけですが、ウェブ情報でレースの状況をけっこう詳細に追いかけることができました。ところで、「駅伝のせいで日本の(男子の)長距離が強くならない、とくに箱根は問題」という意見が前々からあるようです。今日はちょっとそれについて書こうと思います。

問題を、「駅伝が問題」、「箱根が問題」、「『男子の』長距離が強くならない」、の3点に分けます。まず「駅伝」。たぶん、特に若いうちは駅伝を含めたロードよりトラックやクロカンをやるべきでしょう。でも、これは技術的で、私には難しすぎるので措きます。

次に「箱根」。問題点とされるのは、全員20Km以上と距離が長すぎること。5000m28分台がぞろぞろいて、その代わり27分台がめったに出ない日本。27分を切って初めて勝負になる世界の現状と比べると、スピード不足で距離を伸ばしたときに勝負にならないと。これは事実ですが、箱根を目指すことが原因なのか、私には分かりません。ちなみに、距離の長さはおそらく人気が出た一因。というのは長いから失敗したら最後まで持たずに潰れるランナーが出るから。ヘロヘロになった人間を(かわいそうねえ~とか言いながら)見るのが楽しいという、残酷な趣味は間違いなくある。

確かに強化に影響があると思うのは、これもよく指摘される「選手が箱根で燃え尽きがち」という点。問題は、それが悪いかどうか。日本で長距離をやって、これ以上目立つ機会があるか。せいぜい五輪の人気種目で、かつ伝統的に強いマラソンくらいでは。選手個人の競技人生を考えたとき、キャリアで最も目立てる機会を与えてくれる団体を目指し、そこをキャリアのハイライトと考えて全力を傾けるのは、当然だろうと。人生設計上でも、その後陸上を続けて得られる名声・収入と比べたら、箱根を集大成として陸上競技は打ち切り、(可能ならその栄誉も利用して)他の世界で身を立てるべし、と考えても全くおかしくない。人生の選択は人それぞれですが、どんな向きの力が働くかは明らかだろうと。

最後に「男子長距離の強化」。「女子に比べて男子の成績が劣る」という含みがあり、ということは、まあ、マラソンの話をしてるんでしょう。そこでは女子は世界トップレベル、男子がそのレベルに及ばない、と。ここに少々疑問を差し挟みます。たしかに、谷口、森下、中山の時代を頂点として、力は落ちてきた。では、駅伝の弊害等を是正して、強化ができたとして、「女子レベルの活躍」に達するかというと、それは難しいのではないでしょうか。理由は現在の男子マラソンのレベルにあります。

北京五輪の男子マラソンは私には衝撃でした。5Km15分以下でぶっとばし、後半になってもさほど落ちずに2時間6分32秒。陸上長距離の真の花形競技は5000m、10000m。ケニア、エチオピアの国内の競争のレベルがあまりに上がって、そこからあぶれた人の参入で、マラソンの高速化が始まっていましたが、ついに夏の五輪まで。これはもう二度と日本選手は勝てないんじゃないか。実際、現在のマラソン歴代10傑もエチオピアが一位(ゲブレセラシエ)で、あとみんなケニア。だから、これは日本だけの問題じゃなくて、世界のどこも東アフリカの高地の国に勝てない、という状況が続くだろうと。

ということで、ミもフタもない話になりますが、マラソンで強国に返り咲くのが目標ということなら、もうちょっと遅いだろうと。男子のこの状況は、女子でいえばラドクリフみたいなのがこぞって参入し、争っている状態。逆に言えば女子はまだそこまで競争が激化してないわけで、だからチャンスがあったのだ、と思います。北京五輪では女子マラソンにも愕然としました。新たに強い選手が全然参入してきてない。力が落ちたヌデレバがまだ2位。故障するほど無理しないで、選考レースの力をそのままもってきたら、野口さん楽勝だったじゃん、なんてもったいない、と。だからまだ女子にはチャンスがあるかもしれない、男子ほどは競技レベルが上がってきてないんですね。この先は分かりませんが、だから、男子と女子を同じ土俵で比較するのは無理があるだろうと。サッカーなんかとも同じで。

以上長くなりましたが、まとめると。
1. 駅伝とくに箱根駅伝には強化上の問題はあるかもしれない。
2. けど、それが是正されても、男子が、ことマラソンで世界トップに返り咲くには、
   世界の競争レベルが上がりすぎてしまって、無理。
3. そこまで競争が厳しくない女子と比較してはちょっとかわいそう。

ということです。ということで箱根に関しては以前は批判的だったんですが、ほとんどの人の利害が一致してるみたいだし、まあいいのかも、と思うようになりました(内向な考え方ですけど)。最後まで読んでくださった方ありがとうございました。

お正月

2011年01月04日 | Bloomingtonにて
みなさま、明けましておめでとうございます。日本のお正月はどうでしょうか。

わが家は、31日にまた例年同様、日本語学校主催でお餅つきをして、日本から送ってもらったいくつかの食材でお正月っぽい食べ物を味わうことができました。

テロ未遂のような事件のせいで、アメリカ向けの小包の受付がストップされているという話を前に書きましたが、あれはかなり速やかに解除になりました。じつは、郵便局の勘違いだった部分があるようです。アメリカの郵便は「大幅な遅れが予想されますよ」とアナウンスを出したところ、日本の郵便局は、受付一時停止にしてしまった。でも、アメリカの案内をよく読んだ一部の(おそらくアメリカ在住の)日本人が「アメリカ当局はこう言ってるんだから、なんとかして」と訴えたらしいです。私は、「まーしょうがないじゃん」と諦めていたのですが、おかげで昆布巻きなど、すばらしいものを送ってもらえました。感謝。

写真は年末に作った雪だるま。Bloomingtonは雪がさらさらで、降ってからも気温が低いので玉にすることは難しいのですが、これはなんとか固められました。アメリカ式に3段。