時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

幸福な祖国、幸福な母語

2008年07月26日 | 旅行記
韓国から帰る直前の晩、泊めてくれたチョルギュさんとちょっとゆっくり話す機会がありました。彼は国立銀行の行員で、ここんとこかなり忙しいらしいのですが、付き合ってくれました。

日本と韓国の比較についてかなり熱を入れて語り、「韓国社会には問題がある。日本は素晴らしい。アメリカでもアジアのなかで日本だけが一目おかれている」と言う(最後の点はたしかにそうかも)。彼が知りたいのが、Bloomingtonで知り合った日本の留学生に「選べるならアメリカ、日本のどちらに住みたいか」というと、ほとんどが「日本」と答える、その理由。私も日本と答えました。韓国人のほとんどがアメリカがいいと答えるのと対照的なのだそう。

「(韓国や他の多くの国より)自国内で、安泰な将来に対する希望が持ちやすいからでは」と、持論を話したのですが、完全には納得できないようす。じゃあなぜアメリカがよくないのかという話になり、環境意識が低すぎる、人と人の関係が実は冷たく、特定の金持ちだけが安楽な、金儲け競争で心が荒んだ社会に見えるなどと指摘(周囲の人に恵まれ私はたいへんよくしてもらってますが)。

最後に「けっきょく私は、日本人の人間性をまだ信じてるんでしょうね」と言うと、チョルギュさんはわが意を得たり、というようす。彼にとっては、そこが韓国を出たい第一の理由で、韓国はその点でよくないと思ってるんだそう。曰く、他人の領域に踏み込みすぎる、恩義の貸し借りを常に計算していなければならない、などなど。。。 それは韓国人のいいところと表裏一体ですよ、現にその恩恵を私はたくさん受けましたから、と答えたのですが・・・

ともあれ、彼には日本社会における人間関係が望ましいものと映り、日本の留学生が国に帰りたがることをその根拠の一つと思うようです。ネット社会やマスコミでのつるし上げの応酬などを見るにつけ、他者に対する寛容度を下げ、ヒステリックで窮屈な社会になってる気がしないでもないんですが、いいところを見つけてもらえるのはありがたいこと。本当にいいところがあるなら、維持したいものです。

ついでに。今回の学会では、あまり人の発表を聞きませんでした。が、参加した範囲で印象的だったのは、日本人ではない学者で、議論の傍証に日本語の例を出す人がたくさんいたこと。彼らはそれを自由にできるほど、十分な知識を持っているようでした。いかに多くの言語学者に、日本語に関する知識がかなり高いレベルで共有されているか、ということを再確認。学習者の数では中国語に圧倒されてるけど、研究対象としては、アジアの言語ではたぶんまだ圧倒的優位、ひょっとすると英語についで2番目かもしれない。日本語は幸福な言語で、それを母語として持つ言語学者も有利な立場にいるということになるのだろうと思います。

学会が休みの水曜日、一人でぷらぷら雨のソウルを歩き回りました。写真は狎鴎亭にあったユニクロ。同じようなものは売ってたけど、パンツが見当たりませんでした。

A' REX

2008年07月25日 | 旅行記
韓国から日本へ帰るところ、仁川国際空港にて。

4泊5日で、18th International Congress of Linguistsという学会に参加しました。今朝、空港へ向かう道のりでいつものリムジンバスを使わず電車を利用。A'REXという愛称で、正式には「空港鉄道」というらしい。地下鉄で金浦空港駅まで行って乗り換え。前回、2006年に来たときにはまだ建設中で、同じく学会にやって来た同級生のチョンヘも「乗ったことない。乗ってみたい」と言う。今回、4泊中2泊をBloomingtonで知り合ったチョルギュさんの家に泊めてもらったのですが、金浦空港の近くに住む彼も利用したことがなく、「本数が十分ないかも。リムジンバスが無難ですよ」と言います。でも、ちょっと乗ってみたい。

ところで今朝は出発時の見込みが甘くて、金浦空港駅に着いた時点で6:50とかなり遅れ気味。しかも15分間違えて憶えていて、飛行機の出発が9:15。地上の空港バスターミナルまで移動して、仁川行きのシャトルバスを探してたら、2時間前どころか、1時間半前の到着も難しいかも。空港でレンタル携帯を返す必要もあるけど、大丈夫か・・・

ここは一か八か、空港鉄道の乗り場を探してみるとすぐ近くに発見。駅員に何分掛かるか聞いてみると、急行なら28分と言う。幸いぎりぎりに7:00の急行に乗車。実は、この列車でいいのか分からず、躊躇していた私のために、乗務員(ちなみに女性)がもう一度ドアを開けてくれたおかげ。あとは順調でした。本数も1時間に5本と、シャトルバスに劣りません。チケットは3,100ウォン、急行の特別料金はなし(最下階が急行ホーム)。渋滞の影響も受けないから安心だし、ソウルの地下鉄に慣れた方なら、オススメです。

写真は路線図。車内の案内は韓国語・中国語・英語・日本語でした(表示、音声とも)。ちなみに、行きも帰りも飛行機はかなりガラガラで、私は真ん中の3人並びの座席に一人だけ。アシアナ大丈夫か?

類は友

2008年07月20日 | サッカー
郷里の岐阜に滞在して1週間。息抜きにJリーグを見に行ってみました。行ったのはJ2、FC岐阜vs. 湘南@長良川競技場。多治見からはローカル線(JR)で一時間。バスを調べてきたけれど、確信がもてない。というのは、たとえばレッズ戦を見に行くと、赤いシャツの集団が必ず目に付くので、くっついていけばスタジアムに着けるのですが、ここではそれらしき人が見当たらないから。思い切って列の後ろにいる人に尋ねました。携帯ストラップがFC GIFUのものだったので。

話に応じてくれたSさん、なんとJFLのころからホームの試合は必ず来ているという熱心な人でした。こういう奇特な、いや、エライ人がいることにチームは感謝しないと。で、ひじょーに詳しい彼にお世話になって観戦。スタジアム情報、選手の名前・特徴など、何から何まで教えてもらって、おかげで観戦は充実。

会場の長良川競技場、なかなかよかったです。まず、混んでない、ゆったり見られる。眺めよし、バックスタンドの向こうが金華山、岐阜城。それから、食い物の売店が充実。比較的安くて、しかもおいしそう。雰囲気は和気藹々、サポーターは若くて、元気、結束よし。写真がその様子。けっこう入ってると思ったのですが、これでも3600人ちょっと。チームの発表によると、一試合5000人でやっと採算ラインだそうで、週末でこれでは、かなり苦しいらしい。

サッカーの内容、そりゃあJ1よりはだめなんでしょうけど、J2参入一年目としてはよくやってるんじゃないでしょうか。前線の選手、とくにサイドの選手は湘南のほうが明らかに上だったし、決定力のある選手がいない感じでしたが、けっこう相手を脅かし、惜しい引き分け。地元出身片桐選手が大黒柱に見えました。たしかに上手い。でも守備ももうちょっとがんばって。

Sさんの話を聞いていると、財力・集客力が整わない中で自分たちのチームを維持していくJ2チームの困難さと、それゆえの楽しさが伝わってきました。それにしてもスタジアムは楽しい。滞在中にホームゲームがあと2試合、一度でも行けるといいなと。

ところで、ナゴヤドームにも行ったことがないのでチケット取ってみようかと思ったら、ほとんど売り切れ。年間140以上試合があるのに。野球人気低下って、やっぱり(地上波)TV放送に関する話だけなんじゃないの? と思った次第。

ついに夢叶う

2008年07月13日 | Bloomingtonにて
Independence Dayに関して、もう一つイベントに参加。いつものマイヤーさん一家が、自分たちが行く予定にしていたPatriotic Concertというイベントに誘ってくれました。行ったのは独立記念日3日前の7月1日。Independence Day当日はたんなる家族で楽しむ日になりがちなので、記念日の意義を確認するために、こんなような催しをやるんだそうです。

行ったのは、Bloomingtonの南にある、Bedfordという小さい町の北高校。演目は当然国歌から始まって、過去の軍人や、国家・歌国民を讃える歌がメドレー風につながるようなアレンジがしてある。歴史を振り返る語りが入り、そのシーンを再現する寸劇が入り、第一次大戦からのそれぞれの戦隊を代表する旗を掲げた旗手が並び、会場にいる退役軍人は立ち上がってみんなに讃えてもらう。最後のアメリカ国歌のところでは、わたくしも熱唱させていただきました。一度やってみたかったので、大喜び。日本の国歌はろくに歌わないくせに(嫌いじゃないけど)。。。

前編これ「戦いの歴史」、それを「英雄的な行い」として讃える、実に軍国主義っぽい。国歌のところでは全員起立。なにしろイベントタイトルが「 The Home of the Brave」。こうやって国のために戦った人をみんなで讃えよう、というのは現在も戦争中の国として当然なのかもしれませんが、日本ではこういうのが市レベルで行われるなんて不可能では。

感銘を受けたのはイベントとしての完成度の高さ。演奏・コーラス・寸劇のキャストから裏方まですべて地域の素人なのだそうです。フロリダはオーランドのDisney Worldで、EPCOT内アメリカ館でアメリカの歴史を振り返るやはり自画自賛的なプログラムを見ましたが、高い金をかけて作りこんだそのプログラムに劣ると思えない。素人集団でここまでできるなら、わざわざ金と時間をかけてオーランドに行って、また自国の「栄光の歴史」を見る必要があるか? アメリカ人。

周りはほぼ完全に白人、アメリカ人じゃない人は私だけだったのでは。じつに場違いで、よくこんなところに連れて来てくれたものです。たんに「楽しいイベントだから連れてってやろう」という気持ちだったのかもしれないし、なんでも見てみようというこっちの好奇心を見込んでくれたのかもしれません。

はじめての独立記念日

2008年07月08日 | Bloomingtonにて
今年も日本に帰ることになりました。今はデトロイト空港で乗り換えの待ち時間。これが留学生活3年で4回目。これほど帰ることになるとは思いませんでした。留学前に見たあるWebsiteに「節約のために帰国回数はできるだけ減らせ」とあったので。そのとおり、生活コストだけなら今の給料でもちょっと余るかもしれないけど、航空券を買うととたんに足が出る。でも、今回は帰国費用の支給を受けられることになりました。取れたのは学内のPre-dissertation Travel Grantというもので、2年以上の学業を終えて、しかし博士候補になる前の、アメリカ以外の国をテーマにする予定の学生が対象。その国への往復航空券と、現地での活動費用が支給されます。

日本語方言をテーマにする話を指導教授とすでに始めていたので応募したところ、幸いこれの受給者のひとりに選んでもらえたので、帰ることにしました。この奨学金は学外の奨学金に応募することが条件の一つで、支援した学生が、それを弾みに外から金を取ってくることを期待しています(説明会でSnow-ball effectと言ってました)。

日本での実験の準備やらいろんな事情で、できるだけ帰国を後ろに送りたかったのですが、日本での日程の関係でこれが限界。それでもぎりぎり昨日、初めてアメリカの独立記念日(Independence Dayまたは4th of July)に居合わせることができました。午前中はパレード。国歌の演奏、進軍ラッパ吹いて、銃をぶっ放すというのから始まって、あとは教会、スポーツチーム、消防署、放送局、などなどさまざまな地域の団体がパレード(議員、政党がパレード参加してるのにはちょっと違和感)。あいにくひどい雨だったのですが、かなりの人が市の中心にある元裁判所(たいていのアメリカの街はそうらしい)前に集まって、国歌を歌い、星条旗を振ってました。

びしょぬれになったので一度家で温まって、夜は知り合いのご家族と花火に。暗くなるのが9時過ぎなので、かなり遅くならないと始まらないのですが、行ってみたフットボール場の駐車場にはかなりの人が来てて、待ちきれないのかあちこちで自分たちが持ってきた花火をどっかんどっかん。「そんなの一般人が買えるの?」と思うほどでかいのもあったのですが、本物はやっぱり音が違う。腹に響く。1キロちょっと先だったでしょうか。見晴らしがいいので空いっぱいに広がって、とてもきれいでした。Bloomingtonのような小さい市にしてはけっこうな規模だったのでは。40分くらいはほとんどやすみなくドンドンと上げてました。こっちは「愛国」のメッセージはまるでなくて、単に夏の夜を楽しみましょう、という感じでした。

というわけで半年振りの日本。ここへ来てドルが弱くなっていて、日本は物価が上昇しているらしいので、以前ほどの価値はないかも。でも、助かることは間違いない。私のフィールドは四国で、訪れるのは4年ぶりになります。報告義務もあるのでしっかりやらないといけませんが、フィールドに出るのはそもそも好きなので、楽しみたいと思います。