時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

夜の図書館

2005年10月29日 | Indiana大学
 いま、10時を回ったところ、図書館で勉強しています。特別なことではないので、ご存知の方も多いでしょうが、ここもほかの大学同様、勉強できるスペースは24時間開いています。昼間ほどではありませんが、まだ勉強している学生は多数。ただ、静かなので集中できます。

 再来週提出の、とてもしんどい宿題が出ているので、今週末はかなりがんばらないといけません。ハロウィンのパーティ、どうしようかな、と思いましたが、もう、あきらめることに決めました。宿題の一つは、ポライトネスの関連で、呼びかけの形式について調査研究するプロジェクトの計画を立てろというもの。必ずいくつか論文を読んで、3つ以上の研究手段の利点と欠点を論じたうえで、自分の問題設定、具体的で実行可能な研究計画、仮説、予想される結果、方法の問題点(やってもまだわからないだろうこと)を述べろ、というものです。

 非常に時間がかかりそうなので、今はじめても早いという気はしません。この社会言語学の宿題は、グループでやっていいよ、ということになっているのですが、わがままな私はいつもひとりでやっています。グループ学習&ディスカッションの利点もわかっているのですが、自分のペースで作業を進め、自分の発想を通したいエゴが強いのです。よくすればこのいわば矜持の強さが何かを生むかもしれませんが、悪くすれば自分の致命的な欠点ということになるかも。

 まあ、そんなことはどうでもよかったですね。といいつつこれまた個人的な心情ですが、わたくしが本気で留学を志したきっかけが、仕事で行ったオレゴン州ポートランドで仕事を抜けてPortland State Universityの図書館へ通ったことです。情報化が進み、一晩中開いている。こんなところで過ごしたい、やっぱり絶対留学しようと思ったものでした。

 さっき気づいたのですが、思えばそれが実現しているわけです。あまり感慨はありませんが。でも、せっかくですから、今後はお弁当でも作って、頻繁にこうやって夜ここで過ごそうと思います。勉強する環境としては、申し分ないので。ちなみにここのPCでこのように、日本語が読めるし、書けます。

 帰ってきて写真を追加。1階のPCがあるInformation Commonsというスペース。昼間はここが満席で、PCは空き待ち状態になります。図書館を出るときは気温1℃でした。帰りのバスでは、同じアパート(といってもここは部屋が500くらいありますが)のEmil(インドネシア人)といっしょに。彼は、ビジネス学科(Kelly Business School)の学部学生。いつも図書館でこの時間まで勉強。頭が下がります。

日本を紹介する

2005年10月28日 | Bloomingtonにて
 留学生センターからの紹介で、電子メールを使ってインタビューを受けるというボランティアをやっています。相手は7年生(たぶん中学1年生くらい)。St. Charles Catholic Schoolという地元の私立の学校です。インディアナ州もプロテスタントが圧倒的でカトリック系の学校は少なかったと思うので、少数派でしょう。

 これは社会科の授業のプロジェクトで、いろんな国の生活・習俗などをインタビューして調べましょう! という課題らしい。先週から電子メールで質問が来ています。1度目はもう答えたのですが、2度目はまだ。以下に質問を書きます。

1. どんな記念日をお祝いしますか?
2. 学校はどんなふうですか?
3. どんな家に住みますか?
4. 宗教は何が多いですか?
5. 交通手段はどんなものを利用しますか?
6. どんなものを食べますか(人気のあるもの/独特なものなど)?

「なるほど、知らないんだろうなあ」と思うものの、答えには迷いました。とくに3などは「木と紙でできた家に住んでいると聞いているかもしれませんが、アメリカと同じ鉄筋コンクリートに住んでる人が多いです」と書くのもヘンだし。2度目はまた6つ。別の生徒さんから。

1. アメリカでは祝わない記念日はありますか?
2. 日本独自の食べ物は?
3. 日本人がよく聞くのはどんな音楽ですか?
4. 10代の子はどんな服を着ますか?(アメリカと違うところは?)
5. 伝統衣装はどんなものですか?
6. 子どもがよく観るTV番組はどんなものですか?

 1は本当に分からない。勝戦国のアメリカと違って、日本は「終戦記念日」をけっこうきちんと記念すると思うのですが、それは前回の答えに書きました。雛祭りなんかどうでしょう? 4は質問の仕方がなかなか上手。アメリカと変わりがないことを知っているんでしょう。IUで見る限り、日本人はアメリカ人より平均的にはおしゃれです。アジアの留学生でもいちばんおしゃれなのはやっぱり日本人だと思います。3と6は、もう私の歳では分からなくなってしまいました。いい考えがある方、教えてください。彼ら、宇多田ヒカルは知ってるんでしょうか。いつもiPodを離さないAndrew(大学院生)が唯一知っている日本の曲は「SUKIYAKI」だそうです。彼のiPodに入ってるのを聞かせてもらうと、なんと故・坂本九の歌うオリジナルでした。未だにそれか。。。

 こちらで日本の何が知られているかというと、どうやらやはり、漫画・アニメとゲームのようです。よく話す大学院生(女性、名前がわからない)は、TVでやっていたセーラームーンが好きだったそうです。言語学科のPhD学生Nathanは高校生のとき、キャプションを英語表示させられるよう、日本語を独学して翻訳し、プログラムを一部書き換えて日本のコンピュータゲームをやっていたそうです。わざわざ。その甲斐もあってか、彼は現在コンピュータを使った言語情報処理のエキスパートです。

今日ももう一度キャンパス内の紅葉を。よく授業を受けるBallantine Hallから学生会館(Indiana Memorial Union)の方向を見たところです。

春学期の登録開始

2005年10月26日 | Indiana大学
 8/29-12/17まで、4ヶ月弱の秋学期。先日も書いたとおり、まだ折り返しを過ぎたところですが、早くも、2006年春学期(1月9日~)の登録がスタート。Web上に科目の概要が発表されました。私も指導のKen先生と話し合って4科目を決定。ご興味のある方は、下のアドレスからご覧ください。全学科の科目が見られます。100-400番台までが学部、500以上が大学院の授業です。
http://www.indiana.edu/~deanfac/blspr06/

 入学前に、伝染病の予防接種書類を提出せよ、との指令がありました(8月11、13日の記事をご覧ください)。忙しくて放置していたのですが、「これを済ませないと次の学期からは登録ができません」とのお達しが(メールで)来ていました。州法で決まっているから、絶対です。そこで、MMR(はしか・おたふく・風疹)の接種を済ませ、ツベルクリン検査を済ませて(陽性でしたが)、登録課へ出向いて、問題クリア。

 科目登録は全てオンラインです。で、今日登録しようとしたら、エラーメッセージが出て、はじかれてしまう。登録課に電話すると、「未提出の書類があります。入試課に持っていってください」とのこと。確かに、学部と大学院の成績表を出すよう合格通知に書いてありました。その後、なーんにも言われないので放置していたら、やっぱり要るんですね。

 この2件で分かりますが、とりあえず来てすぐの学期は、あれもこれもいっぺんにやらせるのは無理だということか、条件をクリアしていなくても、登録させる。で、次の学期からは、条件を必ずクリアさせる。ということのようです。さっそく、授業前に入試課に行って提出。受験のときに余分に取っておいたものを持ってきてありました。入試課には、お母さんと一緒に来ている女の子(高校生?)がいました。案内を受けて、あちこち見学に行っているようです。

 9月のBloomingtonは、いつまでも気温が下がらず40年ぶりの暑さだったそうです。しかし、2週間前くらいから急に気温が下がりだして、今週からは、最低4℃-最高10℃というような寒さになっています。残暑から、いきなり晩秋。この落差の賜物でしょう、紅葉がほんとうにきれい。アメリカ人のDonnaさん(今は日本にいる)から聞いていた通り、赤一色ではなく、黄色、紫、ピンクなどの混じったモザイク模様。キャンパスを歩いているだけで、日光にも奥入瀬にも行く必要がないと思うほどです。たぶん大げさではないと思う。でも、私のように木々を眺めて紅葉を楽しんでいる風情の学生は、いません(理解不能)。

写真はキャンパス内。言語学科のあるキャンパス南側から別の校舎へと移動するときにいつも通る道です。

文法論が好きだ~(?)

2005年10月24日 | Indiana大学
長いこと更新しませんでした。忙しかったこともありますが、まとまった内容のものを書かないと、と思い込みすぎていた気がします。忙しいのはずっと変わらないので、今後は日記のつもりで、断片的でも、いい加減でも、できるだけ頻繁に書きたいと思います。コメントをくださった方、ありがとうございます。近いうちにご返事いたしますので。

 いつのまにか秋学期(Fall semester)は折り返し地点を過ぎました。それぞれの学科で中間試験(mid term exam)もやっているようです。私の出ている科目についてはいったん終了。でも、毎回宿題の連続で、しかも内容がどんどん高度になってくるので、一つ一つじっくり取り組まなねばならず、時間がかかっています。
 今日は文法論(L543 Syntactic Analysis)の授業について紹介したいと思います。担当は言語学科唯一の日本人教授(Associate Professor)北川善久先生です。英語ネイティブに向かって、英語を話す国で、主に英語を使って作り上げられてきた生成文法を、ネイティブではない日本人が講義するというのは、大変なことのようで、ネイティブはあちこち引っかかっては、ツッコミを入れます。それを適切に処理していくというのは、大変な力量だと、いつも感心します。本人曰く、もう10年以上やってきてるんだから当然、とのことですが。授業はつぎのパターンで進行します。

 予習としての読書(Haegeman, L. ‘Introduction to Government and Binding Theory’, Blackwell)
 講義(自作の書き込み式講義ノート使用)
 復習としての宿題(最近はほぼ毎回・文の構造分析)

いわゆるGB理論を使って文構造を分析するための基本的な考え方と技術をしっかり身につけさせる、という内容です。要求されたことを地道にこなしていけば必ず習得できる工夫がされていて、とてもよく練られていると思います。実際、やれといわれたことをやっているだけ(それ以上やる余裕がない)ですが、「文法大嫌い」だった私でも、中間試験はまあまともな点数でした。かつて日本で、IPとか、Argumentとか、Bindingとか、何度説明されても理解できず、「もういいよ」とでもいうような顔をしていた(と思う)私が、宿題をやるために嬉々として文構造の樹形図を描いているのを見たら、教えてくれていた同僚はあきれることでしょう。

 北川先生はいわゆる生成文法の学者の中では主流ではないのだろうと思います。が、「文法性の判断」にもっと客観的で厳密な方法を開発しようと音声学者や言語心理学者と仕事をするなど、既存の生成文法の行き詰まりを突破しようという仕事を進行中で、個人的にとても好きな方向です。将来実験などが一緒にできるよう、文法論についても鍛えておけと言われています。また、ついつい焦りがちの自分に「そのうち慣れるから」「今はこの程度で十分」と声をかけてくれて、そもそも居心地のいい大学ではありますがそれでも、同国人のこの人が(教員の中に)いてよかったと思います。

 さて、授業の内容もさることながら、雰囲気がとてもよく、みんな楽しんでいるのが分かります。これは北川先生の人柄の賜物でしょう。かなり神経は使っているようですが(そこのところを時々教えてくれるのは、元教員の自分としてはとても面白い、他の授業でも、しばしば教員の心境になって、やりとりを見ていることがあります)。ちなみにこの授業に出ているあるアメリカ人の女性は、なんと学部学生。あまりにも出来がいいので、大学院の授業にいくつか出させているのだそうです。彼女は頭の回転が速いらしく、しゃべるのもめちゃくちゃ速いので、しばしば何言ってるかわかりません。彼女の言うことも全部分かるようになったら、リスニングも「合格」と言えるようになるだろうと思ってます。彼女はきっと大学院でも言語学をやるならここを出て、もっと名門に行くんでしょう。

 なお、この北川先生が依頼されて、大修館書店の雑誌『月刊言語』11月号にインディアナ大学言語学科大学院の紹介を書いています。よかったらご覧ください。
 適当に、といいながら、書き始めるとたくさん書いてしまうものですね。社会言語学で発表をしたし、音韻論も試験を何度もやりました、先週末から来学期の登録も始まりました。アメリカ言語学会の発表も決まったし。伝染病の予防摂取とか、5Kmレースとか、書きたいことはまだいろいろあるのですが、また次回。

写真を追加します。1つの記事に1枚しか選択できないので、関係ないものでも載せます。これは地理学科の学生。授業の課題で地元のダウンタウンを調査中。