時々雑録

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今回のサッカー日本代表について、もういちど

2010年07月22日 | サッカー
サッカー、ましてや今回のW杯について、まだつべこべ言うのはいい加減にしないと、と思っていたのですが、どうにも気になることがあり、一つ記事を追加します。

サッカー宇都宮徹壱さんが、先日のスポーツナビに

  「「ベスト16」との向き合い方 南アでの日本代表の戦いを総括する」

という記事を寄稿されています。宇都宮さんの記事は楽しませていただいているし、敬服もしているのですが、今回はどうも得心がいきません。ただし、この記事だけに異論を述べたいのではなく、今回の日本代表を総括した記事のいくつかに同様に感じたことでもあります。

わたしが疑問を感じる論点は、次の一文に集約されていると思います。

  いくら「強化のプロセスが悪い」「試合内容が悪い」と批判したところで、
  岡田監督が今大会で残した「ベスト16」という結果が揺らぐことは一切
  ないだろう。何といってもW杯は、結果がすべてなのだから。

疑問の一点目は、ベスト16という結果です。もし、ずっと言われてきたようにベスト4が目標なら、ベスト16は失敗のはず。「W杯は結果がすべて」と主張するなら、目標に照らして結果を評価するべき。もっとも、これは半分ツッコミのようなもの。本当の理由は以下。

二点目は、同じく「結果がすべて」について。南米や欧州のようにサッカーの歴史において先行していて、競争力が一定の高さに到達してしまっている国なら、その実力から達成可能な結果が挙げられるかがすべて、と言うことも出来るかもしれません。しかし、後発国の日本は、競争力の底上げを図っている最中、しかも、最終的な目標はW杯優勝です。そこに至る強化の道筋を着実に踏まえていることが問題になる。ですから今はまだ、結果がすべてではない、経過もよくなくてはいけないはず。

三点目、さらに重要なことは、評価のされ方です。W杯の結果だけをみて、いい、とか、悪い、と評価するのは適切ではない。南米の国にとってコパ・アメリカが重要なように、アジア杯も重要。今回のチームの4位という成績は明らかに悪い(ちなみに、わたしはオシム氏は日本で過大評価されていると思います)。岡田氏就任後に限るとしても、東アジア杯でも過去最悪の3位、予戦でもしばしば格下にも苦戦し、その後の親善試合も散々。つまり、ほとんどの時期、内容・結果とも悪かったのです。W杯がよければいい、というのは、五輪で勝てば英雄で、各シーズンの選手権の結果はほとんど注目されない、という陸上、スキーなどの競技の観られ方と同じものを感じます。五輪やW杯などの大イベントの、一般における注目度の高さは分かりますが、スポーツジャーナリストまで、そういう偏った見方を伝えてほしくありません。

4年間を通観したとき、今回の代表は、以前よりもアジアレベルで苦戦するようになり、公式大会の成績が落ち、W杯予戦も3位突破(今後も突破できるか、と考えると、予戦は予戦、とはいえません)、戦術的にも迷走。でも、W杯だけはそれなりの結果が出た、となります。これでは、たまたまめぐり合わせがよかっただけかもしれない。おそらく、どん底の状態になり、批判も強まったせいで、終戦後、本田が語ったように、選手たちに「なんとしても勝ってやる」という反発力が生じたことも好結果の要因でしょう。だからといって毎回W杯前にはどん底を経験するとよい、となるわけがない。また、あるいは逆に、強化を順調に進められる指導者だったら、もっといい結果が出たかもしれない。さらに、ずっと問題にしているように、世代交代は遅れ、代表の主力を経験した選手層も薄くなりました。こんな状況でも、一つの大会の結果だけで評価をしていたら、今後どのような経過をたどればより強くなれるのか、さっぱりわかりません。

以上、W杯での結果がよかった、という評価は第一の理由でできないだけでなく、W杯の結果だけで4年間の代表のプロジェクトの成否が論じられるのは正しくない、という意味でも、宇都宮さんおよび、それと同様の意見に賛同することができません。「タイトルをよく見ろ、南ア大会に限って評価しているんだ」と反論されるかもしれません。しかし、上記のとおり、4年間の一部だけを見た評価からは今後への指針を引き出すことが出来ません。どん底から復活したというだけで浮き足立たないで、冷静に評価をしてほしい、専門のジャーナリストにはとくに望みたいのです。

宇都宮さんは、「「3戦全敗した方が日本のため」などという理不尽な主張」をしていた人は、謝罪したほうがよいかも、ともおっしゃっています。私も、3敗とは言ってませんが、反省が促されるなら「ひどい目にあってきてもかまわない」と書いた(2/19の記事)のは間違いだったか、とも思ったこともありました。しかし、このように、W杯のみの結果論が幅を利かせ、その他ほとんどの時期の最悪の展開には目をつぶる、という結果を招いてしまうようなら、やっぱりW杯だけまあまあの結果なんか、出ないほうがよかったかもしれない、という気持ちを捨てきれないでいます。

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